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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2012年08月26日

J2第31節 甲府×横浜FC@中銀スタ

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kose0826.jpg真夏の小瀬。上位対決2連戦のセカンドラウンドは、"ハマ"の昇り龍を迎え撃つ一戦です。
前節の上位対決ファーストラウンドは、昨年共にJ1で戦っていた山形と白熱のスコアレスドロー。4位以上のチームがいずれも勝利を挙げられなかったこともあり、1ヵ月近く君臨している首位をキープした甲府。4-3-3のシステムもアンカーの山本英臣を中心に機能性を増し、クラブ史上初の6連勝を挟んで12試合負けなしと抜群の安定感を誇っています。
一方、もはや開幕の遅れを補って余りある位置まで駆け上がってきた横浜。実は山口素弘監督就任以降、アウェイではわずかに2敗という驚異的な数字も。今日勝利すれば、他会場の結果次第でとうとう6位以上へ浮上する可能性もあるだけに、絶対に負けたくないゲームであることは間違いありません。昨日のJ1同様、夏休み最後の開催ゲームに集まった観衆は11875人。最高の雰囲気に包まれる中、井澤惇がボールを蹴り出し、注目の一戦は幕が上がりました。
先にチャンスを創ったのは横浜。2分、右サイドからSBの井手口正昭が上げたアーリークロスに、田原豊はオーバーヘッドを敢行。ヒットはしませんでしたが、コンディションの良さを窺わせます。3分は甲府のセットプレー。福田健介が右から蹴ったCKを、176センチの佐々木翔はかなり高い打点から枠の左へ外れるヘディング。お互い「前からアグレッシブに」(城福浩監督)やり合う姿勢を見せ付けます。
そんな中、少しずつリズムを握っていったのはアウェイチーム。「入り方は非常に良かった。落ち着いてボールを回してくれた」と山口監督も振り返ったように、中盤の流動性がパスワークに反映されたことと、とにかく田原豊にボールが収まったことで、スムーズに相手陣内へ侵入。
7分には武岡優斗、寺田紳一と繋いだボールを田原が左へ。フリーの高地系治はシュートをふかしてしまい、先制とはいきませんでしたが、綺麗な崩しを披露。さらに19分には、シンプルな武岡のフィードを田原は確実に頭で落とすと、ここもフィニッシュは高地。枠を越えるボレーにはなりましたが、田原を生かす2つの異なる組み立てで、決定的なシーンを創り出しました。
さて、セカンド奪取も相手に譲ることが多く、なかなか流れの中からいい形ができない甲府は、22分に佐々木のバックパスを柏好文が左サイドから右足でクロス。ダヴィはようやく自身ファーストシュートとなるヘディングを枠へ飛ばすも、横浜GKシュナイダー潤之介が正面でキャッチ。15分過ぎからはボールこそ回り出したものの、「攻め急いだり、躊躇して最終ラインでボールを回したり」(城福監督)するシーンが目立ち、フィニッシュを取れません。
すると、ゲームを動かしたのはやはり横浜。27分、CKの流れから、再びボールを受けたキッカーの高地は素早くはたき、武岡は右サイドを抜け出すとマイナスへの折り返し。これを堀之内聖がダイレクトで狙ったシュートは、ゴール左スミを鮮やかに捉えます。そこまでダヴィをほぼ完璧に抑えていたCBの今季初ゴールが飛び出し、横浜が1点のリードを奪いました。
追い掛ける展開となった甲府。34分には福田のパスから、ダヴィが2人をぶち抜いて放ったシュートはシュナイダーがセーブ。36分にも保坂一成の縦パスから、ダヴィが反転して放ったミドルは永里源気に当たり、オフサイドの判定。エースの「ボールが来なくてイライラした」想いが伝播したのか、チーム全体に重い空気が漂います。
44分には相手の軽いドリブルを柏が奪い、少し運んで左へ。フリーの井澤は右足に持ち変え、シュートを放つもボールはクロスバーを越えてしまい、決定機もフイに。最初の45分間は横浜が1点のアドバンテージを持って、ハーフタイムへ入りました。
後半はスタートから甲府に変化。永里に替わってピッチに入ったフェルナンジーニョを、ダヴィの下に置く4-2-3-1へシフト。人にも布陣にも新たな手を施します。そして、結果として大きかったのは「簡単にダヴィを走らせようという意識を統一した」(保坂)こと。
すると52分、CBの盛田剛平は最終ラインから粘って前へ持ち出すと、逆回転のフィード。「盛田選手から『ボールを出すのでしっかり走るように』と言われていた」というダヴィは、左サイドで並走していた堀之内を押し切ると右足一閃。激しく揺れたゴールネットと、激しく揺れたホームゴール裏のサポーター。1-1。ゲームは振り出しに戻りました。
勢いは完全に甲府。54分、フェルナンジーニョを起点に井澤が繋ぎ、保坂は右から中へ。ダヴィが2人を引きずりながら、強引に打ち切ったシュートは枠のわずかに右へ。上がる小瀬のボルテージ。山口監督も56分には高地に替えてチーム得点王の切り札・大久保哲哉を送り込み、4-4-2へ移行させますが、「ボールを失う回数が増えた」と話したように、中盤でのタメがなかなかできず、攻撃の時間を増やせません。
61分、柏が左へ送ったボールをフェルナンジーニョがマイナスに折り返すと、走り込んだ柏のシュートは堀之内が体でブロック。63分、柏が右サイドをえぐってクロスを送り、フェルナンジーニョがボレーで叩いたボールは枠の上に外れましたが、「スペースは空い
てきていたので、フェルナンジーニョに収まって、スピードアップする展開が増えてきた」と指揮官も言及した通り、交替策が奏功した格好で強まる甲府の攻勢。
すると73分、柏が左でタメて中へ送ると、受けたのは「前でボールが収まるので、ボランチのどちらかが上がっていく意識はあった」という保坂。「右に味方が見えたけど、とっさに切り替えて出した」柔らかい浮き球は、DF2人の間をすり抜けてダヴィの足元へ。迷いなく振り抜いた左足の一撃がシュナイダーの頭上を打ち破り、甲府サポーターの目の前にあるゴールネットへ突き刺さります。小瀬沸騰。「ハーフタイムに『もっとオレのことを信じてボールを出してくれ』と言った。オレを信じてくれればああやって決められる」と胸を張ったエースの逆転弾。甲府がスコアを引っ繰り返してみせました。
一転してリードを許す格好になった横浜。76分には最後のカードとして小野瀬康介を投入。1点を、そして2点を狙って最後の勝負に出ます。77分、後半最初のシュートシーンにして、最大の決定機。小野瀬がボールに絡み、佐藤謙介は浮かせて左へ。うまくふくらんで受けた田原のシュートは、しかし荻晃太が確実にセーブ。追い付けない横浜。
78分にはダヴィに決定的なチャンスが訪れましたが、枠を捉え切れずに1点差は継続。城福監督も79分に井澤と石原克哉をスイッチして、中盤の引き締めに着手。83分は横浜。ペ・スンジンの右アーリーを佐藤がフリックで繋ぎ、やや角度のない位置から小野瀬が狙ったシュートはクロスバーの上へ。同じく83分はフェルナンジーニョのドリブルシュート、86分にはダヴィの45mロングも3点目とはいかず、最小得点差のままで最終盤に突入します。
城福監督が切った3枚目のカードは87分。福田を下げてドウグラスをCBへ投入し、津田琢磨を右SBへスライドさせて、長いボールそのものと、セカンド対応に万全の構えを。アディショナルタイムは4分。
大久保と田原へ放り込まれる長いボールも、焦りからか精度を欠きがちで、高い集中力を持って対応する甲府の前に、シュートまで持ち込めない横浜。90分に加えられた時間もすべて消え去ると、小瀬の夜空に吸い込まれたホイッスル。「この試合に懸けている姿勢をもう一度見せてくれ」とハーフタイムに飛ばした指揮官の檄に、選手が最高の結果で応えた甲府が、今季ホーム初となる逆転勝利で勝ち点3を獲得する結果となりました。
ゲームの分岐点はやはり甲府の同点ゴールだったと思います。前半は明らかに苛立ちを隠せなかったダヴィが、自らの要求を結果にしっかり結び付けたことで引き寄せた流れ。城福監督も「前半はイライラ感があった中、今日に関してはそれをすべてプレーにぶつけられた。メンタル的に成長できたのかなと思う」と評価を口に。その部分をチームで乗り越えたことが、上位対決を制したこと以上に、ひょっとすると大きな成果だったのかもしれません。          土屋

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