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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
岡山、岐阜と続いたアウェイゲームで連敗を喫し、順位こそ2位をキープしているものの、首位を快走する甲府にはポイントを離され、3位以下のチームにはポイントを詰められた湘南。岐阜戦で受けたレッドカードによって、守備の要である遠藤航を欠く今節は、自動昇格を目指す上で正念場とも言うべきゲームになりました。
一方、現在の順位こそ16位ですが、2試合続いた"バトルオブ九州"で大分と福岡を相次いで撃破して、2連勝中と上り調子の熊本。特に前節の福岡戦では、北嶋秀朗に待望の移籍後初ゴールが飛び出すなど、いい流れが来ている印象。昇格争いの渦中にある相手を叩いて、存在感を示したい所です。
この一戦は本来昨日の開催が予定されていましたが、台風接近に伴って1日遅れのキックオフに。それでも平日ナイターにも関わらず、平塚には3986人の観衆が。10月最初のJリーグは熊本のキックオフで幕が上がりました。
立ち上がりは5分に3連続CKを掴むなど湘南が攻勢に。10分にも相手のミスパスを奪った大野和成が左へ付けると、高山薫のクロス気味にも見えたシュートは熊本GK南雄太にセーブされましたが、チャンスを創り出します。
湘南は遠藤の不在を受け、「ラインをコンパクトにしたいという意図」(曹貴裁監督)から、本来は右CBを務めることの多い鎌田翔雅が中央に入り、右に三原向平、左に大野という構成の3バックに。そんな中、湘南の印象を聞かれた高木琢也監督の「後ろの選手の攻撃の関わり方はちょっとなかったかなと思う」という捉え方に対して、「彼らが行かなかったというよりは、そんなに行く必要がなかったのかなと僕は感じている」と曹監督が話したように、中盤より前でもボールを握る時間の長さは断然湘南。ただ、サイドへの展開まではスムーズにいくものの、そこからのクロス精度の低さと、3トップにボールが入ってもなかなか時間を創れないために、流れの中からはいい形が生まれてきません。
18分に岩上祐三の蹴った右CKがフリーの高山に合いましたが、シュートは空振り。こぼれに反応した三原のシュートも原田拓のブロックに遭い、先制とはいかず。31分にはショートカウンターから岩上、菊池大介を経由して高山が左へ回し、永木亮太はグラウンダーのクロスをGKとDFの間に通すも中とは合わず、インプレーからの好機もフィニッシュまで繋げられません。
さて、守備に追われる時間が長いとも、セーフティに前へ蹴る回数が多いとも取れるような前半を、ある意味うまくやり過ごしてきた熊本にようやく訪れたチャンスは43分。最終ラインから廣井友信が大きく蹴り出したクリアは湘南陣内へ。ワンバウンドして高く跳ね上がったボールを、鎌田に競り勝って収めた齊藤和樹は、右に持ち出しながら右足でハードヒット。これが湘南サポーターの目の前にあったゴールネットを揺らします。
「彼が課題にしている、"フィフティフィフティのルーズボールをマイボールにする"ことができた」と高木監督が言及すれば、「最近は彼がチームに大きなパワーをもたらしている」と2トップの相棒を称えたのは北嶋。前半終了間際のファーストシュートを先制弾に結び付けた熊本が1点のアドバンテージを得て、最初の45分間は終了しました。
「言い方が正しいかどうかわからないが、前半の"ワンピンチ"で」(曹監督)思わぬビハインドを負うことになった湘南。曹監督は後半のスタートから2枚替え。失点に絡んだ鎌田と右WBの猪狩佑貴を下げて、島村毅と坂本絋司を投入。最終ラインは島村が左へ入り、大野が中央へスライド。坂本はボランチに入り、永木は2シャドーの一角へ 。右WBには岩上が回って、まずは1点を返しに出ます。
47分には替わったばかりの坂本が、枠の右へ外れたものの積極的なミドルにチャレンジして、後半への決意を前面に。とはいえ、交替を含めた配置の転換は前半より前にボールが入る回数こそ促進しましたが、肝心のプレー精度が伴わず。特に高山と本来は高精度キックが持ち味の岩上は、ほとんどが味方の頭上を越えてしまうようなクロスばかりの供給になってしまい、熊本のゴールを脅かすような場面は出てきません。
63分には湘南が早くも最後の交替を決断。菊池に替えて宮崎泰右を送り込み、後はピッチの選手たちへ勝負を託します。64分には、その宮崎がドリブルでの仕掛けから強引なフィニッシュ。DFがブロックしたこぼれを下村東美が打ち切ったボールは枠を外れましたが、久々に記録されたシュートでわずかに変わった流れ。69分にもバイタルでのドリブル突破から獲得したFK。中央左、ゴールまで約25mの位置から永木が直接狙ったキックは枠を越えるも、ジワジワと熊本ゴールへ迫ります。
すると72分、自らが投げた今日4本目のロングスローから得たCKを岩上が蹴り入れると、島村はドンピシャのヘッド。これは南が抜群の反応で弾き出しましたが、さらに詰めた島村に対する熊本のファウルを佐藤隆治主審は宣告。湘南にPKが与えられます。本来のキッカーである遠藤不在の中、大役を任されたのは岩上。のしかかる重圧を振り払い、ルーキーが選択したのは向かって左。反応した南は手に当てるも勢いは止まず、そのままボールはゴールネットへ。残り15分でスコアは振り出しに引き戻されました。
「湘南も選手を替えてかなりスピードアップするようなシーンがあった」(高木監督)中で、後半も失点するまでの30分間では1本のシュートも打てていなかった熊本。PKを取られる直前には、根占真伍を原田に替えて送り出していましたが、「かなり押し込まれて後ろから出ていく時間もない」状況を見た指揮官は、80分に齊藤を下げて五領和樹へ「ボールを保持した中で時間を創る」ミッションを与えて送り出します。
勢いは完全に追い付いた湘南。82分、宮崎のパスから坂本のカットインシュートはわずかに枠の右へ。84分、岩上のスルーパスで抜け出した坂本は、左足アウトで南を破ったものの、藏川洋平が素晴らしいゴールカバーで回避。89分、岩上は中央をワンツーで切り崩し、左足で強烈なシュートを放つも枠の右へ。
アディショナルタイムは4分。赤を飲み込まんと襲い掛かる緑と青のビッグウェーブ。ところが94分に待っていたのは赤の狂喜。下村に敢然とプレスを掛けた五領がボールを奪うと、「細かいパスよりもフィニッシュで終われ」と高木監督の指示を受け、87分に3枚目のカードとして投入された市村篤司は躊躇なくシュート。DFに当たって軌道の変わったボールはクロスバーを叩きましたが、そこへ現れたのは「こぼれてこいと願っていた」39番のストライカー。無人のゴールへ頭で押し込んだ一撃は、劇的な決勝弾。「うまくいかない時間帯を経て勝てたことはチームの成長」と語る北嶋の"サヨナラゴール"で、熊本が3連勝を飾る結果となりました。
率直に言って、熊本はよく勝ち点3を奪取したなと思います。「基本的には自由にやらせてもらえなかった」(高木監督)90分間でしたが、前半も後半も終了直前のそれぞれファーストシュートがゴールに繋がるという効率の良さ。「泥臭く点を取れたことが今日の大きな勝因」と高木監督も話した通り、齊藤と北嶋の2トップが見せた、高い集中力が最高の結果を引き寄せました。
逆に湘南からすれば「自分たちが何とかできるようで、何とかできないような状況」という曹監督の表現はあまりにも的確。このゲームで勝ち点1すらも指の先からこぼれていった現実は、受け入れがたいことでしょう。ただ、今シーズン初の3連敗にも「最後の所の自分たちが突き詰めてきたことは継続してやろうと思っている」といつも通りの強気を貫き通した曹監督。残すは泣いても笑っても6試合。この苦境でこそ、若いチームの真価が問われることになります。 土屋
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