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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2012年09月11日

W杯アジア最終予選 日本×イラク@埼スタ

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nippon0911.jpg神様の帰還。在任中は無敗を誇った埼玉の地に、鹿島へ、そして日本へと"スピリッツ"を伝導した"師"が降り立ちます。
ブラジルへと続く道の扉を開けることが許される2つの枠を巡り、繰り広げられるアジアの激闘。グループBは現在3試合を消化している日本が、堂々の7ポイント奪取で首位に。2試合の消化がグループの大半を占める中、現時点で2位に付けているのがイラクということになります。
このチームはアテネ五輪4位のメンバーと、2007年アジアカップの優勝メンバーが含まれており、中でもその両方を経験したユーヌス・マフムードとナシャト・アクラムが主軸として活躍。3次予選もヨルダンと中国を抑えて首位通過を果たすなど、十分にジーコ監督の母国凱旋を叶え得るチームと言えそうです。
対する日本は今野泰幸、栗原勇蔵、内田篤人とDFの3人が出場停止。注目の最終ラインは、右から駒野友一、吉田麻也、伊野波雅彦、長友佑都という4枚をザッケローニ監督は送り出しました。満員の埼玉スタジアムは60593人の大観衆。ジーコ監督も「私も一度はそちらにいた経験があるが、6万人が後押ししてくれる素晴らしいサポーター」と話した強力な援護射撃を得て、日本の最終予選4戦目はキックオフされました。
いきなりの一太刀はイラク。4分、アハメド・ヤシーンが右から蹴ったCKを、ニアに潜ったアハメド・イブラヒムが頭でハードヒットすると、川島永嗣のファインセーブに救われた日本。直後のCKからも、立ち上がりから積極的に上がっていた右SBのワリード・サリムが枠を越えるミドル。セットプレーからとはいえ、2つのシュートシーンをまずはイラクが創ります。
以降もゲームの流れはイラクに。「日本のスピードへ対応するために若い選手を投入したのと、彼らはプレシーズン中でコンディションがよくわからない」(ジーコ監督)と、ユーヌス・マフムードとナシャト・アクラムをベンチに置いてくる意外な策に対し、長谷部は「スカウティングで2人が出てこないというのはわかっていた」と話しながら、「代わりの選手にどういう特徴があるのかを把握するのに少し時間がかかった」とも。また、「予想より引いてきたことと、前の2枚がウチのダブルボランチを抑えに来ていたので、余ったボランチの1枚が本田にマンツーマンで付いてきた」(ザッケローニ監督)中で、比較的ボールを持てた両CBも、なかなかパスの付け所を見つけ切れません。
11分には長友が力強いカットインから、枠内ミドルでファーストシュート。15分には、右サイドで本田からパスを受けた岡崎慎司がピンポイントクロスを送るも、清武弘嗣のヘディングはイラクGKヌール・サブリが抜群の反応で回避。二次攻撃から、清武の左クロスを前田遼一が合わせたヘディングも枠の右へ外れ、先制点は奪えず。
すると21分、イラクに2度目の決定機。アハメド・ヤシーンが左から蹴ったCKは、密集を越えてファーでフリーのハンマディ・アハマドへ。ボレーで狙ったボールは、長友に当たってわずかに枠の右へ逸れましたが、またもセットプレーからビッグチャンスを創り出しました。
そんな日本にとって少し嫌な流れの中、スタジアムの空気を一変させたのは、やはりイラクも「もともと警戒していた」(ジーコ監督)セットプレー。25分、「あの位置ではああいう形というのはあった」という駒野はスローインをDFラインの背後へ。走り込んだ岡崎が左足で中へ入れると、「練習通り。最高のパスだった」と振り返った前田が完全にフリーとなって、頭でプッシュ。まさに電光石火。エースストライカーの最終予選3点目が飛び出し、苦しんでいた日本がリードを奪いました。
これで落ち着きを取り戻したホームチーム。ザッケローニ監督が「吉田と伊野波にはCBの位置ではなく、もう少しSB的な位置でビルドアップするように伝えた」ことも奏功し、駒野と長友の推進力を生かしたサイド攻撃も増加。41分にはCKのチャンスから一転してカウンターを食らい、ハンマディ・アハマドのパスから抜け出したアハメド・ヤシーンのコントロールシュートを、何とか川島が弾き出す決定的なピンチこそありましたが、その他は概ね好リズムの攻勢。45+2分には本田のCKから、遠藤保仁がヌール・サブリに数センチ単位で掻き出されるボレーを放つなど、追加点の予感も十分。日本リードで45分間は終了しました。
後半に入っても流れは継続。「相手のカウンターをケアしつつ、行ける時には前へと言われていた」(駒野)中で、前半以上に存在感を発揮してきたのはインテルのレギュラーSB。52分には果敢なドリブルからFKを獲得すると、58分にもボールはラインを割ったものの、完全に裏を取った40mのフリーランニング。「佑都くんもよく回ってくれた」と清武が話し、「キヨも佑都が上がるタメを創ってくれた」と長谷部も評した、清武と長友のコンビネーションも尻上がりに精度を増し、前日練習で腰に違和感を感じたということで、今日はベンチからも外れた香川真司の不在を感じさせないアタックを披露してみせます。63分には本田の右CKから、吉田がチャレンジしたオーバーヘッドは枠を大きく越えましたが、このCKが早くも後半4本目。これもサイドからの攻撃で押し込めた、1つの指標になる数字でしょう。
さて、64分にはジーコ監督の決断。アムジェド・ラディ・ユスフ・アルジャナビを下げて、ここでエースのユーヌス・マフムードを投入。1分後にはすぐさまアハメド・ヤシーンが簡単に裏へ蹴り、ユーヌス・マフムードを走らせると、このシーンは伊野波の好対応で事無きを得ましたが、その数十秒後にはまたも裏へのシンプルな配球が。イラクの狙いは、よりハッキリしてきました。
とはいえ、相変わらず冴え渡るのは日本の左サイド。69分、岡崎のポストプレーを起点に、遠藤を経由したボールを清武は内側から追い越した長友へ。完璧なクロスをニアへ飛び込んだ本田が頭で叩き、ボールは枠を越えたものの、「幅を使った攻撃」(岡崎)から素晴らしい形を創出しました。
75分にアラー・アブドゥル・ザハラに替えて、いよいよナシャト・アクラムを、77分にはアハメド・ヤシーンを下げ、ケッラム・ジャシムを相次いで送り込み、本来のレギュラー陣で最後の勝負に出たジーコ監督。79分にはナシャト・アクラムのスルーパスから、ユーヌス・マフムードがフィニッシュまで持ち込み、判定はオフサイドとなりましたが、垣間見せた脅威。
80分は日本。前田のポストワークから、清武が上げた高精度クロスに本田が合わせるも、ヌール・サブリのファインセーブでボールは右ポスト直撃。81分はイラク。ハンマディ・アハメドのヒールパスをもらったワリード・サリムは中へ。ユーヌス・マフムードのヘディングは吉田が手でブロックしたようにも見えましたが、判定はノーファウル。終盤に入って出し合う手数。
83分は日本。ここも清武と長友で奪ったCK。左から遠藤が蹴り入れ、こぼれを伊野波が左足ボレーで狙うも大きく枠外へ。87分はイラク。クリアボールを拾ったケッラム・ジャシムは 、強烈なミドルで川島を急襲。1-0のままで最終盤へ。
「フレッシュさが欲しかったのと、10番(ユーヌス・マフムード)や5番(ナシャト・アクラム)、13番(ケッラム・ジャシム)など中央でプレーしてくる選手をケアしたい」ザッケローニ監督は89分に1人目の交替策。清武と細貝萌をスイッチして、中盤をトレスボランチ気味にシフト。さらに91分には殊勲の前田とハーフナー・マイクも入れ替え、ゲームをクローズしにかかります。
イラクも懸命に1点を奪いに出る中で岡崎が、本田が自分のタスクをまっとうする守備で攻撃の芽を潰し、3分と掲示されたアディショナルタイムを40秒ほど回った所で鳴らされたホイッスル。「ゼロで抑えられたことが大きかった」と伊野波が語ったように、主力の守備陣を欠く中で完封という成果も出した日本が、ブラジルを大きく引き寄せる勝ち点3を獲得する結果となりました。
「プレーしていてやりにくさを感じる相手だった」とキャプテンの長谷部が話したように、イラクはかなりの難敵だったと思います。ある程度守備に軸足を置きながら、セットプレーやカウンターからのパワーは強烈。「今回、何人かの選手をA代表デビューさせた。彼らはこういう大きな舞台で試さないとここに連れてきた意味がないと思ってぶつけたが、公式戦でしか試せないという状況もある」(ジーコ監督)という中でのパフォーマンスは、今後への脅威を抱かせるモノでした。
ただ、その相手に対しても流れの中から決定機を創り、セットプレーで勝負を決める辺りは、日本が身に付けてきた勝負強さの証。「ジーコ監督にまだまだ成長している所を見せたかった」と駒野。「日本の勝利を賞賛したい」と話した"神様"も、その礎を築き、代表まで率いていた国の個人、そしてチームとしての確かな成長を感じたのではないでしょうか。         土屋

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