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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
混迷を極める戦国J2。昇格プレーオフ圏内に当たる6位以上の順位も毎節入れ替わるような状況の中、現在は圏外にいるチームにもまだまだ十分過ぎる程、J1への扉が開かれています。
その筆頭とも言うべき存在が、6位と勝ち点差4で8位に付けている横浜FC。前半戦で抱え込んだ借金をすっかり返済し終えると、"調子の良い選手を起用する"という山口素弘監督の持ち込んだ競争原理がプラスに作用。ようやく昇格争いと呼べる位置の一歩手前まで這い上がってきました。
その横浜FCと対峙するのは、6位まで11ポイント差の11位水戸。前節は後半アディショナルタイムに新加入の吉本一謙が決勝ゴールを挙げ、大分に劇的な逆転勝利。これで11勝7分け11敗と五分の星になり、さらなる上位進出を狙います。平日のナイトゲームとはいえ、これが夏休み最後の三ツ沢開催ということもあってか、スタンドにはたくさんの子供たちが。わずかばかりではあるものの、秋の気配を漂わせる19時3分、水戸のキックオフでゲームは動き出しました。
いきなりの衝撃は6分。歓喜に沸いたのは横浜。自陣から阿部巧がロングフィードを中央に蹴り込むと、水戸は武岡優斗に2人が食い付いてしまい、こぼれたボールはフリーになった田原豊へ。浮き球の処理には定評のある34番が、綺麗にボレーで叩いたボールはゴール右スミを捕獲します。ゲーム自体のファーストシュートを結果に繋げたホームチームが、まずはアドバンテージを握りました。
以降も「ゲームの入り方を良くしなさいと優しい言葉をかけたので(笑)、非常に良かったと思う」と山口監督が話したように、ゲームリズムは横浜。10分には相手との接触で負傷してしまい、プレー続行不可能になった吉本に替えて、キム・ヨンギを急遽送り込むアクシデントもあって、水戸になかなかエンジンが掛からない中、的を絞らせない流動的な中盤が機能します。
「武岡は右に張るけど、あとの3人は基本的には攻撃のバランスで流動的に動く」と高地系治が説明してくれたように、スタートポジションがボランチの寺田紳一と佐藤謙介、左SHの高地は機を見て自由な位置取りに。17分には右サイドを武岡と寺田の2人が4回のパス交換で打開すると、佐藤と野崎陽介も絡み、10本以上のショートパスを繋いで、武岡が放ったミドルは枠の左へ逸れたものの、「こっちに来るかなあと思っている内に、向こうでシュートまで行っちゃった」とは高地。20分にも高地、野崎と回り、田原が裏に出したボールを水戸GK本間幸司が頭でクリアすると、こぼれを高地は緩やかなシュートへ。 ボールはわずかに無人のゴール右を通過しましたが、パスワークから横浜が追加点の機会を窺います。
押し込まれる水戸は28分、小澤司を起点に橋本晃司が右へ振ると、市川大祐のクロスを鈴木隆行が枠内ヘッド。ここは横浜GKシュナイダー潤之介がキャッチしたものの、30分にも橋本の左FKから最後は市川がフィニッシュまで。横浜DFのブロックに遭ったとはいえ、続けてチャンスを創り出します。
すると「立ち上がりはうまくいかなかったが、時間が経つにつれて良くなった」と西岡謙太が振り返った通り、今日はSHに入った小澤と橋本をボールが経由し始め、パスの繋がりもスムーズに。36分には西岡、ロメロ・フランク、鈴木と回り、小澤が左へスルーパス。上がってきたSBの輪湖直樹は折り返しを選択し、シュートには持ち込めませんでしたが、左右の揺さぶりから好機を創出。37分にも西岡とのワンツーから、橋本がわずかに枠を逸れるミドルにチャレンジ。「パスを回され始めたなと思った」とはベンチで戦況を見つめていた横浜の八角剛史。形勢が入れ替わりました。
しかし、好事魔多しと言うべきか、水戸にアクシデントが訪れたのは43分。尾本敬の田原へのアプローチがファウルを取られ、吉田哲朗主審はイエローカードと判断。15分にも1枚もらっていた尾本は退場となってしまいます。
前半で数的不利を被ることになったアウェイチーム。そんな中、前半終了間際の45+1分に生まれたのは追加点ではなく、同点弾。左サイドで輪湖が入れたスローインを鈴木が粘ると、ボールは星原の足元へ。思い切り良く右足を振り抜くと、少しDFに当たった軌道がサイドネットを射抜きます。10人の水戸がスコアを振り出しに戻して、最初の45分間は終了しました。
後半も流れはそのまま継続。柱谷監督は49分に早い決断を下し、星原を下げて石神幸征を右SBへ投入。市川をCBにスライドさせ、1列下がっていた西岡を再びボランチへ戻します。
流れの中からシュートを打てず、なかなかリズムを取り戻せない現状に山口監督も55分の交替策。野崎を下げて八角を送り込むと、寺田を左へ出して、高地が1トップ下のポジションへ。ボランチには八角と佐藤が並び、「もっとサイドへボールを動かしていく」(八角)イメージの共有を図ります。
このシフトチェンジが奏功したのは横浜。少しずつサイドを意識してボールを回したことで、少しずつ水戸の守備意識を分散させると、中央を突き刺したのは62分。「ああやってボールを動かしていけば、どこかが空いてくるのはわかっていた」という佐藤が縦に鋭くクサビを当てると、武岡は優しくフリック。走り込んだ高地は「GKは動くだろうなと思い、まっすぐ打てば入るだろうなと」利き足とは逆の右足で正面にグサリ。ようやく生み出した狙い通りの形から、横浜が再びリードを奪いました。
ただ、そのゴールもゲームの流れを一変させるまでには至らず。実は勝ち越し弾の直前から用意していた大久保哲哉を、そのままゴール直後に佐藤と交替させましたが、これも今日に限っては前が重くなる要因に。ボールの回りも鈍り始め、攻勢を取れません。
対する「どうしても耐えたかった」(市川)流れの中で失点を許した水戸は67分に橋本を下げて、明治大学在学中の特別指定選手で、既にリーグ戦でのゴールもマークしている山村佑樹を投入。その山村を鈴木と前線に並べるような4-3-2気味の布陣で、「隙を突いて一矢報いてやろう」(西岡)という姿勢を全面に押し出します。
68分は水戸。キム・ヨンギのFKから、最後に小澤が飛び込んだボレーは枠の左へ。72分は横浜。武岡が高い位置でカットすると、高地のループミドルは本間がバックステップから枠外へ回避。以降はお互いに手数を出し切れず、勝負は最終盤に入ると「上位を争う位置に行けば行くほど、リードが大事になって後ろに下がってしまう」と八角が言及したように、横浜を水戸が追い詰める展開に。
85分、ドリブルで左へ流れながら打った小澤のシュートは、シュナイダーがキャッチ。87分、小澤のクサビを鈴木がダイレクトで浮かせ、山村が抜け出しかけるもDFが間一髪でクリア。89分、市川からパスを受けた山村のミドルはバーの上へ。攻める水戸。耐える横浜。
90分、右から石神が上げたクロスを鈴木が頭で狙うも枠の左へ。92分、石神、市川と丁寧に繋ぎ、エリア内の山村は鋭い切り返しからシュートを放つも、DFが懸命にブロック。93分、本間も上がってきた市川の右FKは横浜がクリア。94分、ここも本間が駆け上がった小澤の左CKは、ニアで鈴木がフリックするも、DFが何とかクリア。そして95分32秒、激闘の終わりを告げるホイッスル。「非常に疲れました」と勝軍の将も思わず口にしたゲームは、横浜が苦しみながら勝ち点3を手にする結果となりました。
「10人になってもあれだけのハードワークで、ファイトした水戸に敬意を表したい」(山口監督)「1人少なくても、あれだけハードワークしてくるのは凄い」(高地)と2人が語ったように、水戸のアグレッシブさが際立ったゲームだったと思います。「最後までゴールを目指してやったのは水戸らしいサッカー。いいファイトを見せてくれた」と柱谷監督が話せば、「自分たちの戦い方は崩れなかったし、10人になっても誰も諦めていなかった」とは西岡。サポーターも選手たちへ大きな拍手を送っていたのが印象的でした。
勝った横浜は確かに内容こそ「あまり良くなかった」(山口監督)ものの、それでも白星を引き寄せられるのは地力の証明でもあります。「内容の善し悪しと結果のアンバランスさの難しさ」を指摘したのは八角。その課題に到達しつつある横浜が、いよいよ本格的に昇格争いへ参戦してきました。 土屋
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