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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合は昨年のインターハイベスト4の立正大淞南と、山形県勢初のベスト8を成し遂げた羽黒の対戦。なかなか見ることのできない、"レア"な対戦カードとなりました。
初戦で強豪の東福岡を、今大会注目のストライカー林大貴(3年・長野FC)のゴールなどで2-1と撃破すると、3回戦は帝京第三に3ゴールを奪って勝利した立正大淞南。持ち前の「取られてもいいから攻撃的に仕掛けて、ぶち抜いてやれという」(南健司監督)攻撃姿勢は健在です。
一方、「そこにすべてを懸けていた」と本街直樹監督が話した初戦で、難敵の星稜にエース孫成周(3年・BANFF横浜)の2ゴールで快勝した羽黒。さらに上田西、選手権ベスト4の尚志を共にPK戦で振り切り、「4年連続で1回戦負けが続いていた」(本街監督)チームの快進撃が続いています。全国の選ばれし4強を懸けた一戦は、淞南が黄色、羽黒が白を纏い、キックオフを迎えました。
先に勢い良く飛び出したのは羽黒。4分、生田郁弥(3年・モンテディオJY庄内)が左へ落とし、受けた堀江京介(3年・FC古河)は鋭いドリブルから、カットインしてシュートを枠の左へ。6分、「あんなにいいボールが飛んでくるとは」と南監督も驚いた木村比呂(2年・モンテディオJY庄内)のロングスローは、ゴール前で混戦になるもDFが何とかクリア。同じく6分、左SB木村飛翔(3年・モンテディオJY庄内)のオーバーラップから木村比呂を経由し、孫が決定機を迎えかけるも、淞南CB佐藤拓真(2年・AZ'86 tokyo-ome)が素晴らしいカバーでクリア。早くも応援団の絶叫を誘います。
少し押し込まれた淞南の反撃は8分。林のパスから田中龍也(3年)が少し浮かせたミドルは、わずかにクロスバーの上へ。9分、クリア気味のフィードを体の強さで収めた林が、フィニッシュまで持ち込むも羽黒GK渡部悠己(2年・モンテディオJY庄内)がしっかりキャッチ。2つの惜しいシーンを創り出しました。
14分は羽黒。堀江を起点に木村比呂が左からクロス。3列目から飛び出した本間礼皇(2年・モンテディオJY庄内)のヘディングがクロスバーを越えると、この前後から徐々に流れは淞南へ。「3人で攻撃の練習をしているし、普段から仲が良い」(林)という林、田路大樹(3年・愛知FC U-15)、浦田雅之(3年・Erba FC)のトライアングルが機能し始め、18分には左へ流れた田路のクロスに、林が綺麗に合わせたヘディングは渡部のビッグセーブに阻まれましたが、いい形を創出します。
逆に羽黒はチームのスタイル上、守備時にSHがサイドのスペースを埋める必要があるので、押し込まれるとどうしてもドリブルが相手の脅威になっていた堀江も下がらざるを得なくなり、左サイドの優位性が少しずつ減退していきます。
28分も淞南。高橋壮也(2年・サンフレッチェくにびきFC)のスルーパスから林が抜け出しかけるも、羽黒のCB大須賀龍人(3年・モンテディオJY庄内)が懸命にクリア。30分も淞南。田路はキックフェイントから狭い所を通すラストパスを送り、浦田がドリブルからシュートを打ち切るも、渡部がキャッチ。時間の経過と共に黄色がペースを握って、前半の35分間は終了しました。
後半はスタートから淞南に交替策。田中を下げて、南監督も「ボールを持ってOKと言っている」曽田雅斗(3年・玉湯FC)を2トップ下へ投入。さらに攻撃面へテコ入れを図ると、41分は淞南。隅田竜太(3年・岩田FC)のCK。羽黒DFのクリアはゴール方向に向かいましたが、渡部が何とかライン上でキャッチします。
すると、42分には羽黒にこのゲーム最大のビッグチャンス到来。本間の右CKは一旦クリアされたものの、浮いたボールを池田大郎(2年・モンテディオJY庄内)がゴール前に入れると、孫が収めて決定的なシュートを放ちましたが、ここは淞南GK添谷舞樹(3年・松江嫁島SCパラバール)も譲らずビッグセーブ。スコアは動きません。
そんなジリジリとした展開の中、「曽田のキープで相手が中に集まれば、SBが高い位置へ出られる。それで相手のディフェンスが広がり出せば、田路がフリーになり始める」という指揮官の思惑が見事に噛み合ったのは50分。左サイドを「後半は止まらなくなっていた」(南監督)SBの高橋が上がって曽田へ。曽田は左へ流すと、受けた田路は対峙したDFを左へ外し、角度のない所からファーサイドへグサリ。「全員が自分の役割を果たしたので生まれた1点」と南監督も高く評価したゴールが生まれ、とうとうスコアボードに淞南の"1"が踊りました。
さて、なかなかリズムを取り戻せない状況で、ビハインドを負うことになった羽黒。「徐々にボールを受けたがらなくなって、どうしても長いボールに頼ってしまう」(本街監督)流れは否めず、頼みの堀江も自由にボールを持たせてもらえません。
54分も淞南。田路のパスを受けて、林が自分の間合いから放った左足シュートは、渡部がここもファインセーブ。「林には1点欲しかった」と南監督。惜しい所までは行くものの、エースのゴールはなかなか生まれずに、点差も変わらず。
56分は羽黒のロングスロー。木村の"投球"はGKがこぼしてゴール前で混戦に。詰めた生田はわずかの差でシュートを打てず。攻撃の形は創れない中でも、「あのロングスローはキツかった」と南監督も振り返る必殺技は、確実に相手へ脅威を与えていました。
60分に淞南が掴んだ隅田の惜しいチャンスも枠を外れ、最小得点差のままでラスト10分へ突入。64分には本街監督も生田に替えて、斎藤大輔(3年・モンテディオJY庄内)をこのゲーム唯一の交替カードとして送り込み、最後の勝負に打って出ます。
「二次攻撃を防ぐための後ろの配置も含めて、相当練習している」(南監督)という淞南の"クローズ"も巧みで、特に隅田のキープ力はそれだけで数分を潰せるレベル。刻々と消えていく時間。全国4強へ最後の攻防。
71分、右サイドで木村の粘り強いキープから、斎藤が左足で入れたクロスは、中と合わずゴールキックに。そして72分のラストプレー。木村が自ら奪い取ったスローイン。スタジアムを包む緊張感。長い助走から飛距離十分の投球は、集中力の切れなかった淞南がクリアすると、青空に吸い込まれたタイムアップのホイッスル。"黄色"の淞南が2年続けてベスト4へ勝ち進む結果となりました。
同校初、そして県勢初のベスト8まで勝ち上がってきた羽黒は、敗れたものの随所にその実力を披露してくれていたと思います。とりわけ堀江のドリブルは高校時代の松本怜(青森山田→早稲田大→横浜FM)を髣髴とさせる切れ味を誇り、本街監督も「全国でもある程度通用するんだなと感じた」と高評価。「アレを絡めた攻撃を増やしていければ、ウチの武器になるのかなと思います」と手応えを口にしていました。やはり「メインは選手権」(本街監督)という中での夏の躍進。今後の動向にも是非注目したいチームです。
2年連続のベスト4となった淞南。「お互い行けるかもしれない、勝てるかもしれないと怖がってプレーして、ミスが目立つような試合になることはわかっていた」と南監督。そんな展開の中でも目立っていた浦田、田路、林のコンビネーションはおそらく全国屈指の破壊力。特に林は「ゴール前の"いい感覚"は相当持っていると思う」と南監督も言及するなど、非常に"雰囲気"のあるストライカーで、また見てみたくなるような選手です。このチームも冬に向けて、まだまだ面白いチームになっていきそうな印象を受けました。 土屋
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