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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
5日間の眩く濃密な閃光花火。全国社会人サッカー選手権大会、通称"全社"。全国9地区の予選を勝ち抜いた32チームが、最大で5連戦となる過酷な旅路へ、今日まさに足を踏み出しました。この大会が持つ最大の意義は、3位以上のチームへ年末に行われる地域決勝大会の出場権が与えられるということ。既に各地域のリーグ戦は終了しており、それぞれのチャンピオン以外のチームにとっては、今回が地域決勝への切符を掴む「本当にここしかない」(FC刈谷・加藤知弘監督)ラストチャンス。さらなる"明日" を懸ける戦いでもあります。
1回戦が開催される7会場の中から、訪れたのは駒沢陸上。第1試合は九州リーグ2位のヴォルカ鹿児島と東海リーグ1部4位のFC刈谷。共に地域決勝への出場が決まっていないチーム同士の対戦となりました。
1959年創立。50年以上を数えるクラブ史の中で、2回目となる"トップディビジョン"の舞台を明確に捉えた気運。2015年からのJリーグ参入を目指すのがヴォルカ鹿児島です。一方、旧JFLの雄・デンソーサッカー部のクラブチーム化に伴い、2006年から現在のチーム名になったFC刈谷。2009年の入れ替え戦敗退で地域リーグ降格を経験し、今季で東海リーグも3シーズン目。JFL復帰を目指して、この大会での躍進を狙います。
『どこまでも行こう 道は厳しくとも 口笛を吹きながら 走ってゆこう』。目の前の一戦というだけではなく、人生そのものの在り方をも内包するような刈谷サポーターの歌声が響き渡り、運命の5日間はキックオフを迎えました。
最初のシュートはヴォルカ。4分、日高潤也(28・明治学院大)がミドルにチャレンジ。ボールは枠を越えましたが、早速の決意表明。最初の決定機は刈谷。6分、福谷尚也(24・中京大学FC)のフィードから、最後は大石治寿(23・神奈川大)が狙ったシュートは右のポストにハードヒット。ゲームは殴り合いからスタートしました。
少しずつ展開が落ち着くにつれ、見えてきたのはヴォルカの攻勢。比較的長いボールを前線の山田裕也(24・れいめい高)に届け、栗山裕貴(24・三菱重工長崎SC)や竹内佑樹(24・ジェフリザーブズ)が拾うような形で掛ける圧力。17分にはDFの連携ミスを拾った山田が獲得したFK。栗山が直接狙ったキックはカベに直撃。19分、赤尾公(24・SC鳥取ドリームス)の右FKを、山田がフリーで当てたヘディングは枠の右へ。
23分、永岩貞亮(25・阪南大)の侵入を川上玄太(24・日本福祉大)が体でブロックしたプレーから続いたCK。3連続の3回目を赤尾が蹴り込むと、またも山田がヘディング。ここも枠は捉え切れませんでしたが、セットプレーを多く得たヴォルカの時間帯が続きます。
さて、「3-6-1かと思っていた」(加藤監督)ヴォルカが4-1-4-1気味の布陣を敷いてきたことで、「攻撃の時、どこにフリーマンができるのかも把握できていなかったと思う」と加藤監督が振り返ったように、やや戸惑いを隠せなかった刈谷でしたが、25分前後からは「完全にビルドアップさせようと、ラインを深めに下げる」(加藤監督)守備を選択。最終ラインからしっかり繋ぎ出したヴォルカのアタックを、5-4-1に近い形で迎撃します。
26分にはCKからカウンターを食らい、赤尾のあわやというループを許しましたが、それ以降は「対人の所で力を発揮できる」(加藤監督)東間勇気(25・FC岐阜SECOND)、斉藤啓貴(26・富士常葉大)、川上で組む3バックが粘り強く対応。40分には栗山に際どいシュートを打たれるも、ボールは枠外。スコアレスのままで前半の40分間は終了しました。
後半はいきなりの決定的なチャンスが刈谷に。42分、東間のフィードはDFラインの裏に落ち、走り込んだ松葉司(22・四日市大)のボレーはヴォルカGK植田峻佑(24・福島ユナイテッドFC)が辛うじてキャッチしましたが、意気上がるサポーター。44分のヴォルカは、竹内のパスから栗山がドリブルシュートに持ち込むも、ボールはゴール右へ。後半も双方譲りません。
とはいえ、少しずつ流れを引き寄せ始めたのは刈谷。「ボランチを縦関係にして、アンカーの18番(赤尾)にプレッシャーを掛ける」(加藤監督)と同時に、「メチャメチャ空いているアンカーの"脇"をうまく使えた」(同)ことで、逆に刈谷のボランチを務める高橋良太(25・ツエーゲン金沢)が散らしてリズムを創出。50分には北野純也(23・東海学園大)が粘り強いキープから左へ。松葉のクロスをDFがクリアすると、フリーになった高橋のボレーは枠内を強襲するも植田がライン上でビッグセーブ。惜しいシーンを生み出します。
そしてとうとう均衡を破ったのは、伝統の"赤襷"。53分、相手のミスパスを奪った松葉は右へ展開。征矢貴裕(25・東京学芸大)が素早く入れたアーリークロスを、「教えてできるものではない」(加藤監督)ポイントに潜り、頭で叩いたのは大石。右のポストとGKに当たったボールが選んだのは、わずかにラインを越えた着地点。復帰したエースが果たした重責。刈谷が先制しました。
止まらない勢い。56分、北野のミドルをキャッチしたGKが蹴り出したボールは、なんとDFにヒット。こぼれにいち早く反応した大石は、難なくGKをかわすと無人のゴールへ流し込みます。ストライカーの今日2ゴール目は大きな追加点。点差が広がります。
さて、2点を追い掛ける展開となったヴォルカ。57分には竹内を下げて木村俊喜(23・鹿屋体育大)を送り込み、両SBもポジションチェンジで入れ替えながら、反撃を狙います。59分、フィードを山田が収め、木村のミスシュートを山田が打ったボレーは枠外。69分、上がってきたCB山口純(24・愛媛FCしまなみ)のパスから、栗山が繰り出したミドルは枠の上へ。ゲームは残り10分間の勝負に。
70分はヴォルカ。ゴール前の混戦から木村が打ったシュートは、2人のDFが体を投げ出してブロックするなど、刈谷ディフェンスの集中力は切れず。74分もヴォルカ。赤尾の右FKに山田が頭から飛び込むも、ボールは枠外。77分もヴォルカ。赤尾のFKはオフェンスファウルのジャッジ。80分もヴォルカ。栗山のCKは中に届かず、一転、刈谷のカウンター。北野は決め切れずに3点目とはいかなかったものの、直後に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「修正力や適応力がないと、こういう戦いには勝てない。ハーフタイムでよく選手たちが修正してくれた」と加藤監督も称賛した刈谷が、まず1つ目の関門を突破する結果となりました。
「我慢比べを最後までちゃんと我慢できた」と指揮官も振り返った通り、刈谷は押し込まれた前半をうまく凌げたことが大きなポイントだったと言えそうです。セットプレーの守備で、山田のマーカーとしてやや後手を踏んでいた川上も、「ハーフタイムで他のヤツに『マークを変えるか』と聞いたら、『玄太に任せよう』と言ったのでそのままやらせた」という加藤監督やチームメイトの信頼に応えるプレーを後半は披露。「チームとしての統一力」(加藤監督)は最後まで揺らぐことはありませんでした。「自分たちの宝ですから」と加藤監督も感謝を口にしたサポーターも含めた、"一丸"の勝利だったと思います。 土屋
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