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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2012年01月07日

高校選手権準決勝 大分×市立船橋@国立

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写真[1]kokuritsu010701.jpg高校のサッカー部員たちにとって、最大の目標であり、最大の夢でもある国立競技場。今日はその晴れ舞台へ、長く厳しい戦いに勝ち続けてきたわずかに4チームが登場することになります。
第1試合で対峙するのは、7年ぶりに帰ってきた全国で躍進を続け、県勢としても初めてのベスト4を戦う大分と、過去4回の全国優勝経験を誇り、これが15試合目の"コクリツ"となる千葉の市立船橋。新風と伝統。90回目の準決勝にふさわしいカードを目撃するため、澄み切った青空の下へ集った観衆は19392人。さらなる高みを目指すための一戦は、市船のキックオフで90分間の1秒目を刻み始めました。
ゲームは立ち上がりから非常に動きの少ない展開に。大分は長いボールを早めに前へ入れていくのは準々決勝同様でしたが、そのボールに対してハイプレスを掛ける訳ではなく、ある程度中盤の3枚も「コンパクトにして、人ではなくコースを切って」(朴英雄監督)しっかりとブロックを築くような、市船からすれば「想定とは違う入り方」(朝岡隆蔵監督)でスタート。それでも前線3枚の左に入った小松立青(3年・TOYO FC U-15)が持ち味のパワーで推進力を発揮すると、8分にはその小松がサイドチェンジを受けて、強引なミドルでファーストシュートを記録。この日の狙いを表明するようなシーンを披露します。
逆に相手の出方を見て、「前半で点を取りにいかなくてはいけない」と感じた朝岡監督でしたが、ボランチの渡辺健斗(2年・ヴィヴァイオ船橋SC)と松丸龍(3年・船橋大穴中)を中心にポゼッションでは圧倒的に上回ったものの、相手のブロックに穴を見つけられず、攻撃の形を創れません。13分にはエースの和泉竜司(3年・FC四日市)がドリブルで右に流れながらミドルを放つも、大分GK平畠雄貴(3年・FC佐伯 S-play・MINAMI)がキャッチ。見た目の印象とは裏腹に、実際は「見ている人には面白くない展開」と朴監督が語った大分ペースでゲームは推移していました。
そんな中、飛び出したのは伏兵のセットプレー。24分、和泉がドリブルで倒されて獲得したFK。中央左寄り、ゴールまでは25m強の距離から蹴ったのは渡辺。直接狙ったボールは、「最初からあそこに蹴ると決めていた」素晴らしいコースに素晴らしい軌道で飛び込みます。「いつもは杉山(丈一郎・3年・ヴィヴァイオ船橋SC)か菅野(将輝・3年・ヴィヴァイオ船橋SC)が蹴っていたけど、彼も自信があったのかな(※杉山と菅野は共にベンチスタート)」と指揮官も語った2年生のスーパーな一撃。苦しんでいた市船がセットプレで、大きな先制ゴールを奪取しました。
さて、中盤のキーマン上野尊光(3年・津久見第一中)を負傷で欠いた大分は、突破力のある右SH佐保昂兵衛(3年・TOYO FC U-15)には市船の磐瀬剛(1年・ミナトSC)がマンツーマン気味でケアする中、形という面ではなかなかできてきません。
それでも、小松をセンターに回して、選手を替えずに配置を入れ替えると迎えたチャンス。30分、少し距離のある位置から若林喜史(3年・TOYO FC U-15)が蹴ったFKが、カベのハンドによって少しゴールに近付くと、このFKを蹴ったのは小松。再びカベに当たったこぼれを小松は自らシュートに持ち込み、市船GK積田景介(3年・市原五井中)がファインセーブで弾き出しましたが、あわやというシーンを創出すると、40分にも中央の直接狙える位置から、梶谷充斗(3年・TOYO FC U-15)が蹴ったFKはバーの上へ。こちらもセットプレーでチャンスを生み出します。
市船は44分に和泉の右FKから米塚雅浩(3年・IRIS生野SS)が合わせたヘディングはバーの上へ。45分にギャップでボールを引き出していた池辺征史(3年・Penya F.C.Barcelona Japan)がエリア内をドリブルで泳ぎ、放ったシュートはバーを越えてスコアは動かず。「この展開であれば前半勝負」(朝岡監督)でゴールを奪った市船と、ビハインドを最少で抑えた大分。お互いに"悪くない"45分間は市船が1点をリードして終了しました。
さて、本来のCFではなくボランチに入った武生秀人(3年・大分滝尾中)の積極的なミドルで幕を開けた後半も、基本は市船がボールを握る展開。48分には池辺が右に振り分け、和泉の上げたクロスに磐瀬が頭から飛び込むも、ボールはバーの上へ。50分、磐瀬のパスから和泉は鋭い弾道の40mロングを枠の右へ。「後半の立ち上がりは慎重にリスク回避」(朝岡監督)しながら、手数を出せる所は踏み込んでいくしたたかさで、ゲームをコントロールしていきます。
すると、56分にブルーの咆哮。池辺がエリアの外から粘り強くドリブルで運ぶと、岩渕諒(3年・FRIENDLY)を経由したボールは和泉へ。体を入れて縦へ持ち出した10番が角度のない所から右足を振り抜くと、揺れた左のサイドネット。キャプテンの重責を果たす和泉の追加点で、市船がリードを広げました。
攻め手が創れない上に2点を追い掛ける形となった大分の朴英雄監督は、59分に1人目の交替を決断。牧寛貴(2年・RISE SC)を下げて、準々決勝ではスタメンだった藤澤拓(1年・ブルーウイングFC)を投入。前線の機動力にてこ入れを図ります。ただ、どちらかというと長いボールより、しっかり繋いで攻めるようなプレーを選択することの多くなった大分は、崩し切るような局面まで創り出せず、種岡岐将(2年・日光今市中)と小出悠太(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)のCBコンビを中心とした市船の守備陣を攻略できません。
62分は市船。米塚が右から入れたアーリークロスを、岩渕がダイレクトで狙ったシュートは平畠がキャッチ。70分、和泉の右FKを岩渕がボレーで折り返し、鈴木潤(3年・名古屋FC)が当てたヘディングはバーの上へ。手数の多さも市船で、着々と時間が経過していきます。
そんな中、80分に訪れた大分の決定機。高い位置でボールを奪った小松はエリア内を左へ流れながら左足をハードヒットすると、ここは積田のファインセーブで阻止されましたが、流れでFKを獲得。すると、右から佐保が蹴り入れたボールに、高い打点で合わせた清家俊(3年・FC佐伯 S-play・MINAMI)のヘディングが市船ゴールを陥れます。粘る大分。これで1点差。
もはやゲームも最終盤。徹底してサイドにボールを運び、相手陣内で時間を消し去ろうとする市船。何とかボールを奪って相手ゴールへ迫りたい大分。90分、右から若林のロングスローは飛距離十分。馬場が何とか当てたボレーは、しかしヒットせずに枠の右へ。アディショナルタイムの3分も「あそこでのキープや奪い取りには、選手たちが自信を持っている」(朝岡監督)市船が巧みに使い切ると、国立に響いたホイッスルはファイナルへの祝音。就任1年目の指揮官に率いられた市船がゲーム巧者ぶりを存分に発揮して、9年ぶりの全国制覇へ王手を懸ける結果となりました。
敗れた大分は少しいつもと戦い方を変えてきていましたが、選手たちがよく咀嚼して相手を封じ込めていたと思います。ゆえに防ぎようのなかったFKからの先制点が最後まで響いてしまった印象です。それでも、11人がはっきりと"前"へのベクトルを打ち出すスタイルは圧巻。加えて、今日の戦い方で「サッカーの3Bの中で、私はブレインを大事にしたい」という朴監督の想いも、選手たちは体現してくれたのではないでしょうか。
勝った市船は、序盤こそ相手の出方に戸惑っていたようですが、「選手たちが今までの経験値を生かして、柔軟に対応してくれた」と朝岡監督も話したように、先制点以降はしっかりとゲームをコントロール。1失点こそ許したものの、"イチフナ"らしい勝ち方だったと思います。これで83回大会以来となる、7年ぶりの決勝進出。朝岡監督が選手として達成した初戴冠から数えて、5回目の全国制覇まではあと1勝です。     土屋

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