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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
破竹の6連勝。「練習場でやっていることを試合でもやってくれている」(横浜FC・山口素弘監督)選手たちの覚醒。前々節の熊本戦で星を五分に戻すと、好調徳島にも勝って一気に白星先行。横浜FCが変わっています。
今日対峙するのは、6位と昇格プレーオフ圏内に付けている大分。「ああいうゲームをしないようにと、みんなで話した」(石神直哉)という東京V戦の負けを経て、前節の松本戦は2-0と会心の勝利。どこが相手でも「全員で攻めて、全員で守る」(田坂和昭監督)スタイルを貫き、堂々と上位に付けているのは見事の一言。今節屈指の好カードは、少し肌寒さを感じる三ツ沢です。
2分に高地系治の左FKから、ぺ・スンジンが枠の左へ逸れるヘディングを放って動き出したゲームは、「ボールを動かすことは、しつこいくらいやっている」と山口監督も話す横浜に主導権。八角剛史と佐藤謙介のドイスボランチに、SHの武岡優斗と高地系治も有機的に絡み、受けて捌いてリズムを創出します。
9分には大分が三平和司の仕掛けでFKを獲得。直接狙ったシュートはカベに当たり、こぼれを拾った為田大貴のシュートも枠の右へ外れましたが、以降は横浜が完全に攻勢。10分には右サイドで杉山新が投げたスローインを受けて、カイオがエリア外からミドルを狙うと、ボールはわずかにゴール左へ。14分、佐藤謙介が粘って繋ぎ、高地のミドルはGKキャッチ。21分、高地の左FKから、八角が合わせたボレーは枠の右へ。
28分にも武岡が足元のボールをフリックすると、「2週間くらい前から、プレースピードがみんなと同じくらいになってきた」(山口監督)というカイオが抜け出しかけるも、大分GK清水圭介の勇気ある飛び出しでオフェンスファウルに。先制点とは行かないまでも、続けて水色のゴール裏を沸かせます。
一方、なかなか攻撃の時間を生み出せない大分。19分には為田、森島康仁と繋ぎ、西弘則が左へ展開すると、石神が鋭いクロス。トラップした為田は打ち切れずにオフェンスファウルを取られましたが、「今日はワイドだったので、クロスを上げるのが仕事」と話す石神のクロスは押され気味のチームにおいて、しっかりポイントになっていた印象です。
とはいえ、変わらず横浜がラッシュ。30分、阿部巧が左から正確なサイドチェンジ。武岡のクロスはDFに当たったものの、落下点を押さえた大久保哲哉の枠内ヘッドは清水が懸命にセーブ。33分、ぺ・スンジンの素晴らしいインターセプトから高地を経由して、大久保が強引に持ち込んだシュートはサイドネット外側。35分、大分3バックのセンターに入った阪田章裕がパスを迷って、まさかのボールロスト。諦めずに追っていたカイオがかっさらい、そのままフィニッシュも清水がファインセーブで阻止。
36分、佐藤のパスを高地はスルー。武岡のシュートはヒットせずに清水がキャッチ。45+1分、佐藤、武岡、杉山と細かく回し、八角のスルーパスを佐藤が一旦止めて左足を振り抜くも、ボールは枠の左へ。結局スコアは動きませんでしたが、「立ち上がりから気持ちが入り過ぎていたが、徐々に落ち着いていいゲーム運びができた」と指揮官も振り返った横浜ペースで最初の45分間は推移しました。
後半も先にチャンスを掴んだのはホームチーム。46分、大久保が左からシュート気味の速いクロスを送ると、武岡は当て切れずにボールは枠外へ。50分、阿部、高地、佐藤と回ったボールを武岡がシュートに変えるも枠の左へ。53分、ゴールまで約25mの距離、右サイドから高地が直接狙ったFKはバーの上へ。横浜が大分を攻め立てます。
さて、数少ない手数を「自分たちの狙いとするクロス」(田坂監督)から見い出すアウェイチーム。55分、森島を起点にキム・ジョンヒョンが左へ展開。石神のクロスはGKにキャッチされますが、58分に高松大樹が投入されると、わずかに変化した風向き。61分にはその高松が長いドリブルからフィニッシュまで。64分にも石神と西の連携からCKを獲得するなど、少しずつリズムが出てきます。
すると、65分に西が見せたドリブラーの矜持。右サイドから抜群の切れ味で中央に侵入すると、ラストパスを密集へ。ここで待っていたのは「何であそこにいたのか自分でもわからない」という三平。ただ、「シュートを打つ準備はできていた」右WBの一撃はゴール左スミを確実に捕獲します。まさにサイドからのワンチャンスをモノにした大分の先制劇。ゲームが動きました。
ビハインドを追い掛けることになった横浜。実は53分以降、ボールは支配するものの、シュートは1本もなし。失点してからもなかなかフィニッシュを取れません。山口監督が動いたのは74分。佐藤に替えて、野崎陽介を左SHへ送り込み、高地がボランチヘスライド。
76分には大久保がキープしたボールを、それまで攻撃は自重気味だった八角が追い越して中へ。ここはDFが何とかクリアしたものの、81分にはルーズボールに食らい付いて収めたカイオが枠内ミドル。勝利への執念をチーム全体から発します。82分には絶好の同点機。大久保に替わってピッチに入ったばかりの田原豊が、高地の左CKをファーストプレーでハードヒット。しかしボールはわずかに枠の左へ逸れ、同点とは行かず。
77分には傷んだ安川有と作田裕次、83分には土岐田洸平とイ・ドンミョンと、3バックの両サイドを入れ替えて、逃げ切りたい大分。焦りからか、少しずつ精度を欠いていく横浜のアタック。91分、八角が丁寧に左へ送り、阿部が入れた高速クロスは作田が決死のクリア。93分、高地が左から蹴ったCKは田原の頭を捉えるも、ボールは枠を越えて万事休す。「最後の最後で体を張って守った。内容的には満足している」と田坂監督も納得の表情を浮かべた大分が、2倍以上打たれたシュートを粘り強く跳ね返し、連勝を飾る結果となりました。
大分は「決してうまい、強いチームではない。そういう中で必要なのは走ること」と田坂監督が言うだけあって、最後までハードワークできるチームという印象を受けました。このことについて聞かれた石神も「走らないと出られないですから」と、正直に話してくれています。「勝負強さというよりも、みんなの気持ちが非常に強かったのでこういう結果に繋がったのかなと思う」とこちらも石神。この順位に付けているのも頷ける、よくまとまった好チームでした。
連勝が6で止まった横浜は「ありきたりな言葉なので使おうか迷ったが、単純に言えば『点を取れなくて、点を取られた』」という山口監督の言葉がすべて。それでも、「やっているサッカーは間違っていない」と武岡も話したように、チームとして"ボールを動かす"意図はかなり浸透してきている様子です。
また、山口監督になってからは2試合目のスタメンとなったカイオの献身的なプレーには少し驚かされました。これには指揮官も「チームのためにプレーできるようになった」と言及。こういう個人の意識改革も含めて、山口監督の"色"がいい方向に転がっているのは間違いなさそうです。
最後に山口監督と田坂監督は東海大学の先輩後輩。しかも4年・1年という間柄です。そのことについて聞かれた田坂監督は、「プレーヤーとしても大学の時から素晴らしい先輩でしたし、サッカー観に関しても見習うべきことが多くて、非常に尊敬する先輩の一人です」と話しながらも、「負けたくないなと心の中では思っていましたが、あえて試合前には言わなかったです」と本音をポロリ。ファーストラウンドは後輩に軍配が上がりましたが、次の対戦も非常に楽しみです。 土屋
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