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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
5年ぶりのトップディビジョンへ。3節以降は常に昇格プレーオフ圏内をキープしている2位東京V。ここ4試合は負けと勝ちが続いているだけに、久々の連勝で3位以下のライバルを牽制したいゲームは、不動の右SB森勇介が出場停止で、土屋征夫と飯尾一慶を負傷離脱で欠く上に、杉本健勇もレンタルバックと少し苦しい布陣の中で迎えます。
一方、前節は京都に0-1で敗れ、連勝が3でストップした16位熊本。とはいえ、上位との勝ち点差を考えても、キッカケさえ掴めばまだまだ6位以内は十分射程距離。加えて、今節から出場可能になった「このチームのためにできるのは結果を出すこと」と語る北嶋秀朗がいきなりのスタメンデビュー。見所満載の一戦は22.3度という7月とは思えない涼しさの中でキックオフされました。
立ち上がりはお互いに比較的ラフなボールを前に入れる中、セットプレーからチャンスを創り合う展開。東京Vは中後雅喜と西紀寛が、熊本は養父雄仁と原田拓がキッカーとして、10分までにそれぞれ1回ずつゴールに迫るボールを蹴り入れます。
先に決定機を掴んだのは熊本。11分、藏川洋平を起点に養父が縦へ。藤本主税の落としを武富孝介がクロス気味のシュートに変えると、ニアに飛び込んだ北嶋が右足でボレー。本人も「入ったと思った」弾道は土肥洋一が体で防ぎ、再び北嶋が飛び付いたシュートもDFにブロックされましたが、39番のストライカーが早くも"らしさ"を発揮してみせます。
ただ、以降は東京Vが押し気味に進行。池内明彦主審が比較的笛をよく吹くタイプだということも手伝い、ゲームの流れも切れやすく、セットした状態からのリスタートが増加。こうなると、必然的にボールを握られている側のファウルが多く、東京Vにセットプレーの機会が多くなりますが、なかなか決定的なシーンを創るまでには至りません。
熊本もターゲットとして北嶋を狙う意図は窺え、実際にボールを収める場面もあったものの、「少し孤立する場面があるのは理解している」と北嶋も話したように、周囲のサポートを得られないロストも散見。26分には筑城和人のクリアに、武富が走り込んでボレーを狙うもヒットせず。30分には東京Vも小林祐希が右へ振り分け、2試合連続スタメンとなったルーキーの田中貴大がカットインから打ち切ったシュートも枠の右へ。膠着した時間が続きます。
そんな中、均衡を破ったのはやはりセットプレー。37分に獲得した東京VのFK。「そこまであまりいいボールが蹴れていなかった」という中後の自身5本目となるセットしたキックは、完璧な軌跡を描いて中央へ。飛び込んだ深津康太のヘディングもこれまた完璧。教本のようなセットプレーが飛び出し、ホームチームがリードを奪いました。
ところが、武富のアーリークロスへ北嶋がわずかに届かず、アウェイゴール裏からため息が漏れた直後の前半終了間際にアクシデント発生。中盤でのルーズボールに反応した片山の顔に、中後のスパイクの裏がヒット。明らかに故意ではなかったものの、ここは本人もある程度納得の一発レッドカード。東京Vは残り45分近くを10人で戦うことになりました。
45+2分には熊本に惜しいチャンス。中央左寄りから養父が蹴ったFKに、1人だけ密集から離れて後方へ走り込んだ北嶋が「アレは割と入る形」というバックヘッド。しかし、今度はクロスバーに跳ね返るアンラッキーでゴールならず。東京Vがリードを、熊本が数的優位を得て、45分間は終了しました。
後半の入り方が良かったのは10人の東京V。47分、49分と続けてFKからチャンスを創ると、55分には深津のフィードを巻誠一郎が収めて独走。フィニッシュは枠の右に逸れましたが、巻を最前線に据えた4-4-1で「8人は慌てて出ない」(川勝良一監督)戦い方が、逆にうまくハマります。
数的優位をなかなか生かせない熊本は、高木琢也監督が56分に決断。原田を下げて、市村篤司を右のWBへ投入。藏川がボランチへスライドして、変化を付けてきます。すると、その市村がすぐさま好機を演出。57分、養父のパスを藤本がヒールで繋ぎ、走り込んだ市村はニアへピンポイントクロス。得意のゾーンで北嶋がバックヒール気味に狙ったシュートは、ここも土肥のファインセーブに遭ったものの、このワンプレーでペースを掌握。63分には東京Vも西と巻の連携から小林が決定的なシュートを放ちましたが、南雄太がファインセーブで回避。流れを掴みます。
67分に藤本と仲間隼斗を入れ替え、前線の運動量を強化した熊本は、ここからチャンスの嵐。69分、市村の右クロスはファーでフリーの武富まで届くも、ボレーは枠の左へ。73分、片山のクサビを北嶋が丁寧に落とし、仲間を経由して武富が打ち切ったミドルは枠外へ。さらに79分には決定機。武富とのパス交換から、完全にサイドを制圧した市村のクロスはファーまで。片山の強烈ミドルを土肥が弾き、こぼれに反応した仲間のボレーは再び土肥がビッグセーブ。今シーズン2試合目の出場となった38歳の執念が勝り、「ボールを握って攻めることはできるチーム」という北嶋の言葉を証明するような熊本の猛攻も実りません。
81分には養父の左FKに、ニアへ武富が頭から飛び込むも、ボールはわずかに枠の左へ。84分にはFK、86分にはCKを養父が入れるも、シュートには結び付かず。89分、市村が右サイドで切り返して巻いたミドルはゴール左へ。「意図したチャンス」(高木監督)を創りながらも、どうしても1点が奪えない熊本。
すると、90+2分に訪れた緑の歓喜。鋭い出足でパスを奪った高橋祥平は、そのまま前に飛び出すと梶川諒太からのリターンを受けて、シュートにトライ。「イメージはしていたが、そこにたまたまうまく飛んだ」というボールは、糸を引くようにゴール右スミへ飛び込みます。本人は「まぐれです」と話しましたが、この一発で決した勝敗。「メンバーがいない中でよくやってくれた」と指揮官も評価した東京Vが、数的不利を強いられながらもしっかり勝ち点3を手にする結果となりました。
敗れた熊本は「プレーに関しては非常に満足している」と高木監督も言及したように、数的優位を差し引いても、いい攻撃の形はできていました。それだけに「フィニッシュがなかなか枠に行かない」(高木監督)ことを考えれば、そのフィニッシュを増やすことが最大の課題。ただ、「ある意味ぶっつけに近い状況」で存在感を見せた北嶋のパフォーマンスは大きな収穫でしょう。次節以降が楽しみになるゲームだったと思います。
勝った東京Vは「退場者が出て、後半は少しやり方を変えなければいけなかった」(川勝監督)中、追加点を奪って勝ち点3を手繰り寄せたことはもちろんですが、数人の主力を欠いたゲームで結果を出したことも、今後に向けてプラス材料。3節ぶりに首位にも返り咲くなど、大きな白星になりました。 土屋
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