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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
5度目となる世界の旅へ。10日間で3試合を消化するワールドカップアジア最終予選。今までの予選でも常に厳しい戦いを強いられてきた初戦で、オマーンを3-0と一蹴する最高の滑り出しを切った日本。「勝利に慢心することなく、新しい気持ちで臨んでもらう」(アルベルト・ザッケローニ監督)2戦目は、ヨルダンが相手。昨年のアジアカップでは1点ビハインドの終了間際に吉田麻也のゴールで辛くも追い付き、何とかドローに持ち込むなど大苦戦。難しい相手であることは間違いありません。
会場は前回に続いて埼玉スタジアム2002。サムライブルーを纏ったフルボルテージのサポーターが送る声援に包まれ、ブラジルへと繋がる扉を視界に据えたゲームは19時32分にキックオフを迎えました。
いきなり魅せたのは日本の"心臓"。5分、中盤でボールを持った遠藤保仁は、柔らかくも鋭いスルーパスをDFラインの裏へ。うまくフリーで抜け出した岡崎慎司の反転ボレーはGKアメル・シャフィにファインセーブで阻まれましたが、いきなりヨルダンの"裏"に刃先を突き付けます。
日本の狙いは「ワイドに開くようにして、スペースを創っていこう」(ザッケローニ監督)というもの。ただ、スタートポジションこそ岡崎が右で香川真司が左に位置するとはいえ、センターの本田圭佑はもちろん、時には1トップの前田遼一も含めて流動的に動くことで、ヨルダンを翻弄。また、ヨルダンも攻撃時にはSHが比較的高い位置取りをしていたために、うまくサイドでの基点を創り出します。
17分には香川のパスから本田が狙ったシュートを、再びアメル・シャフィがファインセーブ。ジワジワと攻め入る日本。すると18分、サイド攻略成功の指標とも言えそうな前半6本目のCK。本田が右から蹴り入れたボールに高い打点で合わせたのは、ここに来て完全にレギュラーポジションを確保した感のある前田。ザックジャパンのストライカーが貴重なゴールを肩でねじ込み、幸先良くホームチームがリードを奪いました。
止まらない勢い。追加点が生まれたのは3分後の21分。右サイドから流れてきたルーズボールを、遠藤は1ミリの躊躇もなくダイレクトスルーパス。「走っているだけで目の前にボールが来た」と振り返った本田も絶妙なコース取りから、GKの左へ冷静に転がす完璧なフィニッシュ。点差が広がりました。
さて、開始直後の攻撃的な姿勢も霧散し、シュートすら打てないヨルダンにさらなる追い打ち。左SHのアブダラー・ディーブが25分、27分と立て続けにイエローカードを受けて退場に。残り60分以上を10人で戦うことになります。
すると、気落ちする相手に絶望の鉄槌を振り下ろしたのも背番号4のエース。31分、遠藤の浮き球スルーパスを岡崎が溜めてシュート。これがDFに当たってこぼれると、「オカはシュートを打つと分かっていた」という本田が難なくプッシュ。スタジアムは完全にフィエスタと化しました。
しかし、サイドを有効に使いながら、2点目と3点目に繋がるとんでもないスルーパスで中央を撃ち抜いた遠藤の切れ味は空恐ろしくなるレベル。あれだけの技術と空間認知は、相手の力を差し引いても現在行われているEUROでもなかなか見られるモノではないと思います。
もはやセーフティとも取れるリードを奪った日本の貪欲さは、さらなるゴールを渇望。35分、本田が右へ振ると、上がってきたキャプテンの長谷部が粘って中へ。岡崎が頭ですらし、前田とGKが競り合ったこぼれを内田が優しくパス。このボールを叩いた香川のシュートは「相手のミスもあった」と本人こそ話したものの、しっかりとゴール左スミへ吸い込まれます。
「チームにはどんな時も0-0の気持ちでやって欲しいと言っている」という指揮官の注文通り、4つのゴールを奪い、1つのシュートも許さなかった45分間で、実質試合は決しました。それだけに残念だったのは吉田の負傷交替。しかも守備時のアクションではなく、ドリブルでの負傷だっただけになおさら。吉田はチーム離脱という高い代償を払うことになってしまいました。
迎えた後半は、スタートからヨルダンがラッシュ。48分、ハリル・バニアテヤの右FKをサイード・アルムルジャンが頭で合わせ、わずかに枠の左へ逸れるチームファーストシュートを放つと、49分にはオダイ・アルサイフィーも果敢にミドル。50分にも香川のミスパスから、サイード・アルムルジャンを経由してアハマド・ハイルが反転ミドルを枠内へ。「前半をああいう形で折り返すと、こういうことが起こり得る」とザッケローニ監督。後半は10人のヨルダンが明らかに勢いのある入り方で、日本を押し込みます。
スタジアムを包み始めた一抹の不安。そんな空気を打破したのはノッている18番。長友のパスを受けた前田はシザーズから縦へ抜け出すと、ハリル・バニアテヤがたまらずファウル。日本にPKが与えられます。最初は前田がボールを持っていましたが、ここは譲らなかった4番。自信満々に蹴ったPKは、GKの飛んだ逆サイドへ。「勝つことだけを考えていた」本田は、これで代表初のハットトリックを達成。嫌な流れを前田と本田が吹き飛ばし、さらに点差が広がりました。
56分、「中盤のバランスをあまり崩したくなかった」ザッケローニ監督は、ケガ明けの本田を下げて中村憲剛を同じポジションへ投入。その中村は60分に強烈な左足ミドルを枠に飛ばすなど、少し一発のパスを狙い過ぎたきらいはありましたが、ボールへ積極的に関与します。
さらに72分には、「今野(泰幸)が1枚カードをもらっているので、そこは予防しておこうと」(ザッケローニ監督)、その今野を伊野波雅彦とスイッチ。ベンチに控える清武弘嗣、ハーフナー・マイク、宮市亮ではなく、伊野波を3枚目のカードとして切る辺りに、指揮官のこの一戦へ懸ける想いが垣間見えます。
76分には中村の左CKを栗原がドンピシャのヘッドで叩き、バハ・アブデルラフマンがブロックしたこぼれを伊野波が詰め、ここもバハ・アブデルラフマンに防がれましたが、交替した3人で決定機を創ると、85分にも前田、岡崎、長谷部と繋いで、香川のシュートは右のポストへヒット。60874人が集った埼玉スタジアムも最後の声を振り絞ります。
そして、終了間際の89分に訪れた6度目の抱擁。左から中村がショートコーナー。長友佑都は中村とのパス交換を経て、ファーサイドへ右足クロス。待っていた栗原勇蔵のヘディングは、11試合目の出場にして記念すべき自身代表初ゴール。「今日の日本はブラジルと対戦していたら、おそらく勝っていたんじゃないでしょうか」と敵将のアドナン・ハマド監督が話し、「目指しているサッカーをこの2試合で見せてくれた。この高いリズムと高い精度でやってくれれば、どことやっても渡り合えると思う」とザッケローニ監督も評価した一戦は6-0という予想外のスコアで、日本が2連勝を飾る結果となりました。
とにかく日本は強かったですね。「個人的に調子がいいというよりも、チームとして調子がいい」と本田も話した通り、チーム全体でやることにブレがないなと。中でも大きいのは「前線にボールが収まる」と今野も評した前田が、1トップとしてかなり機能してきたことと、「右からの崩しは左よりも増えてきている」と岡崎が自ら触れたように、4点目のような右サイドを基点にした攻撃にも厚みが出てきたこと。この2つのポイントが活性化したことで、本田や香川といった"わかりやすい"抑えどころにもヨルダンは手が回らなくなった印象です。「自分たちのやっていることに手応えもある」とキャプテンの長谷部。真価を問われる次戦のアウェイ・オーストラリア戦にも、大いに期待の持てる大勝だったのではないでしょうか。 土屋
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