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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
劇的勝利で最高のスタートを切った開幕戦から一転、ここ4試合は2分け2敗と勝ちがなく、14位にまで順位を落とした草津。一方、開幕3試合で岸野靖之監督の解任を決断。後任にクラブのJ1時代を知る山口素弘監督を据え、臨んだ前節も甲府の前にホームで完敗。5試合未勝利で最下位と厳しい状況が続く横浜FC。お互いに続く負の連鎖を何とか断ち切りたい一戦は正田醤油スタジアム群馬です。
ちなみに山口監督は、今や全国屈指の強豪となった前橋育英が初めて高校選手権で全国へ出場した時のキャプテン。いわば地元凱旋という側面もあり、この地で監督初勝利を上げたい気持ちも強いはず。そういう意味でも注目のカードです。
さて、「この時期にこんなに吹いたっけ?」と群馬出身の山口監督も驚いたように、両チームを悩ませたのはキックオフを迎える前から吹き荒れていた強風。草津在籍9年目のGK北一真も「こんな強い風の中での試合は2回目くらい」と話すような状況の中、お互いにまずはリスクを回避するようなスタンスでゲームに入ります。
先にシュートを放ったのは草津。8分、林勇介の右CKから、最後は保崎淳がミドルを放つもDFがブロック。12分も草津。左から林が入れたFKをリンコンが頭で折り返し、櫻田和樹が狙ったボレーは枠内もGKがキャッチ。14分、今度は松下裕樹の右FKをまたもリンコンが折り返すと、飛び込んだのはこれがJリーグデビュー戦となる小柳達司。ボールはわずかに枠の左へ外れましたが、風の吹く中ではチャンスの定石とも言うべきセットプレーから、草津がシュートシーンを創出します。
一方、序盤こそ比較的長いボールを使っていた風上の横浜も、15分過ぎからはある程度きっちりとボールを繋ぎ始め、ギアを上げるポイントを探ります。27分には阿部巧の鋭い縦パスを、佐藤謙介が絶妙なタイミングのダイレクトパスで内田智也へ。フリーの内田が少しもたつき、戻った草津DFのチェックでシュートには到りませんでしたが、29分にも内田が中央をスルリと抜け出し、左
に流れながら今度はシュートまで。先制とはいかなかったものの、草津ゴールを脅かします。
この日、草津のスタメンで目を引いたのは、ディフェンスラインの変更。「非常にルーズな失点が多かったので、自覚を促す意味での交替」と副島博志監督が話したように、前節まで左SBを務めていた保崎が右SBへ回り、CBの小柳と有薗真吾、左SBの永田拓也はいずれも今シーズン初出場。その上に強い風が吹くという集中が難しい状況下でしたが、特に22歳の小柳は「幼稚園の頃から見ていた選手」という23歳年上のカズを相手にして、堂々としたプレーを披露。守備面の安定はもちろんのこと、もともとSBでプレーしていたこともあり、鋭いパスカットから「自分の持ち味を出そうと」果敢なオーバーラップにもチャレンジするなど、スタメン起用に応えてみせます。
結局、38分には杉山新、43分には内田に打たれたミドルも、前者は枠外に逸れ、後者は北がしっかりキャッチ。「エンドはあえて風下を取った」(松下)草津にとってみれば、プラン通りのスコアレスでハーフタイムに入りました。
迎えた後半は一転して草津が攻勢に。46分には保崎のスローインをキム・ソンヨンが落とし、後藤涼のボレーは枠の右へ。50分、林のクサビをリンコンが捌き、櫻田が狙ったシュートは横浜GK関憲太郎がキャッチ。53分、松下がクイックで出したFKから、林が1人かわして放ったミドルは枠の左へ。風上を流れに生かしたホームチームが勢いを出していきます。
この時間帯に生きていたのはリンコンのポストワーク。57分にもリンコンの深いキープから、後藤がフィニッシュまで持ち込むなど、高い技術を誇るブラジル人FWへボールを付ける回数が増えたことで、前での基点ができ、攻勢を後押しした印象です。副島監督もさらなるスパイスを決断。62分に林を下げてヘベルチを投入。さらに前へのパワーを強めにかかりました。
すると、2分後に動いたスコア。64分、いつも以上にシュート意識の高かった櫻田のミドルから獲得したCK。ヘベルチのキックは跳ね返されましたが、こぼれたボールを右サイドから保崎が中へ放り込むと、横浜のラインは揃わず、飛び出した関の鼻先でキムがヘディング。ボールは無人のゴールへ転がり込み、草津が1点のアドバンテージを握りました。
今日もリードを追い掛ける展開となった横浜。56分に小野瀬康介と武岡優斗を入れ替えていた山口監督は、「押し込まれていたので、前でポイントを創りたかった」と、67分にカズを下げて永井雄一郎を投入。同点への策を講じます。70分には高地系治の右FKから、その永井がボレーを放つと、ボールは右のポストを直撃。これが後半初めてのシュートだった横浜へわずかに傾いた流れ。
そして75分、横浜は左サイドのスローインから大久保哲哉を経由して、佐藤がマイナスにクロス。CBの2枚が「サイドを崩されてボールに寄ってしまった」(小柳)ことで中央のマークがルーズに。北は「どフリーだったので行くしかないなと」飛び出しましたが、「風で思ったより戻ってしまった」ボールに触れず、永井が難なくヘディングでゴールを陥れます。「東京V戦もスローインからやられた」と松下が話せば、副島監督も「スローインからの失点はチームで抱えている課題」と渋い顔。対照的に「まさか永井がヘディングとは思わなかった」と山口監督は冗談混じりに言及。ゲームは振り出しに戻りました。
終盤はどちらも交替カードの切り合いに。草津は81分に得点時の接触で負傷したキムを遠藤敬佑と、85分に永田と杉本裕之をそれぞれスイッチ。横浜は87分に内田と野崎陽介を入れ替え、最後の勝負に。
89分は横浜に好機。永井が左へ振ると、後半は再三オーバーラップを繰り返していた阿部が粘ってクロス。大久保が頭で合わせるも、ボールは枠の左へ。92分は草津に決定機。リンコンのパスを受けたヘベルチは、ここしかないというスペースにラストパス。右から左へ持ち場を変えていた保崎のシュートは、しかし群馬出身の関が弾き返します。9.6度の寒風吹きすさぶスタジアムを切り裂いた、タイムアップのホイッスル。両者とも勝ち点1を積み上げたものの、痛み分けに近いドローという結果になりました。
横浜は「日々のトレーニングで成長しなくてはいけないチーム」と山口監督が話したように、トレーニングの内容を受け、前節からスタメンを5人も入れ替えました。その中で勝利は得られなかったものの、失点にも「前を向いて戦った」(山口監督)ことで追い付いて勝ち点1を奪取したのは今後への好材料。これから"山口色"がどう出ていくのか、大いに注目したいと思います。
草津は何人もの選手が言及していたように、前節と同じような「残念な失点」(副島監督)を許してしまったのが悔やまれる所。それ以外はほとんど決定的なピンチもなかっただけに、「勝ち点2を失ったゲームではある」という指揮官の言葉にも頷けます。「同じ失点を繰り返すのは、練習中から改善していかないといけない」と北。次節はスローインからの守備も含めた修正力が問われるゲームになりそうです。 土屋
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