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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
昨年のJ1王者とJ2王者。一昨年と昨年のJ2王者。クラブ初となるアジアへの挑戦。いくつかの共通項を持つ両チームのさらなる共通項は、お互いにこの舞台へ進出して国立のピッチを踏みしめるのが初めてだということ。おそらくゼロックス史上最もフレッシュな対戦カードは、柏とFC東京です。
7冠獲得を明確な目標として捉えている柏からすれば、ちばぎんカップに続く2冠目を確実に獲りに行くタイトルマッチ。また東京にとっても新しい指揮官の下で初めて臨む公式戦だけあって、チームの変化を内容と結果に反映させたい一戦。ネルシーニョ、ポポヴィッチと監督を先頭にピッチへ入場してきた両チームの選手たち。大谷秀和と梶山陽平、両キャプテンによる東日本大震災の復興支援宣言、そして国歌斉唱を経て、13時36分に西村雄一主審が激闘の幕を開けるホイッスルを鳴らし、注目のゲームはキックオフされました。
先に出足で大きく上回ったのは「立ち上がりは勢いに押し込まれるシーンが目立った」とネルシーニョ監督が話したように東京。特に柏の左SB橋本和も「石川さんの特徴を生かしてきてるなというのはあった」と振り返るなど、石川直宏を積極的に活用することで、右サイドの主導権を奪取。6分にはFK、7分と12分にはCKをいずれも右サイドで獲得するなど、まずは仕掛けるアクションで先手を取ってみせます。
対する柏は「ボールを奪ってもすぐに奪われたり、自分たちのミスから連続攻撃を受けた」とネルシーニョ監督が話した通り、ちばぎん同様に全体的なボールアプローチが遅く、加えて勢いのあった東京のハイプレスをまともに受ける格好に。守備から攻撃に切り替わってもハーフウェーライン辺りでボールを奪われることが多く、前線までボールが入りません。
攻める東京。ただ、実際にはポゼッションの高さと裏腹に、17分の大きく枠を外れた長谷川アーリアジャスールのシュートがファーストシュート。18分には梶山、谷澤達也と繋いで、高橋秀人が強烈な枠内ミドルを放ちますが、19分に石川が切り返して打ったシュートも、25分に石川のダイレクトパスから椋原健太のクロスが中と合わなかったシーンも含めて、決定機はなかなか創れません。
これに対して、「最初押し込まれるのは想定内。結構ボールは回されてたけど、最後の所で東京は誰がシュートを決めるのかという感じはあった」と話したのは柏のCB近藤直也。確かにフィニッシュワークでは、"ここで点を取る"というようなポイントがなかなか見えて来ない印象は受けました。
すると、逆に柏が一瞬で牙を剥いたのは26分。近藤のクリアをピッチ中央で受けたジョルジ・ワグネルは、少しドリブルで運ぶとゴールまで30m近くある距離から左足一閃。これが完璧な軌道で右スミに突き刺さるスーペルゴラッソ。「打てる所は打っていこうとチームで話している」と涼しい顔は本人ですが、「アレが入っちゃうんだと思いました」と後ろから見ていた近藤も素直な心情を告白。ファーストシュートで柏が先制してしまいました。
形勢一転。「慌てずに我慢する時間は我慢しようと割り切れる。そうすれば自分たちのペースがやってくるのは去年やってきたベース」と橋本。「ウチはボールが少し落ち着いて、相手の勢いも落ち着いた」(近藤)ことで、途端にここからは柏のペースに。そして42分、レアンドロの右FKにワグネルが合わせたヘディングは右ポスト直撃。クリアボールに反応した北嶋秀朗を森重が突き飛ばす形になると、西村主審はPKを指示します。キッカーのレアンドロは冷静に沈め、結果的に「安定した形で前半を折り返すことができた」(ネルシーニョ監督)柏が2点のアドバンテージを握って、ハーフタイムへ入りました。
後半に入ると、48分のチャンスは柏。酒井宏樹のクサビを北嶋が完璧に落とすと、レアンドロはドリブルで運んで右へ。田中順也は中へ切り返し、シュートは打てなかったものの、"らしい"形を創出します。50分は東京。スローインの流れから、ルーカス、梶山、長谷川とパスが回り、谷澤がエリア内へ侵入。菅野との接触に見えたプレーで谷澤は転倒しますが、判定はシミュレーションで谷澤にイエローカード。点差を詰められません。
58分にポポヴィッチ監督は決断。1枚目の交替カードは、前半の勢いを牽引していたパワーがチームの流れと共に減退した石川に替えて渡邉千真。渡邉が最前線に入り、ルーカスが1枚落ちて、長谷川は右へスライドします。この布陣変更後に生まれた追撃弾は65分。渡邉が左へ展開すると、上がってきたのは高橋。左足で入れた低いクロスに長谷川が走り込み、ダイレクトでシュート。ここは菅野が超人的な反応でセーブしましたが、ルーズボールに増嶋と橋本が重なってしまいクリアしきれず、再び長谷川が頭でプッシュ。「キャンプから強い気持ちでやってきた」という新加入MFの貴重なゴールで点差は1点に詰まりました。
69分、ネルシーニョ監督が揮った交替策は2枚替え。田中と北嶋の2トップを下げて、リカルド・ロボと澤昌克を投入。73分、ポポヴィッチ監督も谷澤に替えて、羽生直剛をピッチへ。ベンチも勝利へ向けてフル稼働。75分は柏。レアンドロがドリブルで前へ突き進みながら右へスルーパス。ロボはカットインしながら枠内シュートを飛ばし、早々に塩田仁史を牽制します。
一方、77分には東京にこのゲーム最大の決定機。高橋を起点に右サイドから椋原が極上のクロスを中へ。DFを外してフリーになった羽生のヘディングは、しかし枠の外側を通過してしまいます。
「アレは決めなきゃいけないシュート」と感じていた羽生に、すぐさまリベンジのチャンス。78分、右サイドでルーカスが繋ぎ、渡邉の折り返しを中で受けると右へ持ち出しながらシュート。ところが今度は菅野が体で渾身のビッグセーブ。1点差は変わりません。
結果として、この2回の決定機が東京にとってはラストチャンスでした。85分には高橋を下げて、河野広貴が最後のカードとして投入されましたが、持ち味を発揮するにはあまりにも時間が短く、近藤は「向こうが(平山)相太とか入れてきて、ロングボールをどんどん入れてきた方がウチとしては嫌だったけど、サッカーを変えずに繋ぎながら攻めてきてくれたので、ウチらとしては対応しやすかった」と終盤を振り返っています。
柏も89分に森重からボールを奪ったロボが自ら放ったシュートは塩田のファインセーブに阻まれ、92分にレアンドロが左足で狙ったシュートはクロスバーに跳ね返されましたが、そのままアディショナルタイムの3分間も危なげなく使い切ると、西村主審のホイッスルは2冠獲得を意味する勝利の音色。柏が初挑戦のゼロックスを制し、水曜日のACL、そして来週の開幕に向けて弾みを付ける結果となりました。
東京は「皆さんが満足いく試合を見せることができたと思っている」と話したポポヴィッチ監督流の繋ぐスタイルが、ある程度浸透していることは示せたゲームだったと思います。ただ、先制されてからの前半は少しナイーブさも顔を覗かせた印象。とんでもないミドルとPKによる失点ではありましたが、ああいう時間帯でのゲーム運びが上位を目指す上では課題になってきそうです。
勝った柏はちばぎんに続き、2試合目の対外試合でしたが「どう見ても千葉でやった時より、今日の方が良かった」と橋本も振り返ったように、流れを打ち壊す力と掴む力の両面を披露してくれたと思います。「先制点はラッキーな面もあったが、それで流れを引き寄せられるのは成長した部分かな」と近藤。強いチームの勝ち方で連勝を飾り、タイでのACLを挟んで、横浜FMとの開幕戦を迎えることになります。 土屋
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