最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ロンドン橋への国内ラストゲート。18人の精鋭が決定した、オリンピックに臨むU-23日本代表。今日のテストマッチが国内で行われる最後のゲームです。
聖地国立に迎える相手は、やはりこちらもロンドンへ歩みを進めたU-23ニュージーランド代表。ライアン・ネルセン、マイケル・マクグリンチー、シェーン・スメルツと南アフリカワールドカップに出場した3人のオーバーエイジを加え、狙うはオリンピック初勝利です。
日本は宇佐美貴史と酒井高徳の招集が間に合わず、負傷明けの吉田麻也は大事を取ってベンチ外。注目の最終ラインには右から酒井宏樹、鈴木大輔、山村和也、オーバーエイジの徳永悠平が並び、中盤より前はロンドン行きを決めたバーレーン戦と5人が同じ顔触れ。左SHにはJリーグで結果を出している永井謙佑が入りました。
まず危険なシーンを創り出したのはニュージーランド。5分、オーバーラップしてきた左SBイアン・ホッグのクロスに、日本は飛び込んできた選手を捕まえ切れず、鈴木のクリアも山口螢の背中に当たってCKに。いきなりバタバタした対応を強いられます。とはいえ、実際に立ち上がりからボールを圧倒的に保持していたのはホームチーム。「東(慶悟)とタカ(扇原貴宏)が入れ替わるのは練習でもやっている」と鈴木が話したように、東が少し引いて受けて、そのスペースを清武弘嗣や大津祐樹が使うことで、ボールの回りもスムーズに。
9分には山村のサイドチェンジを右サイドで受けた清武がカットインからスルーパス。これはわずかに東へ届きませんでしたが、以降はチャンスの連続。10分、清武が左へ振ると、永井は切り返してクロスを送り、東が狙ったボレーはジェームズ・ムサが体でブロック。14分、大津を起点に清武が右へ。酒井の折り返しを清武はダイレクトではたき、こぼれを扇原が枠を越えるボレー。16分、CKの流れから最後に大津が枠へ飛ばしたミドルはGKジェイク・グリーソンがセーブ。
17分、左のショートコーナーから山村が当てたヘディングは枠の右へ。19分、清武が溜めて送ったスルーパスに、反応した大津のシュートはネルセンがブロック。「前半の20分くらいまでは非常に躍動感があった」と関塚隆監督も言及する攻勢で、ニュージーランドを自陣に押し込めます。
また、守備面でも「中盤は人に寄せることができていた」と鈴木も話したように、扇原と山口を中心に失ったボールの回収も抜群。フル代表のイメージとは違い、比較的繋ぐスタイルの相手という点も連携面に不安を抱えていた日本の最終ラインにとっては好都合。注目されていた徳永も「右サイドが(酒井)宏樹なので、バランスを取りながら守備することが求められている」と、ある程度は攻め上がりを自重して守備に腐心すると、指揮官も「徳永が入ったことで守備の安定感が増した」と高評価。破綻なくゲームを進めていきます。
26分には清武、大津、清武と繋いで、永井の少し浮かせたミドルはわずかに枠の左へ。29分、大津とのワンツーから永井が右へスルーパス。清武はシュートも打てる位置ながら、中へのパスを選択するとDFがクリア。30分、徳永の左クロスを胸でワントラップした大津はオーバーヘッドにトライ。グリーソンが何とかキャッチしたものの、スタンドのボルテージが一段階引き上げられます。
ただ、この前後から「向こうもリズムが合ってきた」(関塚監督)からか、少し日本の前線に流動性がなくなり、ボールの回りも停滞。35分には東が横パスをカットすると、永井がドリブルからシュートを枠へ飛ばすシーンを創りましたが、39分にはマクグリンチーの直接FKが権田修一を襲うなど、流れに変化が訪れます。シュート数では9対1と圧倒しながら、日本にとっては少し嫌な風向きの中、前半は終了しました。
後半がスタートすると、最初のシュートはわずか開始24秒。右から切れ込んだ永井のフィニッシュは左ポスト直撃。こぼれを拾った清武のシュートは枠の上に逸れましたが、このワンプレーで再び引き寄せたリズム。
50分、清武の絶妙スルーパスに大津が抜け出すも、飛び出したグリーソンがファインセーブで阻止。51分、清武の左CKを山村が合わせたヘディングもグリーソンがファインセーブ。55分、扇原のクサビを東が落とし、大津のシュートはわずかに枠の左へ。攻勢を強めます。
すると関塚監督の決断は55分。東に替えて杉本健勇を投入。杉本は最前線に入り、大津が1列下がる布陣にシフトします。しかし、ここからは「この代表では久しぶりの試合」という杉本の生かし方がハッキリせず、なかなかシュートまで持ち込めない展開に。63分には山口を下げて、村松大輔をそのままドイスボランチに送り込み、扇原を前に押し出す形を取るものの「少し後ろでやり過ぎた」(関塚監督)こともあってか、膠着した時間が続きます。
そんな重い空気を切り裂いたのは最年長の28歳。71分、扇原のオーバーラップから「たまたまこぼれてきた」ボールに反応した徳永は、中にボールを運ぶと「意外性のある」(関塚監督)ミドル。強烈な弾道にグリーソンも何とか弾きましたが、そこに詰めていたのは「こぼれてくる感覚があった」という最年少の杉本。最年長と最年少の融合。ようやく日本のスコアボードに"1"の数字が踊りました。
75分を過ぎると、お互いに流れの中からは攻撃の手数を繰り出せない展開。関塚監督は山崎亮平、米本拓司とバックアップメンバーを2人投入し、81分には2分前にも惜しいFKを披露するなど、ハイパフォーマンスを見せた清武に替えて、齋藤学を投入。「ほとんど守りに時間を費やしていたので、マイケル(・マクグリンチー)とシェーン(・スメルツ)までボールが届かなかった」(ニール・エンブレン監督)ニュージーランドも88分までにGK以外のベンチ入りメンバー4人を全員ピッチに送り出すなど、ゲームは日本の"壮行"試合としての役割をある程度は満たす方向に進んでいたはずでした。92分に齋藤のドリブルシュートがわずかにゴール左へ外れた時も、その方向に影響はなかったと思います。
ところが、そんなムードが一気に暗転したのは94分。自陣で村松がボールを持つと、背後からコスタ・バルバロウセスがボール奪取。そのまま前に運んで右へ送ると、マルコ・ロハスはスルー。大外でフリーになったダコタ・ルーカスは権田との1対1も難なく左スミへ。「あの時間帯にゼロで抑えられないと」(鈴木)「こちらが追加点を入れられなくても、しっかり守り切らなくてはいけない」(徳永)という悪夢の失点でドロー決着。最後の最後で「こういう試合をやっていたら、勝ち点を失うことになる」(関塚監督)と痛感せざるを得ない、残念な結果になってしまいました。
失点のイメージが強いので全体の印象もボヤけがちですが、特に前半は崩した形からのチャンスも多く、決して悪い内容ではなかったと思います。ただ、後半は「同じようなテンポになってしまった」(関塚監督)ことで、横への変化や縦へのスピードアップを繰り出せず、人を替えても効果は薄かった印象を受けました。
一方で、守備に関しては「あの失点以外はチャンスを創られていない」と鈴木が話したように、徳永も含めた最終ラインの守備は十分機能。「コンパクトにできていたし、切り替えはみんなが意識してやってくれた」と指揮官も評価を口にしています。だからこそ、終了間際の失点は痛恨。これを「オリンピックで同じことをやられないように」(徳永)するための貴重な教訓として、ロンドンでは好結果を残してきてほしいと思います。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!