J1第27節　
サンフレッチェ広島×サガン鳥栖@広島ビッグアーチ
解説：玉乃淳　実況：西岡明彦　インタビュアー：君﨑滋
　

【玉乃淳氏によるマッチレビュー】
Q、ゲームの全体的な印象を教えて下さい。

A、難しい試合が予想されていたのですが、
お互いに引いて守ってくるのかと思っていたら、
意外に鳥栖が前から来ていたので、
非常に見所の多い試合になったかなと。
鳥栖の勇気というか、不慣れかもしれませんが、
引かれた相手に対して攻めていこうとした姿勢が、
前半の面白さに繋がったのかなという印象です。

Q、鳥栖の良かった部分を具体的に言うと、どういう所でしょう？

A、球際は激しく、全体のラインも引き過ぎずに、
中盤で森崎浩司と高萩の所にも潰しに行っていたので、
ファウルの数は多かったですが、それ以上に効いていたなと。
よく研究しているなと思いました。

Q、広島の立ち上がりはどう見えましたか？

A、先に失点したくないという気持ちが強かったのかなと。
森保監督が試合前に話していたという
「焦らずに攻めていく」というのを実践していたなと思います。
そして、終わってみれば大差で勝っていたので、
僕が気付かなかっただけで、悪かったというよりもプラン通りだったのかなと。

Q、広島が先制点を挙げたシーンで、
中継の中でも鳥栖の守り方に言及されていました。

A、大きいサイドチェンジが鳥栖のウィークポイントだったのは明らかで、
その前にも何度もそういうシーンがありました。
先制点のシーンもいい形でサイドチェンジが入った時に、
岸田が中に絞り過ぎていたかなと。
確かに絞らなくてはいけないというディフェンダーの原則があるので
気持ちはわかるのですが、ちょっと中に絞り過ぎていて、
上から見ていてサイドにボールが入ったら
Gkと1対1になるなというのはわかっていました。
あそこはもう少し早めに、どういう風に対処していくかを修正できていれば、
また違った対応になったのかなと思います。
人に付いていかずに、マークを受け渡したりする連携の部分ですよね。
その辺りは経験を積んでいけばわかってくる所で、
デビュー戦でそこまでは要求できないのかなという印象はあります。

Q、その先制点を決めた清水航平については
90分間を通じてどういう印象を持ちましたか？

A、右利きの選手だということにまず驚かされました。
ドリブルを右足でして、縦に行くスピードが速いので、
派手な選手ではないのに簡単に相手を抜き去ってしまう所が魅力なのかなと。
あとは"キャラ"ですよね。
なんかすごくかわいいキャラで、愛されキャラというか、
決定的な所でボールが集まってきたり、
大事な場面でゴールを決められるのも
あのキャラがあってのことなのかなというのが、
インタビューや試合を通して思いましたね。

Q、やはり"キャラ"は重要なんですね。

A、重要ですね。
やっぱり愛されないとボールが集まってこないですし、
チームのためにずっと頑張っていれば、
逆にチームが助けてくれることがあったりするんです。
山岸の負傷があったにせよ、そのチャンスをしっかりモノにしていますし、
普段から頑張ってチームを盛り上げようとしていることで、
こういう大事な試合で結果を出すことができるというのは
素晴らしいことだと思います。

Q、2点目に繋がるPKの判定はどういうシーンだと感じましたか？

A、鳥栖の磯崎がクリアして、
勢い余って広島の石川に当たってしまったことは
映像を見れば明らかですが、あれだけ副審が近くで見ていて、
主審も見ている中で、お互いが確認し合っている訳ですよね。
一瞬の判断でPKスポットを指したのはわかるのですが、
その後で話し合って「PKはないだろう」という結論に至らなかったのは、
僕は残念ですし、ありえないかなと。
ただ、鳥栖が中盤は激しくラフに行っていたので、
その印象が悪くてあのPKに繋がったのかなと、
改めて振り返れば思いますね。

Q、どういう判定が妥当だったでしょう？
広島のオフェンスファウルでしょうか？

A、いや、どちらもファウルではないかなと。
ノーファウルじゃないですか。
クリアして、たまたま勢いあまって接触しただけで、
ファウルでもなかったと僕は思います。

Q、鳥栖が3点取られても諦めていないという部分を
中継の中でも強調されていました。

A、この試合だけを見ると、
そこまでしなくてもいいのにと思ってしまいますが、
長い1シーズンを見ると、そういう気持ちを持ち続けたことが
今の5位という結果に繋がっているのかなと、
自分の中では勝手に解釈しました。
普通だったらアウェイで3-0で、
気持ちが切れる選手がいてもおかしくないと思うのですが、
それでも1人も試合をファウルで壊してしまうような感情を持たずに、
純粋に点を取りに行っている姿に、
「これが躍進の理由なのかな」と感じましたし、
ユン・ジョンファン監督がいい指導をされているのだなと
いう部分まで深読みしてしまいました。

Q、そういう姿勢が最後の1点に繋がったのでしょうか？

A、そうですね、最後にもう1失点したとはいえ、
3-0と4-1でも全然違うので、
今シーズンがどうこうではなくて、
この先もずっとJ1に残留しなくてはいけないチームになりつつありますし、
スタジアムもいいですし、街全体も盛り上がっていると聞いているので、
ああいう姿勢は大事ですよね。

Q、広島は最後に1点を取って試合を締めました。
非常に強いチームの勝ち方という印象を受けたのですが、
その勢いは感じましたか？

A、感じますね。あの展開で2点3点を取って、
今日は明らかに本調子ではなかったですけど、
まだミキッチもいるわけじゃないですか。
徐々にメンバーも揃って、勢いを保てれば
十二分に優勝が見えてくるのではないかなと思います。

Q、最後にゴールをしっかり取り切れる佐藤寿人の存在は大きいですね。

A、いや、本当に大きいです。
あのサッカーをするのだったら、
普通は日本人よりも外国人のストライカーをドンと置くのが
Jリーグの通常だと思うのですが、
そこを佐藤がしっかりと務めていることを考えると、
偉大な選手だなと思いますね。

再放送スケジュールは
10月2日（火）8：00～10：15　J SPORTS1
となっています。
是非このマッチレビューと共に再放送もお楽しみ下さい！

土屋