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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2012年01月02日

天皇杯決勝 京都×FC東京@国立

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201201020002000[1]kokuritsu0101.jpg2012年のスタートは史上初めてJ2同士が激突する天皇杯決勝。しかも、その対戦カードは平安時代から江戸時代まで天皇がその居を構えていた京都と、明治時代から現在に至るまでの皇居が置かれている東京。元日に古都と首都が交錯する、歴史的な一戦となりました。
山形、鹿島のJ1勢に、同じJ2の湘南を撃破し、準決勝ではまたもJ1の横浜FMと真っ向から打ち合っての勝利。「だんだん高くなるハードル」(大木武監督)をことごとくクリアして、ファイナルまで駒を進めてきた京都サンガ。一方、屈辱のJ2降格から1年。そのJ2を圧倒的な実力で駆け抜けて昇格を決めると、迎えた天皇杯でも神戸、浦和、C大阪を次々と退け、ファイナルへ辿り着いたFC東京。舞台は例年通り快晴の国立。ホームゴール裏には紫のカップを挟んで、"2012"の文字。アウェイゴール裏には縦に並んだ青と赤の間に"12"の文字。91度目の王座を巡る決戦は、東京のキックオフで時を刻み始めました。
いきなり飛び出したのは東京。開始46秒、ルーカスがミドルレンジから枠を捉えるシュートを放つと、水谷雄一は辛うじて枠外へ弾き出すファインセーブ。3分、梶山陽平が裏へ送ったボールを、石川直宏は思い切り良く右足を振り抜くと、ここも水谷がファインセーブ。そのCKを石川が入れると、こぼれを谷澤達也は枠内ボレー。わずか3分間で3度の決定的なシーンを迎え、大熊清監督も「こっちのリズムになり過ぎて、行け過ぎていた」と振り返る東京の猛ラッシュでゲームはスタートします。
「サイドのスペースのスタートを切るのが速く、徳永と椋原に付いていけなかった」と大木監督が話した京都は、押し込まれる中でも手数では反撃。6分にはエリア外から宮吉拓実が、8分には相手のミスパスを奪ったチョン・ウヨンが、9分には中村充孝のパスを受けてループ気味に宮吉が、いずれもミドルシュートを繰り出すなど、殴り合う決意を表明。
すると、13分に訪れた決定機。中山博貴のパスをドゥトラが強さを生かしてDFと競り合うと、こぼれたボールは中山の前へ。中山は飛び出したGK権田修一の上を華麗に破るチップループ。嬉しそうに弾んだボールは、フワリとゴールネットを揺らします。「ハイペースだとは思っていない。あの感じを90分間続けるのがウチのサッカー」とはCBに入った安藤淳。京都がワンチャンスで先制してみせました。
ところが、そのリードが続いたのはわずかに2分間。15分、左サイドで獲得したCK。短く出して羽生直剛のリターンを受けた石川はファーまで届くクロス。宙を舞った今野泰幸が打ち下ろしたヘディングは、飛び付いたチョン・ウヨンも一歩及ばずゴール左スミへ飛び込みます。これがJ2王者か。あっという間に点差は霧消しました。
さて、目まぐるしく動いたゲームも、20分過ぎからは少しペースダウン。依然として流れは東京気味に推移する中、「あれくらいは回せると思っていた」と工藤浩平が話した京都も徐々に細かいパスワークを表現。22分にはドゥトラ、工藤、中山と細かく回し、工藤のフィニッシュは枠を越えたものの、持ち味を形に結び付けます。逆にフィニッシュワークまでは至らなくなっていた東京も、「シンプルさが出てきた」(大熊監督)ことで、サイドチェンジが有効な手立てに。シュートはなかったものの、大きな展開でスペースをうまく活用していきます。
すると、青赤を沸騰させたのは際立つ"個"。36分、谷澤が倒されて奪ったFK。ゴール右寄り、約30mの距離から石川が小さく出すと、「止まっていると無回転は蹴れないので、動かしてもらった」森重真人は思い切りよくミドル。ボールは狙い通りの無回転でゴールへ突き刺さります。「大事な試合ではセットプレーがキーワード」と指揮官が言及した通り、東京がセットプレー2発で前半の内にスコアを引っ繰り返してみせました。
こうなると止まらないトーキョー。37分、ルーカスとのワンツーから石川がバーの上へ外れるシュート。40分、谷澤が右へサイドを変えると、オーバーラップを敢行した徳永悠平のミドルは水谷が何とかセーブ。42分には石川の右CKを今野が折り返すと、ルーカスのオーバーヘッドは枠の右へ。
そして同じく42分、水谷のゴールキックを高橋秀人が頭で跳ね返すと、ボールはそのまま走り出したルーカスの下へ。チーム最年長のブラジル人はGKとの1対1をモノともせず、冷徹にゴールを陥れます。1-3。6分間でリードが2点に広がりました。
攻撃の手を緩めない東京は45+1分にもルーカスのサイドチェンジから、石川がカットインしながら左足で狙ったシュートはクロスバーを直撃。残り10分で牙を剥いた東京がその強さを誇示するかのような内容で、最初の45分間は終了しました。
後半も開始1分経つ間もなく、ファーストシュートはルーカス。右サイドから徳永が上げたクロスに頭で合わせ、変わらぬ意欲を打ち出すと、51分にも石川の右CKから、ヘディングはルーカス。水谷が何とかキャッチしたものの、マッチアップした安藤も「抜群にうまかった」と認めた49番がチームを牽引していきます。
大木監督も早めの決断。54分にドゥトラを下げて、前の試合で決勝点をマークした久保裕也を投入。さらに58分には負傷退場を余儀なくされた中村充孝に替えて、駒井善成を左SHに投入。中山が中盤ダイヤモンドの頂点に入ります。59分には久保、工藤、久保、中山と繋がり、最後は工藤が狙ったシュートは権田がキャッチ。65分にも福村貴幸の左クロスに、中山がバイシクルを見せるも、ボールは枠の左へ。選手交替とポジションの入れ替えは、特に攻撃面では奏功していたと思います。
ただ、「後半に引いてくるのはわかってた」と安藤が話したように、2点のアドバンテージを握っていた東京は全体のラインを下げながら、ルーカスを1本のパスで走らせるようなカウンターも多用して、うまくゲームをコントロール。とはいえ、58分には今野が機を見て最前線まで駆け上がり、石川のシュートを演出するなど、メリハリの効いたアタックで京都ゴールを脅かします。
そんな中、66分に発動されたのは東京の高速カウンター。左サイドで谷澤が縦へ送ると、椋原健太はダイレクトで絶妙なラストパス。ルーカスは少し角度がなくなったにもかかわらず、浮かせて水谷のわずかに上を抜くテクニカルなシュート。これがゴール右スミギリギリに収まります。クラブを救うために引退を撤回して帰ってきた男が、この大舞台でも2ゴールと躍動。東京に大きな大きな4点目が入りました。
かなり苦しくなった京都は、それでも果敢に前へ前へ。70分には左SBの福村が積極的なオーバーラップから獲得したFKを、チョン・ウヨンが直接狙ったキックは枠の右スミを捉え、権田がファインセーブで回避。しかし、このCKを再びチョン・ウヨンが蹴り込むと、高橋に競り勝って中央から堂々とヘディングで押し込んだのは久保。高校生が準決勝、決勝と2戦連続で見事なゴール。ファイナリストの意地を発露させて点差を縮めると、大木監督は76分にこれが公式戦デビューとなるルーキーの下畠翔吾を最後のカードとして投入。ピッチ上には4人の10代かつ下部組織出身者が並び立ちます。
終盤はお互いにチャンスを創り合いながら、スコアは動かないままで時計の針は進み、アディショナルタイムは3分。急ぐ京都。94分、チョン・ウヨンのFKがクロスバーに当たり、最後の攻撃が終わると西村雄一主審のタイムアップを告げるホイッスル。「当初の目標の"強くなってJ1に戻る"というのが、完全ではないが証明できたと思う」と大熊監督も噛み締めた、首都の戴冠。91代目のチャンピオンとして東京が歴史にその名を刻む結果となりました。
「相手が上回った。僕たちはやり切れていたし、悪かったとは思わない」と安藤が話したように、最後は地力で押し切られた感のある京都。それでも「ここまで連れてきてくれた選手には本当に感謝している」と口にした大木監督の下で着実にスタイルを深化させ、シーズンの最後に天皇杯ファイナルまで進出したのは、素晴らしい成果だと思います。「今日の悔しさを忘れずに、始動からしっかり練習していきたい」と工藤。新シーズンに大きな期待を抱かせる元日になったのではないでしょうか。
東京はとにかく"強い"の一言。セットプレー2発で逆転すると、カウンターからキッチリと2つの追加点。先制されたことを除けば、ほぼ満点のゲーム運びでした。「どん底を経験し、謙虚さとひたむきさが蘇った」と大熊監督。その姿勢が最後まで全員が走り切るスタイルに昇華されたと言えそうです。「自分自身の夢でもあったが、このチームは自分が見てきた選手も多く、彼らとクラブのレベルアップのために、どうしてもアジアに連れていきたかったので、それを達成してくれたことに感無量」と話した大熊監督。J1昇格、天皇杯優勝、ACL出場権獲得という数々の手土産を残し、J2に降格したゲームの相手である京都にもきっちり勝って、「最後の試合」を最高の形で締め括ることになりました。      土屋

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