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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合も全国出場経験を持つ強豪同士の対決。6年ぶりの頂点を狙う暁星と、12年ぶりの頂点を狙う東海大菅生が雌雄を決します。
関東大会予選こそベスト4まで進出しましたが、インターハイ予選は二次トーナメント初戦で東京朝鮮に完敗を喫した暁星。8月のT1リーグで9失点、8失点と守備が崩壊したことを受け、4-4-2のシステムを、林義規監督も「すごく効いている」と評価している渡辺創太(2年・FC東京U-15深川)を中盤アンカーに置いた4-3-3にシフト。すると、今大会は3試合で1失点と、懸案の守備が安定してきています。
一方の菅生はインターハイ予選の一次トーナメント敗退を受けて、選手権は地区予選からスタート。代表決定戦となった錦城戦は、先制を許すなど大苦戦を強いられながらも何とか競り勝つと、先週の成立学園戦は3-1で快勝を飾り、2年連続となる西が丘まで勝ち上がってきました。お互いにハードワークには定評があり、「タフなゲームになるのは当然」(林監督)の一戦は、暁星がボールを蹴り出してキックオフされました。
序盤からゲームは「お互いが長いボールを蹴り合うような」(東海大菅生・手塚弘利監督)展開に。暁星は比較的ピッチの幅を使いながら、1トップの岡村悠矢(3年・暁星中)へのフィードをベースに、左ワイドに入った臼倉宏(2年・暁星中)がボールを収めるような形が狙い。対する菅生は、4-2-3-1の前線4枚が「マンツーマン気味で」(手塚監督)ケアされる中、都内屈指のプレーメーカー私市一樹(3年・東海大菅生中)が3列目でアクセントを付けにかかりますが、なかなか攻撃の形を創り出すまでには到りません。
ゲームのファーストシュートは16分。暁星の左FK。臼倉の蹴ったボールを、ニアで篠山拓真(3年・暁星中)が頭に当てるもわずかに枠の右へ。17分には菅生の野原貴弘(3年・FC BRANCO八王子)が好パスを配給し、山崎皓大(3年・小平三中)が抜け出しかけたシーンを篠山のタックルで回避すると、18分にも再びチャンス。「CBで使いたいんだけど、鼻骨が折れていたのでSBに起用した」(林監督)須井翼(2年・暁星中)のロングスローから、最後は10番の左SB中沖隼(3年・暁星中)が狙ったミドルは、菅生GK小林直矢(3年・東京久留米FC U-15)がしっかりキャッチします。
そして、前半最大の決定的なシーンは19分。ここも主体は暁星。岡村が高い位置でボールを奪うと、そのままGKと1対1に。ニアサイドを狙ったシュートは、しかし小林が左手1本でファインセーブ。スコアを動かせません。
このシーンで圧巻のセーブを見せた小林は、なんとチームで一番小さい158センチの守護神。ただ、このワンプレーからもわかるように、GKとしての能力は非常に高く、コーチングや足元の技術も抜群。「人物的にも優れている」と手塚監督も太鼓判を押す小林に対して、暁星もロングスローやFK、CKなどセットプレーでは「相手が嫌がることを単純に」(林監督)というやり方をある程度徹底したものの、当然それは折り込み済みの菅生ディフェンスも落ち着いて対応。暁星3、菅生0という数字からもわかるように、動きの少ない前半はスコアレスで終了しました。
後半は一転、立ち上がりから菅生に勢い。43分、私市が右からFKを蹴ると、ファーサイドまで抜けたボールを森口貴之(3年・FC杉野)が狙うも枠の左へ。45分のCK、48分のFKを経て、49分の右CKから私市が入れたボールを、最後は野原が枠へ飛ばしたシュートは暁星GK関根宏一郎(3年・暁星中)がファインセーブ。とはいえ、特に右サイドからのアタックが冴え始め、「セットプレーが増えてきて、ウチのリズムになっていた」とは手塚監督。タイガー軍団のエンジンが、ようやく稼働し始めてきました。
暁星も51分には臼倉の右FKから、篠山がDFともつれながら頭に当てたシュートは、小林が難なくキャッチ。52分には須井のロングスローを岡村がすらし、臼倉が飛び込むも小林が一瞬早くキャッチ。菅生ゴールを脅かすまでには到りません。
再び菅生の時間帯。53分、オーバーラップした森口の右クロスを、ファーで野原が叩いたボレーは関根がキャッチ。56分にはFK、58分にはCK、59分にもFK、61分にもCKと立て続けにセットプレーを獲得し、掛け続ける圧力。暁星は「システム上、岡村が追い切れなくなると、ディフェンスがちょっとずつズレてくる。前からのディフェンスが弱くなってきた」と林監督。68分には、足が攣るまで走り切った大村祐(3年・暁星中)を松本幸一郎(3年・暁星中)と入れ替えますが、他にも足を伸ばす選手が続出。かなり苦しく、耐える展開が続きます。
そして「消耗のピーク」(林監督)に差し掛かった70分、菅生の後半6本目となるCK。これを跳ね返した暁星に、降って湧いたカウンターのビッグチャンス。臼倉は正確なキックを左へ飛ばし、全速力で駆け上がったCBの田辺歩己(3年・暁星中)は全身でクロス。このボールを、こちらも全速力で走り込んできた増永裕輔(1年・暁星中)が打ち切ると、激しく揺れたゴールネット。千載一遇のチャンスをモノにした暁星。均衡が破れました。
残り10分間で最低でも1点が必要な菅生。「もう攻めるしかない」(手塚監督)と、71分に唐崎賢(3年・FC府中)から橋本遼平(3年・FC BRANCO八王子)へ、73分に野原から榎戸皓平(2年・FC東京U-15むさし)へ、それぞれスイッチ。より攻撃的にシフトして、勝負に出ます。
しかし、守護神の関根を中心にした暁星の堅牢は揺るがず。時間ばかりが経過していく中、菅生は78分に私市がFKで、80分に橋本がクロスで中央にボールを入れるも、関根が確実にキャッチ。フィニッシュを取れません。
勝負が決したのは80+1分。アバウトなクリアに走り込んだのは「アイツが一番やんちゃ」と指揮官も言及した臼倉。独走。1対1。小林との対峙は、臼倉に軍配。「ああいうとぼけたヤツが結構入れるんですよ」と林監督。しっかりカウンターから2ゴールを奪い切った暁星が、6年ぶりの全国へ王手を懸ける結果となりました。
試合が終わった瞬間、思わず目が離せなくなった光景が。最後の最後まで奮闘した小林も、敗戦のショックからゴールエリア付近のピッチに崩れ落ちます。その小林へ誰よりも真っ先に駆け寄ったのは臼倉。そして、逆のゴールマウスから100m近い距離を全力に近いスピードで走り抜け、小林を抱き抱えたのは関根。最もピッチの中で孤独なポジション同士だからこそ、わかり合えるお互いの心情。あの光景を目にすることができただけでも、西が丘へ足を運んだ意味があったように私は感じました。 土屋
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