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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2012年10月07日

J2第37節 栃木×京都@グリスタ

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grista1007.jpg大分とのアウェイゲームを粘り強く制し、グリスタに帰還して激突した首位甲府との決戦は、後半終了間際に決勝ゴールを浴びて敗戦。9位というポジションに変動はなかった栃木。とはいえ、昇格プレーオフ圏内に当たる6位とのポイント差はわずかに3。残された6試合に2年越しの"野望"を懸けて戦います。
対するはその栃木と5ポイント差で4位に付ける京都。前節の徳島戦が台風によって延期となり、消化ゲーム数が1つ足りない状況に。悪夢の4連敗から一転、昇格争いのライバル山形をアウェイで蹴落とし、連勝中だった勢いが持続しているかにも注目が集まります。この時点で9位と4位の対戦が昇格に大きく関わってくるという、実に今シーズンのJ2を象徴するようなビッグマッチ。10月の宇都宮は降りそうで降らない雨曇り。注目の一戦は13時3分にキックオフを迎えました。
立ち上がりからペースを掴んだのはホームチーム。2分に菊岡拓朗が左から蹴ったFKを、大外へ回り込んだ西澤代志也が折り返すと、ボールはそのまま流れてシュートまでは至らなかったものの、早速メインスタンドの歓声を誘発。ゲームのファーストシュートこそ京都の工藤浩平に譲ったものの、中盤でも出足で相手を上回り、ゲームをコントロール下に収めます。
すると、栃木に早くも訪れた狂喜。7分、廣瀬浩二の短いスルーパスに抜け出したサビアは、DFを後ろに従えながらシュート。京都GK水谷雄一も懸命にブロックしましたが、こぼれをうまく収めた杉本真は走り込んだ勢いのままにシュート。このボールがゴール左スミギリギリへ突き刺さります。グリスタ沸騰。重要なゲームの重要な先制点は栃木が奪いました。
さて、「練習試合も含めて、早い時間帯の失点が続いている」(大木武監督)という「最近の課題」(水谷)をクリアできず、早々の失点で追い掛ける形となった京都。「1人1人の距離感が悪かった」とドイスボランチの一角に入った福村貴幸が話したように、お得意のショートパスも局地的には繋がるものの、その"局地"をなかなか増やし切れません。
加えて「繋ぐ最初の段階でのミスが多かった」という工藤の言葉通り、いつも以上にイージーなパスミスも目立ち、攻撃のリズムを創り切れない状況で時間が推移。失点直後の8分には、福村が自陣でロスト。奪ったパウリーニョからサビアを経由し、廣瀬がエリア内で放ったシュートは安藤淳が体を投げ出して回避しましたが、嫌な展開が続きます。
一方の栃木で効いていたのは、パウリーニョと西澤のドイスボランチ。特に久々のスタメンとなった西澤は、タイトなプレスと鋭い読みでピンチの芽を事前に搾取。時には前線まで飛び出して相手のイエローカードを誘発するなど、チームに安定感と勢いを間違いなくもたらしていました。
流れの中からはチャンスを創り切れない京都もセットプレーに活路。29分、工藤の左FKをファーでフリーになった安藤が合わせるも、ボールは枠の左へ。31分、同じく工藤が左からニア寄りに蹴ったFKは、バヤリッツァの頭をかすめるも枠の右へ。
栃木もFKからチャンスを創出。36分、菊岡が左から入れたボールをパウリーニョが狙ったヘディングはバーの上へ。45分、菊岡が今度は右から入れたボールを再びパウリーニョが当てたヘディングはわずかにバーの上へ。15分以降はほとんど互角に近い内容でしたが、立ち上がりの勢いを結果に生かした栃木がリードして前半は終了しました。
ハーフタイムの交替は両チームともなし。しかし、後半のスタート時には双方に大きな変化が。栃木の変化は松田監督の退席処分。これに関しては、重要なゲームという位置付けもあってか、確かに判定に対してかなり頻繁に大きなジェスチャーで抗議しており、第4審の前半は大半が松田監督をなだめることに追われていたことを考えれば、やむを得ないかなという印象です。
対する京都の変化はシステム。「右サイドの駒井(善成)にもう少し動ける範囲を広げてプレーさせてあげたい」(大木監督)と、3-4-2-1気味の並びを4-2-3-1へシフト。左WBのファン・テソンがSBに落ちて、安藤、バヤリッツァ、染谷悠太の旧3バックと最終ラインを形成。中盤の"3"に右から工藤、中村充孝、駒井を並べ、ビハインドを跳ね返しに打って出ます。
49分には染谷の果敢なオーバーラップから、工藤のサヌへ出したスルーパスがわずかにオフサイドとジャッジされるシーンが生まれ、同点とはなりませんでしたが、いい入り方をしたのは京都。それでも、すぐさま流れを引き戻したホームチーム。53分、菊岡の左CKをニアで赤井秀行がフリック。ゴール前は混戦になり、ボールはラインを越えましたが、蒲澤淳一副審はハンドとジャッジ。ゴールは認められず、直後にカウンターから宇佐美宏和がサビアへ通した決定的なパスもオフサイドに。追加点こそ挙げられなかったものの、再び訪れた栃木の攻勢。
京都も55分にはサヌに替えて宮吉拓実を送り込みましたが、次のチャンスも栃木。56分、菊岡の左FKを赤井が頭で繋ぎ、西澤は届いたボールをボレーで狙うも枠外へ。61分、赤井が右サイドを鋭く切り裂き、上げたクロスにニアへ廣瀬浩二が飛び込むもヒットせず。衰えない運動量に、サビアと廣瀬から始まる止まないプレス。リードも追い風に作用していきます。
大木監督の決断は65分。システムを変えてまで活躍に期待した駒井を諦め、内藤洋平を投入。タイプの異なるアタッカーで勝負に出ると、3分後にビッグチャンス到来。ファン・テソンのロングキックを収めた宮吉に対して、大和田真史がたまらずファウル。エリアのすぐ外でFKを獲得します。ゴールまで約20m。スポットに立ったのは福村と内藤。ホイッスル。短い助走。蹴ったのは内藤。「無心で蹴れた」ボールは「思い通りの軌道」を描き、ゴール右スミへ美しく飛び込みます。パーフェクトな一撃に、「なかなか出番はなかったが、彼はこの頃、居残りで何本もFKを蹴っていた。練習は嘘をつかないことを証明してくれた」と大木監督も称賛した内藤の今季初ゴールが飛び出し、ゲームはタイスコアに戻りました。
「押し込まれていた時間帯」(工藤)での同点弾が紫魂にもたらした勇気。74分、右CBから右SBにシフトした安藤は果敢なオーバーラップにトライ。中村からのリターンを受け、ニアへ速いボールを送り込むと、弾丸の如く突っ込んできた宮吉は、柔らかい左足でGKの頭上を華麗にぶち抜きます。「前半は固定し過ぎていて機能しなかった」(工藤)サイドを完全に崩して、途中投入のストライカーが大仕事。これぞ大木采配ズバリ。6分間でリードが引っ繰り返りました。
「失点後から相手のやりたいようにやられてしまった」(菊岡)栃木も、失点と失点の間となった71分には杉本と高木和正、さらに76分に廣瀬と佐々木竜太、80分に西澤と河原和寿とアタッカーを相次いで交替カードとして送り込み、最後の勝負に出ますが、京都のフィールドプレーヤーでは最年長となるバヤリッツァが、まさに"鬼神"の働きで次々と襲い掛かるボールを弾き返します。
90分にパウリーニョが起点となり、田中雄大のパスを反転しながらサビアが枠へ飛ばしたシュートは、水谷が大切にキャッチ。刻々と近付いてきた終了へのカウントダウン。95分、パウリーニョに2枚目のイエローカードと、それに伴うレッドカードが提示され、栃木は万事休す。「こういう勝ち方をすると勢いが出る」とは守護神の水谷。京都が交替選手の奪った2ゴールで、鮮やかに逆転勝利を収める結果となりました。
勝負を分けたポイントは両指揮官だったかなと思います。かたや互角以上のゲームを繰り広げながら、執拗な審判への抗議によって後半の指揮を執ることができなくなった指揮官。かたやリードを許す展開の中で、冷静に後半からの布陣変更と交替カードのチョイスを行い、白星を手繰り寄せた指揮官。お互いのこのゲームに懸ける気持ちは十分伝わってきただけに、ああいう形で松田監督がピッチを去ってしまったことは非常に残念でした。
「ハーフタイムに前の選手が『後ろがゼロで抑えてくれたら、絶対にゴールを決めるから』と言ってくれた」と明かしたのは水谷。チームの一体感を結果にしっかり結びつけた京都は、自動昇格となる2位以内確保に向けて、大きな大きな勝ち点3を奪取。残された試合数はとうとうわずか5試合です。         土屋

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