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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
"聖地の先へ"。312分の8。決戦の時はやってきました。舞台は説明不要の西が丘。高校選手権東京都大会準決勝です。今日はAブロックの2試合が開催。第1試合は修徳と國學院久我山の激突。名門同士の好カードとなりました。
インターハイは支部予選から接戦をことごとく手繰り寄せ、気付けば9連勝で頂点に立った修徳。全体の第1シードとして臨んだ今大会も都立駒場、多摩大目黒を共に1点差で退けるなど、岩本慎二郎監督も「なかなか負けないですねえ」と笑う、持ち前の勝負強さは健在です。
一方、ディフェンディングチャンピオンの久我山は、準々決勝で李済華監督の母校でもある東京朝鮮に苦しめられ、PK戦で辛勝。今日もインターハイ王者が相手と、難敵との対戦が続きます。ただ、渡辺夏彦(2年・FCトリプレッタ)と平野佑一(2年・東京ヴェルディJY)を中心にしたパスワークは全国屈指。「74年のオランダや82年のブラジルがそうだったように、普遍的なスタイルになり得ると思うので、今のバルセロナを目指している」と指揮官も語るスタイルで、"あと2つ"に挑みます。秋晴れの聖地。優しい陽光に包まれる中、セミファイナルはキックオフを迎えました。
いきなりの決定機は久我山。2分、小泉洋生(3年・鹿島アントラーズJY)を起点に渡辺が右へ。富樫佑太(2年・ジェファFC)のフィニッシュは左へ外れましたが、昨年からのレギュラーがまずはいい形を創出します。
さて、「繋いでくるチームにブロックを作って、どうやって守るかを練習してきた」(岩本監督)修徳は、ケガから復帰した清水麦(3年・江東第二砂町中)と三井田陸(3年・秦野南ヶ丘中)で組んだCBコンビを中心に、しっかり中央を固めてからのカウンターを徹底。9分には、そのカウンターから本橋瑞基(3年・クリアージュFC)が左サイドを駆け上がってヒールパス。大塚竜太(3年・フッチSC)のミドルは枠の左へ逸れましたが、狙いをしっかり体現してみせました。
そんな修徳を前にして、なかなかいつもの流麗なパスワークが表現できない久我山。16分には、平野からボールを受けた渡辺が左へスルーパスを通すも、山内寛史(3年・Az86'tokyo-ome)のシュートは修徳GK野口博輝(3年・ヴェルディSS調布)がファインセーブで回避。絶好の先制機も生かせず、リズムに乗り切れません。
次にチャンスを創ったのも、本橋が躍動した左サイドからのアタックに切れ味を発揮していた修徳。28分、やはり左サイドで大塚が残したボールを、本橋がクロス。走り込んだ小野寺和也(3年・フッチSC)のシュートは、久我山CB巽豪(3年・横河武蔵野JY)が体でブロックしましたが、決定的なシーンを生み出しました。
30分過ぎからは、ようやく一定の余裕を持ってボールを回し始めた久我山ペースに。35分には富樫のパスから、最後は山本哲平(3年・ジェファFC)がフィニッシュまで持ち込むも、野口がファインセーブ。36分にはカウンターから小野寺に枠内ミドルを飛ばされましたが、38分には山内、40分には渡辺と相次いでボレーを枠内へ。ラスト10分間の久我山は攻撃の時間とチャンスの数が見合ってきたものの、「怖かったボールを取られてからの速い攻撃」(岩本監督)も確実に消していた修徳の思い通りと言えそうな展開で、最初の40分間は終了しました。
ハーフタイムに動いたのは李監督。山内を下げて、スーパーサブのドリブラー松村遼(2年・久我山中)を送り込み、縦への推進力を強化しにかかります。キックオフの笛が鳴ると、勢いを得た久我山のラッシュ。43分、小泉の左CKから山本のシュートはゴール左へ。44分、平野の高精度スルーパスから富樫が抜け出すも、飛び出した野口が体で阻止。同じく44分、松村が独力で切り裂いたフィニッシュも野口が好セーブ。畳み掛ける久我山。
そして訪れた歓喜の時は46分。右サイドで富樫との連携から抜け出した渡辺が中へ。小泉が対峙したマーカーを揺さぶり、左足を振り抜くと、ボールはフワリとゴール右スミへ吸い込まれます。弾けるオレンジの輪。久我山がアドバンテージを手にしました。
48分にも松村、渡辺と回ったボールを、山本がわずかに枠の左へ外すなど、一気に牙を剥いた昨年王者。岩本監督も49分には佐藤悠輝(2年・FC東京U-15深川)に替えて、「ヒジを痛めていて、できればやらせたくなかった」というキャプテンの野澤克行(3年・FC東京U-15深川)を送り込み、勝負に出ます。
すると、崩れたスコアの均衡を引き戻す同点弾は、交替直後の49分。自陣から清水が蹴ったFKは、ゴール前に飛び込んだ城ヶ瀧大地(3年・フレンドリー)の足元へ。「大きいけど結構柔らかい」(岩本監督)184センチのボランチは、滑らかなステップでマーカーを外すと左足一閃。ボールは一直線にゴール右スミへ突き刺さります。昨年の同じ舞台、準決勝の西が丘では東久留米総合に2度リードを奪いながら、共に3分で追い付かれた修徳が、今年は失点から3分で挙げた同点ゴール。1-1。スタジアムのボルテージが一段階上がりました。
53分は久我山。平野が右から蹴ったCKに、石井大輝(3年・ジェファFC)が合わせたヘディングは野口がここもファインセーブ。56分は修徳。野澤が右へ振り分けると、開いた小野寺のグラウンダークロスに、走り込んだ大塚は打ち切れず。61分は久我山。小泉のラストパスから、富樫のカットインシュートは野口の正面。がっちり噛み合ったスタイル。まさに一進一退。
そんな中で、一瞬生まれたエアポケット。64分、何でもないGK野口のキックは、相手陣内で弾むと、突如として小野寺の独走へ。3人の追いすがるDFをものともせず、右へ流れながら思い切り右足で叩いたシュートは、豪快にゴールネットを揺らします。「いつも能力の半分も使っていない」と独特の表現でその才能を評価してきた岩本監督の期待に応える、ストライカー小野寺の逆転弾。スコアは引っ繰り返りました。
ビハインドを負った久我山。失点の前にはCFを山本から小田寛貴(2年・ジェファFC)に入れ替え、66分には負傷した石井と鴻巣良真(1年・ジェファFC)もスイッチ。修徳もケガを抱えた大塚を下げて、守備に特徴を持つ武石郁弥(3年・白井七次台中)をピッチへ。双方交替策も施し、ゲームは残り10分間のラストバトルへ。
76分には久我山に決定的なシーン。平野が右から入れたFKは、フリーで待っていた富樫にドンピシャも、ヘディングは枠の左へ。最後のカードとして鈴木大樹(3年・川崎フロンターレU-15)を投入した久我山は、78分にも決定的なシーン。富樫が右へ回し、鴻巣のグラウンダークロスを松村が狙うも、またも立ちはだかった野口の壁。
80分にはオールラウンドなMFで、今日は右SBとして奮闘していた池田晃輔(2年・FCフェスタ)に替えて、ケガ明けながら本職のDF望月康平(3年・フレンドリー)を投入して、ゲームをクローズにかかる岩本監督。「パワープレーをやられた方がよかった」と敵将も話す中、最後まで自分たちにとってはパワープレーより得点の可能性が高い"パスワーク"で相手ゴールに迫る久我山。
80+4分、右サイドからキャプテンの井上大(3年・横河武蔵野FC)が投げ入れたロングスローは、ゴール前の混戦を招くも修徳が凌ぎ切ると、吹き鳴らされたタイムアップのホイッスル。「2点目を取ってからは、そこまでハラハラドキドキはしなかった」と岩本監督も守備の安定感に目を細めた修徳が、100パーセントの力で自らのスタイルを貫き、ファイナルへ駒を進める結果となりました。
「力は向こうの方が上ですよ」と岩本監督が認めた通り、おそらく久我山の方が地力はあったように思います。しかし、スタメンの11人のみならず、交替で入った4人も含めた全員が、しっかりと自らに課された役割をまっとうするという部分においては、ひょっとすると修徳の方がわずかに上回っていたかもしれません。"ブレない"強み。古豪完全復活まではあと1勝です。 土屋
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