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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
三ツ沢の第2試合は新鋭と古豪の対峙。県決勝では絶対的本命の前橋育英相手に2点差を引っ繰り返し、群馬を初めて制した桐生第一。県準決勝で香芝に、決勝で一条に、それぞれ昨年と一昨年のリベンジを果たして、4年ぶりの全国へ進出してきた奈良育英。フレッシュな顔合わせの3回戦です。
初戦で当たった大社を、U-17ワールドカップにも日本代表として出場した、新潟入団が内定している鈴木武蔵(3年・FCおおた)の入学後公式戦初ゴールを含むハットトリックで、3-0と下した桐一。帝京大可児から3ゴール、富山南から5ゴールを奪い、破壊的な攻撃力を披露して勝ち上がってきた奈良育英。激しい打ち合いも予想される一戦は、少し立ちこめていた黒い雲も彼方に消えた冬晴れの中、桐一のキックオフでスタートしました。
先に攻撃の時間を長く創ったのは奈良育英。2分、片山公太郎(3年・ディアブロッサ高田FC U-15)の左FKがこぼれると、黄山晃宏(3年・生駒スポーツクラブ)のシュートはDFがブロック。続けて鹿野裕大(3年・EXE90FC)のボレーは桐一GK鯨井拓真(3年・クマガヤSSC)がキャッチしましたが、ファーストチャンスを創出します。
奈良育英は黄山と木田直樹(3年・SOLESTRELLA NARA 2002)の2トップにまずはボールを入れて、そこからの連動性が攻撃の生命線。黄山はレフティということもあってか左に流れることが多く、どちらかと言えば左サイドからのアタックが増加。15分に金田理央(3年・前橋JY)の左CKを堂前貴将(3年・図南SC群馬)が頭で折り返し、遠藤葵(3年・GRANDE FC)のヘディングをGK坂本亮輔(3年・名張WEST FC)がファインセーブで桐一の好機を阻止すると、17分の決定機はやはり左サイドから。黄山のクロスに木田が合わせたヘディングは鯨井がセーブ。リバウンドを狙った片山のシュートも鯨井がファインセーブで弾き出し、先制まで届かなかったとはいえ、シンプルなアタックでゲームを優位に進めます。
ただ、少しずつ落ち着きを取り戻した桐一は「ちょっと相手が引いてくれたので、やり続ければどこかで点が取れるかなと思っていた」と小林勉総監督が話したように、18分にはようやくチャンス。CBの渋沢真矢(3年・前橋JY)が縦にクサビを打ち込み、鈴木はエリア内でドリブルを繰り出すと、こぼれに走り込んだ渋沢のミドルはバーの上へ。19分にはボランチの古沢圭希(3年・ウエストサイド境SC)が右へ絶妙のミドルスルーパス。遠藤のシュートは少し中の鈴木が目に入ったのか、中途半端になって枠の左へ逸れてしまいましたが、「相手は武蔵に引っ張られるので、中盤にギャップがかなりできた」と小林総監督が話した通り、空いてきた中盤のスペースを有効活用。「武蔵に厳しく来るのはわかっていたので、その裏を狙った」(金田)19分のシーンに象徴されるように、桐一へリズムは移っていきます。
23分には金田が左へ展開すると、池田稔樹(3年・図南SC群馬)のクロスにニアで鈴木がヒールで合わせるも枠外。27分、古沢圭希の縦パスを金田はヒールでラストパス。受けた鈴木のシュートはわずかにクロスバーを越えたものの、のびのびと躍動する上州っ子たち。
すると37分、三ツ沢に吹き荒れた"空っ風"。古沢圭希が左へ振り分け、池田のグラウンダークロスに鈴木は正確なポスト。「自分で行ける時は自分で勝負する」吉森恭平(2年・ヴェルディSS小山)は鈴木に引き付けられ、一瞬寄せが遅れたマーカーを巧みなステップワークで外すと、ゴール右スミへボールを滑り込ませます。1トップ下に入った160センチのテクニシャンが、チームの狙いをゴールへ昇華させる先制弾。桐一が1点をリードして、ハーフタイムに入りました。
リードを許して後半を迎えた奈良育英。しかし、すぐさま掴んだビッグチャンスは42分。黄山を起点に、木田のスルーパスへ抜け出したのは富山南戦も2ゴールを上げている山田真史(3年・宇治FC)。右足から放たれたシュートは、桐一ゴールを打ち破ります。あっという間の同点劇。1-1とスコアは振り出しに引き戻されました。
後半開始早々に追い付かれてしまいながら、「真ん中を支配したチームが勝つと僕は思っている」と話す金田を中心に、しっかりと左右に散らしながら慌てなかった桐一。48分には金田、池田、吉森と回して、池田の豪快なドリブルシュートは坂本のファインセーブ。49分には右から金田が蹴ったCKを、池田が合わせたボレーは枠の左へ。失点した後も攻撃の手を緩めません。
迎えた55分、左SBの古沢友希(3年・ウエストサイド境SC)からボールを受けた吉森は、中央に完璧なスルーパス。これを遠藤は迫り来るGKにも動じることなく、堂々と正面から左スミを射抜いたゴール。「シュート力、決定力は武蔵以上にあります」と小林総監督も太鼓判を押しながら、ケガでインターハイ以来久々の公式戦となった遠藤の勝ち越し弾。桐一が堂々たる姿を見せ、再びアドバンテージを得ることになりました。
こうなると、「ゲームの組み立ては凄くよくなってきた」と小林総監督も評価した桐一が圧倒。60分には遠藤が左サイドをドリブルで運び、最後は池田がミドルを放つと坂本がセーブ。62分、一度は奪われたボールを奪い返した鈴木が左からカットインしながら打ったシュートはクロスバーの上へ。63分、またも鈴木が左サイドからドリブルで切れ込み、枠へ飛ばしたシュートは坂本が防ぎ、こぼれに反応した金田のボレーは枠の右へ外れましたが、厳しいマークに苦しめられた鈴木にいよいよ掛かったエンジン。
そして66分、ピッチ中央でボールを持った吉森は、最高のタイミングと強さのスルーパスをスペースへ。走り込んだ鈴木は、1対1で対峙したGKの股間を抜く技ありのフィニッシュ。エースの2戦連発となる今大会4ゴール目が飛び出し、点差は2点に広がりました。
苦しくなった奈良育英は、ゴールを決めた山田真史を前線に上げて反撃の糸口を探りますが、どうしてもロングボール以外に攻める手立てがなく、「競った後のこぼれを拾おうとしていた」(吉森)桐一の守備陣を崩すことができません。逆に69分には桐一にチャンス。もはやピッチの王様と化していた金田が右へ付けると、宮崎陽(3年・前橋FC)はリターン。さらに金田がもう1度短く出したパスを、池田は右からカットインしてクロスバーにぶつけるミドル。71分には金田のピンポイントクロスを、ニアで合わせた鈴木のヘディングはヒットせず。
続く攻勢の仕上げは79分。金田が右サイドへ展開すると、池田はターンからエリア内へ潜ってマイナスの折り返し。走り込んできた金田のシュートは豪快にゴールネットを揺らします。「いい感じで仕上がってきているし、楽しんでやることができている」と話したゲームキャプテンの大会初ゴールとなった4点目で打ち止め。「県大会でもこんなに点は取れてなかった。出来過ぎじゃないですか」と小林総監督も驚きの完勝で、桐一がベスト8の座を勝ち取る結果となりました。
桐一の強さが際立つゲームだったと思います。「みんなが動いてパスコースを創ってくれた。スペースをうまく使えたと思う」と話した金田と吉森が中盤でかなり自由を謳歌したことで、両サイドからのアタックにも幅が出ていった印象。「勝ちたい気持ちと上に行きたい気持ち」(吉森)がチームとして前面に押し出され、それが結果に結び付く最高のゲームだったと言えそうです。「初出場初優勝を狙っている」(金田)チームにとって、その目標まではあと3勝。群馬県勢として初の決勝、そして初の優勝へ。桐一旋風はホンモノです。 土屋
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