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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全国にその名を轟かせるタイガーとゼブラの雄。ところが、相次ぐ新興勢力の台頭を受け、いつしか長年続いていた2頭体制も崩壊。とりわけゼブラ軍団にとっては不遇とも言うべき、ここ数年の流れがありました。そんな雌伏の時を経て、インターハイファイナルでは6年ぶり、全国を懸けたファイナルとしても5年ぶりに実現した、前橋育英と前橋商業が激突する"群馬のクラシコ"(前橋商業・贄田浩明監督)。会場も当然群馬高校サッカー界の聖地・敷島が用意され、育英のキックオフでゲームはスタートしました。
オープニングシュートは前商。開始わずか36秒、吉田光(3年・K-Ⅱ SC)が中央から放ったミドルは大きくクロスバーを越えましたが、積極的なチャレンジを見せると、5分のチャンスも前商。左SBの小久保亮(3年・図南SC群馬)が中へ送り、受けた1トップの廣田真也(3年・図南SC群馬)は反転から育英GK小渕峻之介(3年・前橋FC)にキャッチされたものの枠内シュート。全体のラインをコンパクトに保ちつつ、前線からしっかりプレスを掛けることでリズムを掴んだ前商が、まずは押し気味にゲームを進めます。
さて、ボールもイマイチ回らず、少し差し込まれる立ち上がりとなった育英が、一瞬で鋭い刃先を相手の喉元へ突き付けたのは15分。左でボールを持った1トップ下の三橋秀平(3年・湘南リーヴレ・エスチーロ)が浮かせて右へ。DFの背後へ潜った外山凌(3年・東京ヴェルディJY)のフィニッシュは左ポスト直撃。先制とはいきませんでしたが、相手DF陣に怖さを印象付けます。
そしてこの辺りから、小川雄生(3年・前橋FC)と永田大(3年・島原第一中)で組んだドイスボランチを軸に、少しずつ人もボールも動き始めた育英がポゼッションで上回り始め、攻撃の時間が増加。「育英さんには例年よりスピードのある選手が前の方にいる」と贄田監督が話したように、サイドへ散らしながらも、最後は外山のスピードを生かすようなミドルパスを相手DFラインの背後へ送り込む形を多く創ります。
ただ、ここに立ちはだかったのは、キャプテンマークを巻いた根岸拓矢(3年・図南SC群馬)と中島優佑(3年・図南SC群馬)の前商CBコンビ。「グラウンドに弾ませるとスピード勝負になってしまうので、できるだけ落とさずに」という指揮官の指示を2人とも忠実に守り、「普段からトレーニングでよくやっている」(贄田監督)ヘディングで跳ね返すなど、"空中戦"の粘り強い対応でフィニッシュは取らせません。
逆に18分と24分にはここも吉田が果敢なミドル。40分には吉田が大外へ蹴ったFKを、中島優佑が得意の頭で折り返し、最後は育英DFのクリアに遭ったものの、手数の多さはむしろ前商。ほとんど互角と言っていい内容で、前半の40分間は終了しました。
ハーフタイムを挟み、29度と夏日に近い気候の中で迎えた後半も、先に決定機を掴んだのは前商。43分、廣田真也を起点に、中島僚太(2年・図南SC群馬)が左サイドをえぐって中へ。飛び込んだ吉田のシュートは小渕がヒザでブロックしましたが、いきなりのビッグチャンスにスタンドもどよめきます。
44分には永田の縦パスを田邉真之介(2年・三菱養和巣鴨)が足でフリックし、高橋拓史(2年)が左から折り返したシーンもシュートには繋がらなかった育英は、47分に1人目の交替を決断。高橋に替えて、菅谷将人(2年・鹿島アントラーズJY)を右SHへと投入し、廣瀬慧(2年・柏レイソルU-15)が左SHへスライドします。
それでも次の決定機も前商に。50分、木内琢也(3年・図南SC群馬)が右へ振り分けると、吉田は利き足と逆の右足でピンポイントクロス。待っていた狩野純一郎(3年・図南SC群馬)はフリーでヘディングを放つも、小渕が正面でキャッチ。先制とはいきません。
すると、59分には育英に訪れた絶好の得点機。小川、外山と繋いで、三橋はエリア内からシュート。ここは前商GK新井健太(3年・前橋エコー)がよく防ぎましたが、こぼれは再び三橋の目の前へ。押し込む三橋。育英先制かと誰もが思った瞬間、しかしゴールライン上でカバーに入っていた小林尚斗(3年・図南SC群馬)が決死のクリア。スーパーなプレーが飛び出し、スコアレスが続きます。
65分を過ぎると、廣瀬のドリブルを推進力にジワジワと育英が攻勢に。70分、その廣瀬が左サイドからカットインしながら枠に飛ばしたミドルは新井がファインセーブ。71分、相手ゴールキックを小川が跳ね返すと、DFとの競り合いを制した外山がループ。新井が懸命に手を伸ばして、わずかに手に当てたボールはクロスバーの数十センチ上を通過。「GKが当たってましたね」とは贄田監督。凌ぐ前商。
79分、菅谷将人の右CKは前商DFがクリア。廣瀬が拾い、永田の放ったシュートも前商DFが体でブロック。終盤は攻める育英に守る前商という構図の中、スコアボードの数字は動かず、80分間の終了を告げるホイッスル。全国への最終関門にさらなる20分間が加えられました。
83分は育英。三橋、外山と回り、菅谷将人のシュートは前商DFが体で防ぎ、こぼれを狙った外山のシュートは枠の左へ。87分には山田耕介監督が2枚目のカードとして菊地竜作(3年・FCエルマーノ那須)を送り込むと、その驚異的なスピードにザワつくスタンド。90分は前商。松苗由行(2年・図南SC群馬)の右CKに中島優佑が飛び込んだヘディングは枠の左へ。そして、延長後半はロングスローも含めてセットプレーでチャンスを創り合うも、お互いの守備陣が一歩も退かず、敷島を切り裂いたタイムアップのホイッスル。両雄譲らず。激闘の"クラシコ"は、PK戦で決着を付けることになりました。
3人目までは全員が成功して、迎えた4人目。先攻の育英はクロスバーに阻まれてしまいます。後攻の前商は小林が成功。このゲームで初めて、両者に生まれた"差"。追い詰められた育英5人目は柳沢。短い助走から氷の冷静さでGKの逆を突き、キャプテンの面目躍如。
祈る黄色と黒。祈る白と黒。前商5人目は中島優佑。相手の攻撃をことごとく防いできたCBが、この試合初めて足で狙ったシュートは右。GKは左。ゼブラの咆哮。「今年は部員がよくまとまってやっていたので、そういうのがPKって出るんですかね」と笑った贄田監督。群馬は前商が6年ぶりに覇権を奪取する結果となりました。
"群馬のクラシコ"にふさわしい熱戦だったと思います。「お互いに決定機もあったが、最終的にゴール前で体を張ったり、諦めずに戦った結果が0-0というスコア」という贄田監督の言葉にも頷ける、内容の濃いスコアレスドローでした。前述したように、なかなか結果の出ない時期が続いていた近年を振り返り、「プレッシャーはありましたよね」と正直な気持ちを吐露してくれた贄田監督。久々の晴れ舞台ですから、是非長野では群馬代表として暴れ回ってきて欲しいですね。 土屋
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