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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
新たなる旅の幕開け。2012シーズンのJリーグがいよいよスタートします。今シーズンはJ1に1週間先駆けてJ2が開幕。今日は全国各地の11会場にJリーグのある日常が帰ってきました。その中から訪れたのは山梨中銀スタジアム。甲府と栃木。明確にJ1昇格を目標に掲げるチーム同士の激突です。
無念の降格。4シーズンぶりに挑んだJ1の舞台から、1年で再びJ2での戦いを強いられることになった甲府。新しい指揮官に城福浩監督を招聘し、「1日1日の成長が今シーズンのキーワード」(山本英臣)という、常に"右肩上がり"のチーム構築に着手しています。
一方、昨シーズンは一時首位に立つなど、昇格争いの中に身を置くシーズンを過ごした栃木。とはいえ、スタメンを見てみると最終ラインの4人はいずれも新加入の選手。スタイルは変わらないものの、メンバー構成も含めて、ある意味新しいチームとして再び昇格へチャレンジする1年になりそうです。
さて、「J1へ行こう」というチャントと手拍子で甲府イレブンをピッチへ送り出した小瀬が、いきなり凍り付いたのは5分。鈴木修人が小さく出したFKを、高木和正は浮かせて右サイドへ。ここに「昨日数回やった練習通りの形」という柳川雅樹が走り込んで折り返すと、至近距離からサビアがシュート。「データにはなかったが、栃木は守る側としては難しいセットプレーをしてくる」と話した荻晃太が素晴らしい反応で弾き出しましたが、栃木がいきなり鋭い刃を甲府の喉元へ突き付けます。
次のチャンスも栃木。8分、左サイドを荒堀謙次が切り裂き中へ。荻のフィスティングを拾った臼井幸平のシュートを、河原和寿がオーバーヘッドで狙うと、荻は何とかゴールライン上でキャッチしたものの、サイドを崩し切った形から、フィニッシュまでしっかり繋げました。
12分にはようやく甲府にもチャンス。右サイドから保坂一成が上げたアーリークロスを、ファーで収めた高崎寛之が左足の枠内シュート。GKにキャッチされましたが、ようやく形らしい形からフィニッシュを創ります。とはいえ、サビアと廣瀬浩二の動き出しをスイッチに、シンプルな手数で攻撃を仕掛ける栃木に勢い。12分に山本が頭でイージーなパスミスをしたシーンに象徴されるように、甲府は細かいミスが多く、テンポアップできません。
そんな中、19分には堀米勇輝が左へ送ると、石原克哉とのワンツーから柏好文がクロス。ダヴィのオフェンスファウルになりましたが、1ついい形を創出すると、22分にも堀米が右サイドからカットインシュート。少しずつ甲府も落ち着きを取り戻し、展開もイーブンに近い形に。
すると25分に動いたスコア。保坂のヘディングに反応した高崎がDFと入れ替わり独走。シュートは栃木GK武田博行が懸命にセーブしたものの、「こぼれを狙っていた」ダヴィがDFともつれながらも、執念でゴールネットを揺らします。「去年は申し訳ない気持ちでいっぱいだった」と復活を期すエースが、開幕戦でいきなり甲府加入後初ゴールを記録。しっかり流れを掴んだ甲府がアドバンテージを奪いました。
さて、ビハインドを負った栃木は「20分過ぎから相手陣内の深い所で基点ができなかった」と廣瀬も振り返ったように、なかなか前でポイントができず、チャンスを創れません。逆に甲府はイケイケに。34分、山本のFKがこぼれると素早い反応からダヴィが放ったシュートは、辛うじて武田がファインセーブ。37分、堀米の右FKを高崎がバックヘッドで狙うと、ボールは左ポスト直撃。
38分、左サイドを完全に崩し、柏の上げたクロスをダヴィが合わせたヘディングは武田がキャッチ。40分、ダヴィの素晴らしいサイドチェンジから、高崎のシュートは武田がセーブ。44分、カウンターから石原が左へ送り、柏のシュートはDFがブロックしましたが、こぼれをダイレクトで叩いた堀米のボレーはクロスバー直撃。10169人が集結したスタジアムの熱気にも後押しされ、甲府ががっちりと主導権を握った形で前半は終了しました。
ハーフタイムを挟んでも、流れは大きく変わらず甲府ペース。58分にはダヴィが、59分には高崎がそれぞれ惜しいシュートを
放つなど、追加点を予感させるような時間が続きます。ところが、次にゴールを記録したのは一瞬の隙を突いた栃木。
60分、臼井の縦パスは「足元に来ると思ったボールが裏に出たけど、体がスムーズに動いた」という廣瀬へ。完全に抜け出した廣瀬のシュートは何とか荻も触りましたが、「そのまま入れ」というシューターの願い通り、ボールはサイドネットへ吸い込まれます。劣勢の中、ワンチャンスを確実に生かした栃木。スコアは振り出しに戻されました。
失点前から用意していた片桐淳至を、堀米に替えて投入した甲府にすぐさま訪れた決定機。63分、柏が左へ振ると、ダヴィを経由して片桐が最高のベルベットクロス。フリーで飛んだ高崎のヘディングは、しかしクロスバーの上へ。頭を抱えた城福監督。追い付けません。
すると、訪れたのは「追い付いて余裕が出て、もう1回左右に揺さ振ってやろうというのができてきた」(廣瀬)栃木の攻勢。64分、臼井のサイドチェンジから鈴木がスルーパス。抜け出した荒堀のシュートは荻がセーブ。66分、鈴木の左CKに柳川が頭で合わせると、荻が何とかキャッチ。69分、高木が右へ展開すると臼井はアーリークロス。DFのクリアがこぼれた所に反応した河原の強烈なボレーは荻の正面。小瀬の一角を占める黄色いサポーターもにわかに活気付いていきます。
たまらず城福監督も70分に2枚目の交替を決断。伊東輝悦を下げて井澤惇を投入。中盤の構成力と機動性を高めにかかると、これがいきなり奏功した71分の決定機。片桐のクサビを高崎が絶妙のポストプレーで左へ。柏の折り返しはフリーで走り込んだ井澤の下へ。しかし、「インサイドで狙った」シュートはクロスバーの上を通過。絶好のチャンスをモノにできません。
強まる雨足と共に嫌な空気が支配し始めた小瀬。そんな状況を打破したのは、決定機を逸して「ヤベーと思っていた」新10番でした。73分、左サイドで石原、柏と繋いだボール。受けた井澤はドリブルを開始。クロスのタイミングでもう1つ自ら運ぶと、マーカーは振り切られます。ほとんどゴールライン上から中へ折り返すと、待っていたのはダヴィ。右足に"当てた"シュートがもたらしたのは、指揮官の咆哮と小瀬の沸騰。降格の悔しさを味わった4人のコンビネーションで呼び込んだ勝ち越し弾。再びゲームは甲府の1点リードとなりました。
またも追い掛ける格好となった栃木。松田監督は76分にサビアと久木野聡、78分に廣瀬と棗佑喜を入れ替え、前線を強化。さらに83分には石原のスローインが遅延行為とみなされ、この日2枚目のイエローカードを受けて退場に。クライマックスに向けて、さらなる要素が付け加えられます。
高崎に替えて、ルーキーの佐々木翔を送り込み、4-4-1で凌ぎ切りたい甲府。臼井を下げて大和田真史を投入して、「2-4-4みたいなイメージで」(松田監督)同点に追い付きたい栃木。降りしきる雨の中、最後の攻防に軍配が上がったのは、「10人になっても勝利に対する姿勢を見せてくれた」と城福監督も手応えを口にした甲府。アディショナルタイムの4分も、ダヴィも含めた10人全員の執念で潰し切り、聞いた歓喜のホイッスル。「同点に追い付かれて、突き放せたのは成長かなと思う」とキャプテンの山本も話した甲府が、Jリーグ加盟から14シーズン目にして初となる開幕戦勝利を収める結果となりました。
ゲームのポイントは5分のセットプレーだったと思います。「前半のリスタートでうまく崩された決定的なシーンを防げたのは大きかった」と城福監督が話せば、山本も「立ち上がりに荻が止めたが、ああいうシーンで勝負が決まる可能性もある」と言及。また、あのシーンで大外から折り返した柳川は「アレが決まっていれば有利になっていたのは確か。入れたかった所」と振り返っています。開幕戦、そして新監督の初陣、J2でのリスタートと色々な要素が重なる中、実際に甲府は20分前後までなかなかリズムが出てこなかったことを考えても、「ある程度のプレーができた自負はある」と語った荻のビッグセーブが、ホームチームに勝ち点3をもたらす大きな要因だったように感じました。 土屋
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