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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合は福島県勢として初めて国立のピッチを踏みしめる尚志と、小倉隆史、中西永輔、中田一三を擁して帝京と同校優勝を果たして以来、実に20年ぶりとなる国立へ帰ってきた四日市中央工業の激突。やはりこちらも新鋭と古豪の対峙となります。
3回戦では難敵の桐光学園を3-3と激しく打ち合った末にPK戦で下すと、準々決勝では鈴木武蔵擁する桐生第一に4-1と快勝を収め、ここまで勝ち上がってきた尚志。福島県の代表という特別なモチベーションで、今大会を戦っています。一方、3回戦では立命館宇治相手に敗北寸前まで追い込まれながら、終了間際に浅野拓磨(2年・菰野八風中)の同点弾で追い付き、PK戦で辛くも勝ち上がると、準々決勝の中京大中京戦も80分に浅野が同点弾を決め、同じくPK戦で国立へと駒を進めた"ミラクル"四中工。運だけではない何かを持っている印象です。観衆は1試合目を上回る22201人。ファイナリストの玉座を懸けた一戦は、尚志のキックオフでスタートしました。
まず、先に勢いを持って飛び出したのは尚志。3分には金田一樹(3年・FC東京U-15深川)のお馴染みになりつつあるロングスローから、高慶汰(1年・柏レイソルU-15)のシュートはブロックされましたが、9分には金森采輝(3年・ヴィヴァイオ船橋SC)とのコンビネーションから、山岸祐也(3年・柏ラッセルFC)が枠の左へわずかに外れるシュート。12分にも山岸が左へ送ると、高がダイレクトで枠へ飛ばしたシュートは四中工GK中村研吾(1年・ソシエタ伊勢SC)がキャッチしましたが、「立ち上がりはペースが取れ過ぎた」と仲村浩二監督も振り返ったように、尚志が主導権をがっちりと握ります。
さて、いきなり守勢に回る展開となった四中工は15分に浅野がドリブルから右へ送り、現在得点ランクトップを走る田村翔太(2年・東海スポーツ)のシュートは尚志GK秋山慧介(2年・ヴィヴァイオ船橋SC)がワンハンドで何とかキャッチ。この2人にボールが入ると可能性はかなり感じさせますが、そこまで持ち込む回数を増やせず、なかなか反攻できません。
20分も尚志。山岸の右クロスを収めて、高が放ったシュートは中村がキャッチ。24分には金田のロングスローから、大貫峻士(3年・三郷JY FC)が頭で合わせるもフィニッシュには至らず。28分、金田の右FKから最後は金森が狙ったシュートは枠外へ。さらに、33分には山岸のパスから「祐也くん(山岸)にボールが入ると下がる感じ。相手のDFラインが低かった」と感じていた皿良優介(2年・ARTISTA FC)は中村にセーブを強いるミドル。尚志のリズムが続きます。
ところが35分、「相手のDFラインはヘディングは強いけどスピードはなかったので、裏を突いていこうと」(田村大樹・2年・LIBERO FC)狙っていた四中工は、松尾和樹(2年・菰野八風中)のスルーパスに田村翔太がフリーで抜け出します。シュートは秋山が顔面で懸命に阻止したものの、このCKが呼び込んだ歓喜。
田村大樹のキックはニアへのグラウンダー。浅野がワンタッチで流すと、そこに入ってきたのは國吉祐介(3年・FCクラッキス松戸)。繊細かつ豪快に揺らしたゴールネット。「練習していたセットプレー」(樋口士郎監督)が完璧に決まり、劣勢の四中工が先手を取りました。
さらに38分には右SBの川本将太郎(2年・亀山中部中)から田村大樹を経由して、左SBの藤山智史(2年・伊賀FC)が入れたクロスはDFにクリアされましたが、「相手はトリプル気味のボランチが中に絞るので、両SHとSBが攻撃の基点になると思っていた」(樋口監督)四中工のサイドアタックが機能し始めると、41分にはやはりサイドから四中工にチャンス。浅野がヒールで落とすと、寺尾俊祐(3年・名古屋FC)が右からアーリークロス。GKと交錯した田村翔太はすぐさま体勢を整え、無人のゴールへボールを流し込みます。わずか5分間で開いたスコア。四中工が2点をリードして、最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムに「45分だったら2点は返せるぞ」と檄を飛ばした仲村監督は交替を決断。金森を下げて、木村篤弥(3年・三郷JY FC)を投入すると、システムも中盤ダイヤモンドの4-4-2から、皿良を頂点に、その下へ右から後藤、山岸、木村の3枚が並び、金田と高でドイスボランチを組む4-2-3-1へシフト。こちらもサイドを使う意識を再徹底します。
ただ、なかなか尚志のサイドアタックはハマらず、51分には大貫のFKから高が狙ったシュートは、DFに当たってGKがキャッチ。58分にも皿良が右へ展開すると、後藤が鋭いクロスを放り込むも中村がキャッチ。決定的なシーンは創り出せません。
すると「サイドに基点を創って、2トップが外に流れるイメージ」(樋口監督)が一層表出してきた四中工に続く好機。63分には浅野がドリブルで強引に抜きにかかったシーンは三瓶陽(3年・二本松第一中)が何とかカットしましたが、65
分には追加点を記録。田村大樹の右クロスを田村翔太が頭で繋ぎ、浅野が打ち切ったシュートはDFがよくブロックしましたが、跳ね返りを松尾がボレーで叩くとボールはゴール右スミへ吸い込まれ、0-3。さらにリードが開きました。
66分には皿良を下げて、10番を背負う福永裕大(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)を送り込んだ仲村監督。それでも流れは変えられず、67分には左サイドを切り裂いた浅野のシュートは飛び出した秋山がファインセーブ。72分にはCKから逆にカウンターを浴びてしまい、最後は替わったばかりの生川雄大(3年・FC四日市)がシュートまで。抗えないゲームリズム。
そして、77分に煌めいた強烈な個。右サイドからスルスルと中央に切れ込んだ浅野は、おもむろに左足を一振り。ボールはフワリと左のポストを叩いて、ゴールネットへ到達します。プリンス東海1部の得点王が圧巻の5試合連続弾。0-4。勝敗は決しました。
諦めない尚志。78分、金田のヒールパスを受けた山岸は、力強いドリブルから強烈なシュートを放つも、ボールはクロスバーをヒット。拾った金田もシュートは枠外。79分、三瓶のパスを山岸が繋ぐと、福永のシュートは枠の上へ。そして82分、金田のフィードを福永が落とすと、少し右へ持ち出した山岸のシュートはゴール右スミへ突き刺さります。「この先の人生の中でも忘れられないゴール」と山岸が語り、「あの1点で少しは福島の人たちを勇気付けられたかな」と皿良も笑顔を見せた「希望の1点」(仲村監督)。尚志が意地を見せてくれました。
ゲームは89分に再び浅野がカウンターから80m近くを独走して5点目をマークし、90分にもカウンターから最後はオウンゴールでトドメを刺した四中工が、2回戦に続く大量6ゴールで20年ぶりのタイトルへ王手を懸ける結果となりました。
敗れた尚志は「ポゼッションがうまくいった所で、前に行けてしまった」ことがバランスを崩した要因と仲村監督。確かに30分過ぎまでの時間帯でチャンスをモノにしていれば、違う結果も考えられたかもしれません。それでも初めての国立まで「自分たちのサッカーで勝ち上がってくることができた」(後藤)躍進は見事の一言。「胸を張って福島県に帰ろうと話した」と仲村監督。鮮烈な印象を残して、尚志は堂々と聖地を後にしました。
勝った四中工は、「上下関係もほとんどなくて一体感がある」と樋口監督が話したように、1、2年生がスタメンに8人も並ぶ若さの勢いが、ポジティブな方向に作用している印象です。とりわけ、6ゴール同士で得点ランクトップに並んでいる浅野と田村翔太の破壊力は大会屈指。タイプこそ違いますが、昨年の選手権を制した滝川第二の"ダブルブルドーザー"に通じる所があるかもしれません。決勝は「ウチの心臓以上の存在」と指揮官も評する、キャプテンの國吉が累積警告で出場停止となりますが、「単独優勝して帰りたい」と浅野は頼もしい一言。選手権では初めての対戦となる市立船橋とのファイナルは9日14時5分、今日と同じ国立でその火蓋が切って落とされます。 土屋
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