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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2012年07月29日

J2第26節 甲府×東京V@中銀スタ

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kose0729.jpg真夏のJ2頂上決戦。2位の甲府と首位の東京Vが、甲斐国で激突します。一時は4試合未勝利で9位まで順位を落とした甲府。そんな苦境でも城福浩監督のブレない指針を貫き、ゲームを重ねると共に復調を果たすと、現在は3連勝中。前節は首位の千葉相手に耐えて耐えてダヴィの1点を守り抜き、2位にまで上がってきました。
対する東京Vは、例年苦手にしていた開幕ダッシュも決まり、常に昇格プレーオフ圏内をキープ。キャプテンを務めていた小林祐希の放出という意外なトピックスはあったものの、代わりに川崎から柴崎晃誠が期限付きで復帰と、楽しみな要素も入ってきました。夏休みのビッグマッチには今季2番目に多い12105人が集まり、熱気がほとばしる小瀬。甲府がボールを蹴り出し、注目の一戦はスタートしました。
いきなり沸騰した青赤。右サイドから福田健介が入れたスローインをダヴィがワンタッチで流すと、走り込んだ永里源気が豪快にゴールネットを揺らしてみせる、衝撃の立ち上がり。その時間、秒針がわずかに150度傾いただけの25秒。「彼の所にボールが転がってきたのが嬉しかった」とは城福監督。意外な伏兵の今季2点目が飛び出し、早くも甲府がアドバンテージを握りました。
この後も得点者の勢いが続き、6分には永里が左サイドを抜け出すも、フィニッシュは東京VのGK土肥洋一が足でファインセーブ。8分にも右サイドで福田、保坂一成と繋ぎ、柏好文のクロスにここも永里が合わせたヘディングは枠の左へ。甲府が攻撃のリズムを掴みます。
さて、「最悪の入り方」(川勝良一監督)になってしまった東京V。中後雅喜と梶川諒太を共に出場停止で欠いたボランチには、普段SHを務めている西紀寛を起用したものの、なかなか間に入ってくる相手のアタッカーを捕まえ切れず、「早い失点から統一感が少し揃わなかった」と指揮官も話すなど、攻守にチグハグ。12分には高橋祥平のフィードを飯尾一慶が足でフリック。収めた阿部拓馬が前を向いて仕掛け、折り返しが跳ね返ったボールを田中貴大が狙ったシュートはわずかにクロスバーの上へ。ゴールを予感させるようなプレーは出てきません。
18分には、右サイドを1人で強引に切り裂いたダヴィのシュートが土肥を強襲。22分には福田がゴール右寄り、約25m弱の距離から直接狙ったFKはわずかにバーの上へ。続く甲府の攻勢。すると26分、東京Vにさらなる追い打ち。クサビを受けに下りたダヴィへ、後ろからチェックに行った深津康太のチャージに対して、ダーレン・デッドマン主審はイエローカードを提示。6分にも警告を受けていた深津は退場を宣告されてしまいます。東京Vは熊本戦に続いて、今日も前半から数的不利を被ることになりました。
「1枚もらっているんだから、疑わしかったらそこは避けないと」と話した川勝監督は、左SBの中谷勇介に替えて刀根亮輔をCBへ投入。右SHだった田中を左SBに移し、巻誠一郎を1トップに置いた4-4-1気味にシフトします。
ここからは1人多いホームチームが一層押し込む展開に。29分、井澤惇のブレ球ミドルは土肥がセーブ。36分、福田の右CKを盛田剛平がドンピシャで合わせたヘディングは土肥の正面。41分、佐々木翔のFK1本からダヴィが抜け出すも、GKとの1対1は39歳に軍配。追加点は奪えません。
そんな中で再び起きたアクシデント。45+1分、保坂の刀根に対するチャージへ吹かれたホイッスル。懸念されたことが現実に。5分前に警告を受けていた保坂も退場処分。明らかな"帳尻合わせ"のジャッジにスタンドも騒然となりますが、ゲームはこのまま甲府がリードしてハーフタイムへ入りました。
この日の"ホームタウンサンクスデー"対象市町村の市川三郷町による打ち上げ花火を経て、スタートした後半は東京Vがペースを奪取。47分、阿部とのワンツーで抜け出した飯尾のシュートは甲府DFが辛うじてブロック。51分、左サイドからクイックで始めたFK。西のパスから刀根が枠に飛ばした強烈ミドルは、甲府GK荻晃太がファインセーブ。一気に流れに乗った東京V。
そして、52分に訪れた緑の歓喜。和田が右へ付けると、サイドに開いた阿部が力強いドリブルから中へ折り返し、フリーになっていた高橋が確実にプッシュ。東京Vが勢いそのままに追い付いてみせました。
実は後半開始から選手は替えていなかったものの、東京Vは配置転換を敢行。「足元がうまいし、カウンターの基点になれる」(川勝監督)阿部を最前線に置き、「ディフェンスもしっかりできるし、長いボールにも対応できる」(同)巻をボランチの位置にスライド。西を右SHへ移していました。この形が結果的に奏功。「僕がいるよりあの3人でパスをどんどん回した方がリズムが創れる」という巻の思惑も正解になり、「中からサイドに流れた方が怖い」と山本英臣も評した阿部が、まさにその形からアシスト。そのハマり方も含めて、ゲームは完全に東京Vのコントロール下へ置かれました。
嫌な流れの甲府も失点直後に交替策。53分、先制ゴールの永里を下げて、同じポジションに石原克哉を送り込みます。それでも形勢は大きく変わらず。62分には西とのワンツーから、一層オーバーラップに迷いのなくなった森勇介が、キレのある切り返しで1人をかわしてから左足シュート。ここは何とか津田琢磨が頭でクリアしたものの、緑のピッチで緑の選手たちが躍動します。
押し込まれる時間が続く中、「どこで時間を創って、ゲームを落ち着かせるか」という自身への問いに、城福監督が答えを出したのは67分。井澤に替えてフェルナンジーニョを投入。守備のリスクは承知で勝負に出ます。70分の甲府。そのフェルナンジーニョがドリブルから左へ。受けた柏のカットインシュートは土肥にファインセーブで回避されましたが、狙った効果からチャンスを創出。わずかに変化したバランス。
71分、そのCKの流れからボールが右サイドに流れると、反応したフェルナンジーニョは優しいクロス。「誰が上げたか覚えていないくらい必死に中へ入った」柏が確実に頭で流し込み、小瀬沸騰。ようやく掴んだ決定機を見事にモノにした甲府が、再びリードを手にしました。
ワンチャンスで失点を喫した東京Vは、直後の72分に飯尾を下げてジョジマールを投入。変形の2トップ気味に布陣を変えて、狙いにいく"2点"。75分、CKの流れから森が30mクラスのミドルを枠内へ飛ばすも、荻がファインセーブ。76分、西の右CKに刀根が食らい付いたヘディングは枠の左へ。77分、森のフィードを「守備6、攻撃4くらいの配分」で獅子奮迅の働きを見せていた巻が落とすと、阿部が決定的なシュートを放つも、荻がビッグセーブ。死力を尽くす首位決戦はラスト10分の攻防に。
82分、甲府はDFラインで一番背の低い福田からドウグラスへ。83分、東京Vはスタメン最年少で奮闘した田中から小池純輝へ。あらゆる策が講じられたピッチで、次のゴールを記録したのは地元出身の生え抜き選手。87分、柏が意地のドリブルで距離を稼ぎ、中央のフェルナンジーニョへ。"時間を創れる男"が溜めて右へ送ると、受けた石原は中へ加速、加速。視界に捉えたゴールの枠を外さないように、けれども貫くことができるように、絶妙のパワーで送り出したボールは、最高のコースへ吸い込まれていきます。
「ここ数年で初めて"我"を出したんじゃないですか」と長年苦楽を共にしてきた山本も語る、石原の今季初ゴールは貴重な貴重な追加点。最後に待っていた6分という"ありえない"アディショナルタイムも消し去った甲府が勝ち点3を奪い、クラブ史上初となる首位へと躍り出る結果となりました。
「両チームともジャッジの基準の違いで難しかった」と川勝監督が話し、「10人対10人でやらなきゃいけないゲームだったのか。あれだけカードを乱発するゲームだったのか。6分のアディショナルタイムが本当にあったのか。日本のサッカーのためにも私は話し合いたい」と城福監督も話したように、Jリーグのスタンダードとは明らかに異なる主審のジャッジという外的要因がある中で、首位決戦にふさわしい内容のゲームを両者共に見せてくれたと思います。
そんな中で勝敗を分けたのは、「交替で入った選手の質」と川勝監督。出場停止やケガでスタメン構成にも苦労した東京Vと、切り札のフェルナンジーニョが2アシストを記録し、ベテランの石原が試合を決めるゴールを奪った甲府。このゲームに関しては、確かに敗将の指摘が端的に結果の要因を表しているように、私は感じました。        土屋

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