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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2012年02月26日

第18回ちばぎんカップ 千葉×柏@フクアリ

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chibagin.jpg改めて言うまでもなく、"千葉"の盟主を懸けて争われる決戦という事実に加えて、もはや世界三大カップとしての権威すら獲得しつつある、伝統と信頼の"ちばぎんカップ"。18回目となるタイトルマッチの会場は、ジェフユナイテッド千葉のホーム・フクダ電子アリーナです。
木山隆之監督を新たに迎え、4年ぶりのJ1復帰はもはや悲願とも言えそうな千葉。スタメンはGKが岡本昌弘。最終ラインは右から坂本將貴、竹内彬、12年ぶりの古巣復帰となる山口智、新加入の武田英二郎。中盤は佐藤勇人と柏から期限付き移籍で加入した兵働昭弘がボランチを組み、右に伊藤大介、左に深井正樹が構えるボックス。最前線に新加入の藤田祥史が入り、1.2列目辺りに米倉恒貴という4-4-2気味でゲームに入ります。
一方、今日がこのプレシーズンでは初めての対外試合となる、J1ディフェンディングチャンピオンの柏。スタメンはGKが菅野孝憲。DFは右から酒井宏樹、増嶋竜也、近藤直也、橋本和。中盤は大谷秀和と茨田陽生のドイスボランチに、右がレアンドロ・ドミンゲス、左がジョルジ・ワグネルの強力ブラジリアンコンビ。2トップは北嶋秀朗と田中順也。新加入選手はゼロ。「去年のベースメンバーで組んだ」(ネルシーニョ監督)おなじみの顔触れがピッチに並びました。
さて、柏ボールでキックオフを迎えた一戦は、まず千葉がファーストシュート。開始35秒、エリア付近でルーズボールを拾った深井が右足のミドル。続けて3分、伊藤のパスが柏DFに当たると、素早く反応した藤田はフリーでミドル。どちらも枠は捉えられなかったものの、まずは柏の「久々にゲームをやる中での反応の鈍さ」(大谷)を突いた千葉が攻勢に出ていきます。さらに、前からのプレスも積極的に。7分には、バックパスを受けた菅野に米倉が猛烈なプレス。菅野の蹴ったボールは米倉に当たり、わずかにゴール左へ外れましたが、いいチェイスからあわやというシーンを創出しました。
千葉で目立っていたのは、横浜FCから加入した藤田。「長いボールを入れてセカンドを拾う形が徹底していた」と大谷も話したように、千葉は後ろから繋ぎながらもポイントではフィードを入れると、藤田がキープできないまでも競り勝って味方に落とし、そこから左右に展開という場面が多発。加えて藤田自身の裏へと抜け出すタイミングも悪くなく、米倉や深井など衛星的に動き回る選手との相性も良好。かなりポイントを創っていたと思います。
もう1人の好プレーを連発していた選手が左SBの武田。15分には米倉、深井と繋げたボールを鋭くクロス。少しDFに当たりましたが、ニアへ飛び込んだ佐藤勇人が右足アウトで合わせたボレーは左のポストを直撃。25分にも兵働が左へ展開したボールをきっちりと中へ上げ切り、わずかに藤田は届かなかったものの、持ち味の左足を駆使してチャンスへ積極的に絡んでいきます。
一方、「相手の入り方が非常に良かった」とネルシーニョ監督も素直に認めた柏は、後ろでこそボールが回るものの、レアンドロもボールに触る機会が少なく、なかなか攻撃のスイッチが入りません。また、北嶋と田中も裏を狙う意図は感じられましたが、動きが重なってしまう場面も多く、「もう少しシンプルに裏へ蹴ってもよかった」という酒井の言葉は、パスの出し手と受け手の呼吸もやや噛み合っていなかったことを表していると思います。21分には右サイドで酒井とのパス交換を経て、レアンドロが柔らかいクロス。「スペースを見つけていた」北嶋のボレーは枠の右へ外れましたが、前半はこれが唯一に近いチャンスでした。
逆に千葉はその後も惜しいシーンを創出。27分には右サイドで縦パスから米倉が抜け出し、よく見て中へ。藤田が潰れ、走り込んだ深井の右足シュートはクロスバーを直撃。35分にも伊藤が高い位置でボールを奪うと、藤田とのワンツーからエリア内へ。シュートも打てそうな体勢から中へ折り返し、間一髪で柏ディフェンスがクリアしましたが、「自分たちが今トライしていることに、大胆にトライしていこう」という指揮官の言葉を受けた千葉が主導権を握り、柏は「相手の勢いや迫力に圧される場面が多かった」と大谷が話せば、ネルシーニョ監督も「前半のリズムはトレーニングレベルだった」とバッサリ。前半の45分間は千葉の良い所ばかりが目立つ展開で終了しました。
今シーズン初めてネルシーニョ監督が揮った交替策はいきなりの2枚替え。ハーフタイムを挟むと、北嶋と田中をそのまま工藤壮人とリカルド・ロボへスイッチ。「結構ラインを高めに保ち、迷いなく前に潰しに来ていた」と相手のDFラインを分析したネルシーニョ監督は、「強く裏を狙っていけと言われた」(工藤)と新たな2トップのペアに、さらなる"裏"への意識を指示します。
48分には柏にチャンス。橋本のシンプルなフィードを、ロボが体の強さを生かしてキープするとワグネルへ。レフティの右足シュートはバーを越えたものの、いきなりシンプルな形からフィニッシュを取ってみせると、50分には酒井のサイドチェンジをワグネルが繋ぎ、収めたロボは左足で枠内シュート。前半よりダイナミックさが出てきた攻撃に早くもロボが融和し、柏がペースを奪取。
すると千葉が米倉の負傷で佐藤健太郎をボランチに送り込み、その前に兵働、深井、伊藤が並ぶ布陣へシフトした1分後に動いたスコア。レアンドロの強烈なプレスにパスの出し所を失った武田は不用意に中へ。このボールが「神経を研ぎ澄ませて常にゴールを狙っている。あの場面も狙っていた」という工藤の足元へ。飛び出した岡本を確実に外したシュートは、柏サポーターの目の前にあるゴールネットを揺らします。一気の2枚替えで全体の強度を高めることに成功した柏が、ゲームの流れとリードを鮮やかに奪ってみせました。
58分にはシンプルな増嶋のフィードを起点に、最後はロボに惜しいボレーを打たれるなど、少し後手を踏み始めた千葉。そんな中で、前半から個人的に目に付いていたのは、佐藤勇人が攻撃に出ていく回数の多さ。61分には橋本のタックルに遭いましたが、あわや独走というシーンに絡むと、64分にも左から武田が上げたアーリー気味のクロスへ、ニアに潜ってヘディングを敢行し、藤田のボレーに繋げるなど、果敢な攻撃参加を繰り返します。昨シーズンの特に後半は中盤3枚のアンカーに入ることもあり、ドイスボランチでもどちらかというとバランスを重視していた印象がありましたが、兵働、佐藤健太郎と、いわゆる"気の利く"タイプと組んだ佐藤勇人が、「元々前に出てくるタイプ」と相手のキャプテンも評した持ち味を、かなり発揮していたことは印象に残りました。
63分には坂本に替えてルーキーの大岩一貴、77分には伊藤に替えて新加入の田中佑昌を投入し、同点を狙うホームチーム。79分には深井が右サイドを鋭いタイミングで切り裂くと、エリア外から放ったシュートはバーの上へ。柏の先制後は全体のゲームリズムが「お互いにカウンターをやり合うような」(大谷)流れの中で、なかなか決定的なチャンスまでは創りきれません。
そんな膠着気味の展開で、81分に藤田と替わった荒田智之は好パフォーマンス。85分にはドリブルで抜け出しゴールに迫り、酒井のうまいタックルに阻止され、シュートは打てませんでしたが、88分には兵働のフィードをしっかり繋ぎ、深井の枠内シュートを演出するなど、短い出場時間の中でゴール前のシーンに絡んでいました。荒田も磐田での2シーズンは悔しい思いをしてきているだけに、水戸時代の恩師とも言うべき木山監督の下、今シーズンに懸ける意気込みが伝わってきました。
89分には兵働の3連続セットプレー、92分にも兵働が左サイドを抜け出してクロスを上げるなど、千葉も最後まで食い下がったものの、柏ゴールは落とせず。J1王者が3年ぶりに"千葉王者"を奪還する結果となりました。
千葉は「選手たちはよくやっていたと思う。チャンスを創る回数も多く、その点では手応えを感じた」と木山監督が話したように、攻撃面はかなり順調に仕上がってきている印象です。米倉が左足腓骨骨折で全治約2カ月半という厳しい診断が下されましたが、佐藤健太郎のボランチ起用で兵働も前目に入れるなど、攻撃の枚数は揃っています。チームバランスを見ても、昇格争いに絡んでくるのは間違いないでしょう。
柏は今シーズン初の対外試合もきっちりタイトル奪取。「初戦としては正常の範囲内」と指揮官も評したように、苦しい前半を強いられながらも、しっかり後半にポイントを修正してくる辺りはさすがです。新戦力で唯一登場したロボも、流れを変える重要な役回りをしっかり遂行。あとは「11人全員のバランスの距離感」(大谷)を少しずつ取り戻していけば、今シーズンもリーグの主役に躍り出る可能性を十分感じさせるような"初戦"だったのではないでしょうか。     土屋

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