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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2012年01月05日

高校選手権準々決勝 市立西宮×大分@埼スタ

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写真[1]saitama010501.jpg高校選手権において勝負の明暗という意味で、各都道府県の決勝は最も勝者と敗者のコントラストがくっきりと描かれますが、全国ではおそらく今日行われるベスト8が最も敗者にとって残酷なステージとなります。聖地でプレーする権利を懸けた4試合。勝った4チームのみが"コクリツ"の舞台に降り立つことを許されるクォーターファイナル。埼玉スタジアム2002の第1試合は、兵庫の市立西宮と大分の激突となりました。
県予選準決勝で滝川第二を、今大会の初戦でぶつかった山梨学院大附属を共に倒し、ここ2大会の全国王者を撃破する快挙を達成した西宮。3回戦では同じ近畿勢の近大附属にPK戦で競り勝ち、埼玉まで勝ち進んできています。対するは初戦で福井の北陸相手に10-0という衝撃的なスコアで完勝。余勢を駆って埼スタで"ホーム"の浦和東、優勝候補にも名前の挙がっていた青森山田を下して、自らが持つ県勢最高成績に並んだ大分。どちらが勝っても初の国立となる一戦は、大分のキックオフでスタートしました。
ゲームは前線に並んだ武生秀人(3年・大分滝尾中)、藤澤拓(1年・ブルーウイングFC)、岡部啓生(2年・TOYO FC U-15)を長いボールで走らせる所から立ち上がった大分に対して、しっかりとボールを保持する形から入った西宮がペースを掌握。
すると、8分にはGKのキックミスから武生にあわやというミドルを放たれ、ファーストシュートこそ相手に譲りましたが、9分には早くもスタイルが呼び込んだ先制劇。新井友博(3年・西宮今津中)のパスをしっかりキープした1トップの大道壮毅(2年・西宮SS JY)が落とし、後藤寛太(3年・西宮SS JY)がシュート。大分GK平畠雄貴(3年・FC佐伯S-play・MINAMI)はよく弾きましたが、詰めた指田真宏(3年・西宮SS JY)がプッシュ。最初のチャンスをゴールへ結び付けます。
さらに13分、大道のショートパスを左サイドで受けた後藤は少し中に持ち出すと、ゴールまで30mはあるミドルレンジからシュートチャレンジ。ボールは美しい弧を描いて枠の右スミギリギリへ飛び込み、揺れたネット。2回のチャンスを共にゴールへと直結させた効率のよさ。早々にリードが広がりました。
さて、なかなかリズムの掴めない大分は「中盤と最終ラインがくっついてしまった」と朴英雄監督が振り返ったように、3人の中盤が劣勢の中で下がってしまうことが多く、前と後ろの距離がかなり開いてしまいます。17分も西宮。右SBに入った柳圭佑(1年・大阪東淀川FC)のクロスから、指田が惜しいヘディングを放つと、大分の朴監督は早々に決断。まずは藤澤を下げて、小松立青(3年・TOYO FC U-15)を投入すると、21分には初戦でハットトリックを達成した岡部も劉東佶(3年)にスイッチ。前半も半分を過ぎた所で2枚の交替カードを切ってきました。
ただ、これはある程度「予定通り」(朴監督)の交替策。特に岡部は「テーピングしていて、ほとんど使えない状態だった」と指揮官。2人を入れ替える所までは予想外だったかもしれませんが、「岡部に踏張ってもらって小松を入れる」のはあらかじめのプランだったようです。
以降も、24分には後藤の決定的なクロスから、指田がシュートを打ち切れなかった24分のシーンや、指田が高い位置で相手のミスを拾って前野俊哉(3年・西宮SS JY)のシュートに繋げた32分のシーンなど、チャンスは西宮が創っていた中、少しずつ大分も前へのパワーで反攻。
33分には上野尊光(3年・津久見第一中)の浮かせたスルーパスに武生が反応してシュート。DFがブロックしたこぼれを劉が枠へ飛ばしたボールは、西宮GK中野啄治(3年・西宮苦楽園中)がキャッチしたものの、ようやく好機を迎えると、直後の34分に追撃弾。若林喜史(3年・TOYO FC U-15)のFKに清家俊(3年・FC佐伯S-play・MINAMI)がバックヘッドで合わせると、ボールはゴールの中へ転がり込み、CB2人で1点を返します。40分に大道の狙ったミドルが左ポストを直撃する幸運もあり、「とりあえず2点で済んだからよかった」と朴監督も振り返った前半は、西宮が1点をリードして40分間を終えました。
迎えた後半は大分が開始からいいリズムを掴んで攻勢に。小松と劉のパワーが効き始めたのか、前にボールが収まるようになり、セットプレーが増加。41分と43分にはFK、44分にはCKから相手ゴールを脅かします。すると48分の歓喜もやはりセットプレーから。武生が左サイドから蹴ったCKは西宮ディフェンスがクリアしきれず、詰めた小松がきっちり押し込む同点弾。その前から、前線でのパワーという点では奏功していた交替策がゴールという形でも結実。西宮が前半で奪った2点のリードは霧散しました。
全体的にボールアプローチも遅れがちで、局面での勝負で劣勢を強いられてきた西宮。49分に指田がエリア外から枠へ飛ばしたシュートも平畠がファインセーブ。51分、キャプテンを務める帷智行(3年・西宮SS JY)のミドルがDFに当たり、こぼれた所に大道が飛び込んでのボレーは、ここも平畠がファインセーブ。突き放せません。
一方の大分も54分に決定機。DFのクリアを体に当てた小松が、ルーズボールを自ら拾ってシュート。ここは中野が何とかストップしましたが、61分にも得点のチャンス。左SBの馬場勇之介(3年・FC佐伯S-play・MINAMI)が中盤からフィードを右へ。抜け出した武生は左足でGKの下を通すシュート。無人のゴールへ転がるボール。しかし、猛然と追い付いた帷がほとんどライン上で決死のクリア。スコアのバランスは崩れません。
既に新井と渋谷大山(2年・西宮SS JY)を1枚目の交替カードとして入れ替えていた大路照彦監督は、63分に2枚目を切る決断。気の利くプレーを随所に発揮していた指田に替えて、スーパーサブの細井優希(1年・西宮SS JY)を送り込み、勝負に出ます。
「後半はウチのサッカーができた」と朴監督が話したように、終盤も大分ペースで推移する中、74分には西宮に到来した勝ち越しのビッグチャンス。中盤を司っていた難波祐輔(3年・西宮甲陵中)が左へ展開すると、細井は鋭いドリブルから中を見て折り返し。後藤は絶妙のスルーを敢行し、渋谷へボールは届きましたが、大分ディフェンスの寄せが速く、シュートは打ち切れません。
75分、「時間を何回も何回も確認して」朴監督が選んだ3人目のカードは、劉に替えて「最後のカード」(朴監督)牧寛貴(2年・RISE SC)。すると79分、後方からのフィードに走り込んだ武生は、よりフリーで並走していた牧へラストパス。「決めるだけのボール」に牧が右足を振り抜くと、左のサイドネットへ吸い込まれた白黒の球体。「神が降りてきた」と朴監督も語る大分が交替選手の躍動で、大分県勢として初めて国立のピッチを踏みしめる権利を獲得する結果となりました。
2点差を跳ね返して勝利を手にした大分は「日本に来て18年目。大分県を背負って国立に行きたいと思っていた」という朴監督の目標を見事に具現化する逆転での国立切符。「選手には子供だけど人間として感謝している」と話した監督に最高のゲーム内容で応えてみせました。「国立へ行くというのは自分の第一章が終わる日。それ以上の線路は自分の中にはない」と話す指揮官に"日本一"という新たなモチベーションを与えるだけの準備は整った大分イレブン。九州勢4県目の頂点までは、あとわずかに2勝です。       土屋

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