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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
最強への誘い。クラ選も残るは準決勝と決勝のみ。ここからの2試合を制した者だけが、日本一の称号を手にすることになります。第1試合は横浜FMが京都を3対2で振り切り、7年ぶりのファイナルへ。あと1枠を巡る第2試合は広島と柏の対峙となりました。
1次ラウンドはG大阪相手に5対5という壮絶な殴り合いからスタートした広島。横浜FCと富山からは勝ち点3を奪い、堂々のグループ首位通過を果たすと、決勝トーナメントはG大阪に5-1、横浜FCに2-1と共に再戦となった相手を下して、8年ぶりの優勝まではあと2つに迫っています。
一方、東京V、名古屋、C大阪と昨年の4強が3チーム同居する"死のグループ"を、何とか抽選で抜け出した柏。決勝トーナメントは新潟、鹿島を苦しみながらどちらも1-0で退け、3年連続のベスト4まで勝ち上がってきました。舞台は今日から横浜。時間も19時キックオフになり、27.2度とおそらく今大会最高のコンディションの下、柏のキックオフで時計の針は動き出しました。
立ち上がりからリズムを掴んだのは、「レイソルらしくやってこい」と下平隆宏監督に送り出された柏。秋野央樹(3年・柏レイソルU-15)、小林祐介(3年・柏レイソルU-15)、中川寛斗(3年・柏レイソルU-15)で構成される"黄金の中盤"がスタートから実現すると、やはりここでの受けてはたいてを繰り返すリズムは秀逸。さらに「広島の守備時は5-4-1なので、ウチのSBがフリーになる」(下平監督)こともあって、幅を使ったパス回しで一方的に押し込み続けます。
7分には右サイドで吉川修平(3年・柏レイソルU-15)と中川のパス交換から、吉川の鋭いスルーパスはオフサイドになりましたが、そのパスワークにスタンドの子供たちも騒然。すると11分に生まれた先制点。秋野が右へ散らし、SBの堤勇人(3年・柏レイソルU-15)は高速アーリークロスをニアへ。これをGKがファンブルすると、しっかり詰めていた平久将土(3年・柏レイソルU-15)がプッシュ。早くもスコアが動きました。
止まらない強烈な陽射し。14分、秋野を起点に中川が1つズラして右へ。吉川のクロスに飛び込んだ平久のヘディングは枠を越えましたが、2分後には追加点。16分、小林、堤、川島章示(3年・柏レイソルU-15)と小気味よく繋ぎ、平久が右へ流すと、中川はダイレクトで左のサイドネットに突き刺すファインゴール。完璧な形で点差は2点に開きます。
なおも止まらない強烈な陽射し。1分後の17分、中盤で一度は失ったボールを、秋野が素早く回収して、そのままラストパス。受けた平久はダイレクトでGKの股間を破る、これまたファインゴール。鹿島戦ではスタメンを外れた前回大会の得点王が、「やっと戻ってきたかな」と指揮官も評価した自身2点目を奪い、リードが広がりました。
さて、G大阪との初戦同様、20分以内に3失点を喫した広島。「みんながボールを欲しくないみたいな。それでボールを受けたヤツが困っちゃって、奪い返されたらまた守備に追われて、その追い方も中途半端だから後手後手になった」という的確な表現は森山佳郎監督。配給役の平田惇(3年・サンフレッチェ常石)も守備に軸足を取られ、中盤での数的不利に頼みの野津田岳人(3年・サンフレッチェ広島JY)も、やはり守備に奔走。相手陣内へ侵入することもままなりません。
後ろで探り、前に仕掛け、ダメなら戻すを繰り返し、常に"11人"がパス回しに関与しているスタイルが、最大限にハマった柏の続く攻勢。38分、秋野のパスカットから平久を経由して、吉川が右から狙ったシュートは枠の左へ。ドリブルにパスワークの起点にと、際立ったパフォーマンスを見せていた吉川の、さらなる見せ場は41分。右サイドで小林とのワンツーから、一段階加速した吉川は完全にマーカーを振り切り、GKとDFの間を通す完璧なグラウンダークロスを送ると、難なく川島が押し込みます。
「ちょっとしたスペースを見つけて、グングンと切り裂くようなドリブルが今大会はできてきている」と下平監督も言及した吉川の好アシストで4点目。相手のシュートも45+1分に末廣浩暉(3年・ハジャスFC)が放った枠外ボレーの1本に抑えた柏が、大きなアドバンテージを握ってハーフタイムへ入りました。
後半も先にチャンスを迎えたのは柏。47分、小林が右サイドに潜って折り返すと、平久のフィニッシュは枠に嫌われましたが、早速惜しいシーンを創出します。
一方の広島は、メンバーの交替こそなかったものの、2シャドーの一角に入っていた越智大和(2年・四国中央土居中)と、左WBの末廣を入れ替え、変化を付けてきます。51分にはCFの大谷真史(3年・サンフレッチェ広島JY)が相手ボールを奪い、そのままドリブルシュート。54分には浅野間勝仁(3年・サンフレッチェ広島JY)の左CKがゴール前で混戦になり、シュートまでは行けませんでしたが、「4-0から諦めないのがウチの良さ」と森山監督も話す"広島ユースらしさ"が出始め、徐々に広島へ傾き出した流れ。
その姿勢が結実したのは58分。野津田が左へ振ると、大谷は粘り強く懸命に縦へ持ち出して中へ。正面から堂々とゴールへ流し込んだのは、ポジションを替えていた末廣。4-1。点差は3点に縮まりました。
この辺りから、広島で目立ち始めたのはシンプルに大谷目がけて、長いボールを放り込む形。これには「早めに入れて、できるだけゴールに近い所でプレーしたかった」と森山監督。そして、そのやり方は奏功。63分、平田、浅野間、野津田と細かく回し、末廣が右へ送ると、野口翼(2年・FC古河)が折り返したボールを浅野間が叩くも、ヒットせずにゴール右へ。67分、大谷のポストプレーから平田が左へ展開。野津田、末廣と繋がり、浅野間がマイナスに折り返すと、大谷のフィニッシュは柏GK伊藤俊祐(2年・柏レイソルU-15)がファインセーブ。
72分、ここも平田を起点に川辺駿(2年・サンフレッチェ広島JY)、野津田と回し、末廣が右からクロス。こぼれを浅野間が狙うもDFがブロックで回避。とはいえ、シンプルゆえにやることがハッキリした強みか、セカンド勝負から持ち前のパスワークもしっかり発動。「とにかくアバウトに入れて、そのセカンドをとなってくると予想外のことが起きる。セカンドが拾えなくて、押し込まれた部分はある」と下平監督。広島の時間帯が続きます。
74分には左へ展開すると、浅野間のクロスは中央にこぼれ、野口が思い切り良くチャレンジしたミドルはクロスバーにヒット。あと一歩までは迫りながら、縮まらない点差。すると75分過ぎからは再び柏にリズム。その影には、56分に小林と替わってピッチに入った伊藤光輝(3年・柏レイソルU-15)の存在が。どうしても"黄金の中盤"3人に注目が集まる中、「秋野、中川、小林、伊藤光輝は誰を使っても本当にいいし、力がある」と下平監督も触れたように、大会を通じて伊藤の貢献度は抜群。このゲームでも、少し押し込まれ始めた難しい時間帯の投入にも、溜める所と出ていく所の使い分けで、チームを落ち着かせる役割をしっかり果たします。
76分、秋野が左へ付けると、新藤菜央(3年・柏レイソルU-15)が上げたアーリークロスを川島が落とし、伊藤光輝のシュートはDFのブロックに遭ったものの、チームとして久々のシュートを放ち、以降はうまく広島をいなしながら、チャンスを窺う展開に。最後の力を振り絞った広島のラッシュもなかなかフィニッシュには繋がりません。
逆に終盤は柏がビッグチャンス連発。83分、秋野の素早いリスタートから、替わったばかりの木村裕(3年・柏レイソルU-15)が打った決定的なシュートは広島GK中村慧(2年・フォルトゥナSC U-15)がファインセーブで阻止。90分、白井永地(2年・柏レイソルU-15)が送ったラストパスに、抜け出した川島のシュートは枠の左へ。91分、投入直後の大島康樹(1年・柏レイソルU-15)が完璧なスルーパスを通し、走り込んだ白井のシュートは、ここも中村がファインセーブ。93分、木村がミドルレンジからトライしたシュートは、クロスバーをかすめて枠外へ。
そして今大会初めて夜空に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。諦めない広島のファイトが最後までゲームの緊張感を保ってくれましたが、こちらも常に追加点への意欲を発露させ続けた柏に軍配。太陽王が明日のファイナルへ駒を進める結果となりました。
前半の集中力が勝敗を分けるポイントになったゲームでした。中でも分岐点になったのは柏の3点目。2点目の1分後に広島のミスを突いた所から奪ったこのゴールが、少なくともこの瞬間は相手の心を折ったのは間違いなく、スコア的にさすがの広島にとってもかなり厳しくなったポイントだったと思います。それでも「4点リードがあるのに、広島さんのパワーが凄くて恐怖感はあった」という下平監督の言葉も偽らざる気持ちでしょう。点差こそ離れましたが、セミファイナルにふさわしいハイレベルな一戦でした。 土屋
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