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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全国の舞台へ立つために与えられた9つの枠を争い、先月から行われている日本クラブユースサッカー(U-18)選手権、通称"クラ選"の関東大会2次予選。1次予選を勝ち抜いた12チームとシードされていた12チームが、6チームずつの4グループに分かれて鎬を削ります。今日訪れた会場はおなじみの小平。鹿島アントラーズユース、FC東京U-18、大宮アルディージャユース、ヴァンフォーレ甲府U-18と、Jクラブユースが4チーム同居したグループAの中から、FC東京U-18対大宮ユースというカードをチョイスしました。
現在、プリンス関東1部は3連勝中。7試合で19得点と攻撃陣に当たりの出てきている東京。今大会も初戦のつくばFC戦では岩田拓也(3年・FC東京U-15むさし)が1人で8ゴールを叩き出すなど、17-1というスコアで大勝。昨日の甲府戦も「凄く苦しいゲーム」(本吉剛監督)を強いられながら、レギュラーポジションを掴んだ感のあるルーキー高橋宏季(1年・FC東京U-15むさし)の先制ゴールを含め、4ゴールを挙げて勝利するなど、得点力が目立っています。
一方の大宮は関東プリンス2部で現在4位。ロースコアのゲームとハイスコアのゲームがはっきりしている傾向があり、甲府との初戦を1-0で勝ち切ると、昨日のエスペランサ戦は9-1で大勝。当然このゲームも勝ち点3を取りに来るのは間違いない所。首位通過を狙う連勝チーム同士の対峙は、15時ジャストのキックオフでスタートしました。
開始4分、小平を切り裂いたオレンジの閃光。左サイドを大宮が繋いで崩すと、2トップの一角に入った小沢佑太(2年・大宮アルディージャJY)が正確なポストプレーで後方へ。ここに走り込んだ溝口晃大(3年・大宮アルディージャJY)のシュートは、ゴール左スミへ迷いなく飛び込みます。ゲームのファーストシュートがいきなりの先制点。まずは大宮がアドバンテージを握る展開となりました。
さて、早くも追い掛ける格好となった東京もすぐさま反撃。6分、二瓶翼(3年・FC東京U-15深川)が左から得意のカットイン。DFに当たったパスが岩田の目の前にこぼれるも、シュートはバーの上へ。7分には二瓶、川上翔平(2年・FC東京U-15深川)と繋ぎ、野沢英之(3年・FC東京U-15深川)が右へ展開。伊藤裕也(2年・FC東京U-15むさし)のシュートは、年代別代表も経験している大宮GK川田修平(3年・FC深谷)がキャッチ。11分にも二瓶が右へ流し、伊藤のアーリークロスに岩田がドンピシャで合わせたヘディングも枠の左へ。13分にも自らのパスを起点に川上が、15分にはFKから二瓶がシュートを放ちますが、いずれも枠を捉えられません。
逆に16分には東京が自陣深くでボールロスト。拾った小沢のシュートはゴール右へ逸れましたが、大宮にあわや追加点というシーンが訪れます。すると、これ以降はゲーム自体が膠着状態に。リードを奪い、ある程度守備に軸足を置いた大宮に対して、なかなか縦への仕掛けどころを見い出せない東京。「体を張ってキープすることは、シーズン最初からやってきたことだし、自分のストロング」と話す、1トップに入った岩田は前線で基点創りに奮闘しますが、後方からの効果的な支援を得られず、どうしても二瓶の独力突破ばかりが目立つ流れになってしまいます。
この辺りは川上も「自分たちのリズムになるまで、少し時間がかかった」と認めていました。ただ、その川上が「先制はされたけど、チーム的には大丈夫だという感じだった」と話す東京は、30分を過ぎると少しずつ伊藤、二瓶、高橋の3人がうまくポジションを入れ替えながら、大宮の敷くブロックの間でボールを受け始めます。この流動性が一層際立たせたのは二瓶のドリブル。「2人3人引き付けられるし、シュートもあって、相手も凄くイヤだと思う」と本吉監督も話す"個"の輝きを大宮は抑え切れず、ファウルでしか止められません。
すると、同点弾もやはりその10番。39分、二瓶は左から中へ切れ込み、野沢からのリターンを受けて右へ流れると、思い切り良く右足一閃。DFをかすめたボールはゴール左スミを確実に捕獲します。攻勢の時間帯をしっかりスコアに反映させた東京が追い付いて、最初の45分間は終了しました。
後半はスタートから両チームに交替が。東京は伊藤に替えて、ブーゾ・アモス(3年・FC東京U-15むさし)をそのまま右SHへ投入。大宮は前線の小島幹敏(1年・大宮アルディージャJY)を下げて、小野雅史(1年・大宮アルディージャJY)を右SHへ送り込み、右SHだった林崎洸(2年・大宮アルディージャJY)が左SHへ、左SHだった白川竜義(2年・大宮アルディージャJY)が前線へ、それぞれスライドします。
この交替策が奏功したのは大宮。56分には林崎を起点に、白川が溜めて落とすと、溝口が最高のスルーパス。上がってきた右SBの山崎浩介(2年・大宮アルディージャJY)が放ったシュートは、東京GK馬場拓郎(3年・Forza'02)のビッグセーブに阻まれましたが、今日一番の形を創出。59分にも林崎が左へ振り分け、SBの菊池翔(3年・大宮アルディージャJY)がサイドをえぐってクロス。東京DFが何とかクリアしたものの、林崎がチャンスに絡み出した大宮が押し込みます。
守備面ではセカンドを拾えず、攻撃面では「ボールを動かすテンポができるまで時間がかかった」(川上)東京は、60分に決断。「凄く最近頑張っていたので、思い切って使った」(本吉監督)右SBの田宮碧人(1年・FC東京U-15むさし)が、「相手が勢いを持って出てきた時に、ちょっと差し込まれる所があった」(同)と判断し、青木啓輔(2年・FC東京U-15むさし)との交替を選択します。
すると63分、その青木を起点にして東京が久々にアタック。野沢が左へ展開すると、吉田一彦(3年・FC東京U-15むさし)は右足でクロス。中で待っていたのは「普段から2人でクロスの練習はしてるので、アイツはオレを見てくれてるとわかっていた」という岩田。エースの大会11点目は、貴重な逆転ゴール。東京がスコアを引っ繰り返してみせました。
こうなると、ゲームの流れは青赤へ。65分に岩田が、67分に二瓶がミドルにチャレンジすると、69分には青木のパスを受けた二瓶が、高橋とのワンツーからフィニッシュまで。完全に主導権を奪い返します。大宮も72分には、スルーパスが冴え渡っていた溝口の一刺しで、1分前にピッチインした中山雄希(3年・FC KASUKABE)が裏を取ってシュートを放ちましたが、馬場がここもしっかりキャッチ。
逆に東京は74分、川上のFKを岩田が「ヘディングには自信を持ってるんで、しっかり中を見て」折り返すと、飛び込んだのはこれがファーストタッチだった、投入されたばかりの矢島輝一(2年・FC東京U-15むさし)。ゲームを決める3点目を挙げた矢島は、負傷で長期離脱を余儀なくされた斎藤涼汰(3年・FC東京U-15深川)へ向けたメッセージTシャツを、イエロー覚悟でユニフォームを捲ってアピールする一幕も。その後も「やっててスゲー楽しかったです」と岩田が笑ったように、スコアこそ動かなかったものの東京が優勢にゲームを進め、迎えたタイムアップ。難敵相手に逆転で勝ち点3をもぎ取った東京が、グループ突破を大きく引き寄せる結果となりました。
大宮で少し残念だったのは、10番を背負う大山啓輔(2年・大宮アルディージャJY)が欠場していたこと。U-17日本代表にも選ばれているエースが、東京の守備陣相手にどんなプレーをみせてくれるかは結構楽しみにしていたので、そこは見たかったなあと。それでも、林崎や溝口、白川など中盤には面白いボールの持ち方をする選手が多く、また見てみたいチームなのは間違いありません。
東京は「繋いだりボールを動かす意識は、春よりだいぶよくなってきている」と本吉監督も話したように、システムも中盤の枚数が増えたことで、ボールは格段に回るようになったと思います。そして何より「どういう戦い方をしていくかが明確に見えてきたので、やっていて楽しいです」という川上の言葉に象徴されるように、特に後半は1人1人が楽しそうにプレーしていたのが印象的でした。「プレミアは出ていないので、日本一を狙えるのはこれとJユースカップしかない。ファイナルまで行ってタイトルを獲りたい」と本吉監督。今日のゲームは、東京がこの夏の主役に躍り出る可能性を秘めていることを、十分に感じさせる90分間だったのではないでしょうか。 土屋
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