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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
諸条件はあれど勝てば文句なし。勝ち点3だけを目指し、奪い獲るためだけにある最後の90分間。シリアで喫した屈辱の敗北も、すべてはロンドンへと続く道の過程。聖地国立でバーレーンを迎え撃つラストマッチは、五輪アジア最終予選です。
関塚隆監督が信頼して送り出すスタメンは、GKが権田修一。最終ラインは右から酒井宏樹、鈴木大輔、濱田水輝、比嘉祐介。ドイスボランチは山口蛍と扇原貴宏が組み、その前には右から清武弘嗣、東慶悟、原口元気を配置。最前線には「所属していたチームで2トップの経験があることと、すり抜ける力とコンタクトする強さを買って」(関塚隆監督)、大津祐樹を起用。日の丸がはためき、チャントが熱気と共に舞い上がる国立。20時ちょうど、ラストダンスが幕を開けました。
いきなりのチャンスは日本。2分、扇原のクサビが入り、1トップの大津が落としたボールを東がミドル。わずかにDFが触り、枠の左へ外れたものの、ロンドンへの高い意欲を見せ付けます。以降も、ポゼッションする時間の長い日本はしっかりボールを回しながら、扇原の大きな展開も交えつつ主導権は握りましたが、「中盤で少しミスが出ていたのと、アタッキングサードで攻め急いでいた」と関塚監督が振り返り、バーレーンのピーター・ジョン・テーラー監督も「非常にペースが早かった」と話したように、ゲームはかなりハイペースになっていきます。
そんな中、日本はなかなかチャンスを創れず、逆に12分にはバーレーンに好機到来。アリのCKから、最後はハルバンがシュートを放ち、酒井が体でブロックしたものの、日本は危ないシーンを創られます。19分には清武のクロスを原口が頭で合わせ、ようやく綺麗な形からフィニッシュへ持ち込むと、20分にも酒井が右サイドを切り裂いて中へ。大津のトラップが大きくなり、シュートまでは至りませんでしたが、続けてサイドをえぐったチャンス創出に、一段階ボルテージの上がる国立。
とはいえ、これが続かないのがもどかしい所。33分には扇原のフィード。比嘉が左サイドから右足でクロスを上げると、打点の高い大津のヘディングはクロスバーを越えましたが、これが15分ぶりのシュート。一方、「5-0で勝たなければいけない」(テーラー監督)状況下のバーレーンも35分にラッシュ。シュバルの右CKからハルバンがシュート。比嘉がブロックしたボールをアリが狙ったミドルは枠を大きく外れましたが、「前半はこのリズムじゃ失点するんじゃないかと思った」と指揮官も正直に告白した流れの中、何とか日本も失点は免れます。
44分には原口のパスから東が左サイドを抜け出し、マイナスに折り返したボールを比嘉が合わせたシュートはヒットせず、GKが難なくキャッチ。「少し気負いがあったのかなと思う」と関塚監督も触れた前半は、スコアレスで45分間を消費しました。
後半も展開は膠着状態でスタート。52分にはバーレーンにチャンスの芽。アブドカヘリのパスからアルフセイニが抜け出すも、権田の飛び出しに遭ってシュートは打てず。日本からすれば危ないシーンだったのは間違いありません。
ただ、「90分間で勝てば良かったし、最悪引き分けでも良かったので、あまり慌ててもしょうがないとみんなで言っていた」と東。ハーフタイムで交替策を施さなかった関塚監督も「誰かが悪いというわけではなかったので、交替はもう少し見てからでも遅くはないのかなと。もう少し連携が掴めてくればという所はあった」と言及しています。
そして、苦しいアジアの戦いをくぐり抜け、逞しさを確実に増していた若武者たちの咆哮は55分。濱田が左へ振ったパスを比嘉は縦へ。原口がドリブルで運んでマイナスへ折り返すと、ここへ走り込んでいたのは扇原。再三低い位置からのロングパスや散らしでリズムを創っていたボランチの、機を見た攻め上がりから利き足と逆の右足で放ったシュートがニアサイドをぶち抜きます。「点を取ってくれるんだろうなっていうのはハーフタイムの雰囲気で感じた」という守護神・権田の予感は現実に。約束の地に架かるロンドン橋のたもとへ足を踏み入れる先制弾。日本がリードを奪いました。
攻め立てる日本。59分、原口のパスは左へ流れた東の足元へ。「大津くんが前を狙ってくれて後ろのスペースが空いた。(清武)弘嗣くんがフリーになっているのは見えた」という10番の折り返しは、狙い通りにニアで潰れた大津の後ろを抜けて、ファーでフリーの清武へ。冷静に、力強く叩いたボールはゴール左スミへ一直線。国立沸騰。ロンドン橋のたもとは遥か後方へ。「1トップは裏に抜けることやポストなど、やらなければいけない仕事が多かった」と語る大津の献身も含め、この大事な試合を託されたアタッカー4人が全員絡んでの追加点。大きな大きな2点目は日本に入りました。
1つ見逃せないのは、この2ゴールがいずれも左サイドからだったこと。実は1点目が入る2分前に、バーレーンは右SBをショワイテルからアルムラへ交替させていました。その替わり端を突いた1点目と、4分後の2点目。特に1点目は「前半は原口が中に入っていて、比嘉が外で受けてそのままダイレクトでクロスというのが多かった」(関塚監督)という反省を見事に生かして奪ったゴールという付加価値も。ゲームの中での対応力や修正力の向上を表わす2ゴールだったと思います。
こうなると「自分たちを信じるという心が足りなかった」とテーラー監督も評したバーレーンの気持ちはプツリ。64分には山口の絶妙なフィードを受け、抜け出した清武のシュートは左ポストを直撃。68分にも右から東が入れたFKを濱田が頭で合わせ、バーレーンGKルトファラにファインセーブで阻まれますが、「人をかけることでリズムが生まれてきた」(関塚監督)日本が続けて決定的なチャンスを生み出します。
また、守備陣も「みんなで守る意識があり、失点しないことに対して考えてやってくれるチームだと改めて思った」と権田が話すなど、バーレーンに隙を与えず。76分には永井謙佑、81分には齋藤学、90分には山村和也と、この代表にとって立ち上げとなったアジア大会からチームを支えてきた2人と、マレーシア戦の活躍も記憶に新しい、遅れてきた実力者が相次いでピッチに送り込まれます。
平日のナイトゲームにもかかわらず、36233人が集結した国立もカウントダウン。そして93分4秒、鳴り響いたのは日本を祝福するビッグベンの鐘の音にも似た、試合終了を告げるホイッスル。「純粋に競争しながらここまでよくやってくれた」と関塚監督も笑顔を見せた日本が、5大会連続となる五輪切符を手に入れる結果となりました。
今回のチームは、U-20ワールドカップでアジアを勝ち抜けなかった2世代の集合体。「世界大会に出られなかった悔しさがあって、何とかここで五輪に出たいと」(関塚監督)集まったメンバーでこじ開けた世界への扉。権田も「アジアを抜けられなかったって言われ続けるのも嫌だった。これでしっかり抜けて、前向きに世界に向かってしっかり準備していきたい」と笑顔を見せました。
2世代に渡ってアジアでの戦いで苦汁を嘗めてきた選手たちが、集大成とも言うべき五輪という舞台でようやく世界への挑戦状を手にしたことに、心から拍手を贈りたいと思います。 土屋
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