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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
4174分の48。高校生が憧れ、目指し、敗れ、それでもなお憧れる夢舞台。高校選手権が帰ってきました。その中でもさらに特別な"コクリツ"という聖地。開幕戦に登場する2チームは、幸運にもそのピッチに立つことを許されます。東京の決勝ではリードを追い付かれながら、延長戦で早稲田実業を振り切って4年ぶりの全国を勝ち取った國學院久我山。福岡の準決勝で最大の難敵とも言うべき東福岡を3-0と一蹴し、その勢いで九州国際大附属にも競り勝って11年ぶりに選手権へ帰ってきた東海大五。共に出場校の多い激戦区を勝ち抜いて来た、実力派同士のオープニングゲーム。47試合の先陣を飾る一戦は、東海大五のキックオフでスタートしました。
開始1分経たず、先にシュートを放ったのは東海大五。佐藤亘将(3年・北九州本城中)がミドルにチャレンジ。まずはファーストシュートが記録されます。8分は久我山にチャンス。山内寛史(2年・AZ'86東京青梅)のサイドチェンジを右サイドで受けた右高静真(3横浜F・マリノスJY)は、カットインから枠内シュート。東海大五GK中西蓮(3年・VALENTIA)がセーブしましたが、そのCKから迎えた歓喜。
右高が短く出したボールを、スタメンに抜擢された右SBの小比賀奨(3年・横河武蔵野JY)が鋭いクロス。富樫佑太(1年・ジェファFC)が合わせたヘディングは、完全にヒットしなかったことが幸いしてか、ゴール右スミに転がり込みます。目標はメッシという1年生が「今までもほとんどない。たまたまです」と自ら笑ったヘディング弾。久我山が早くもリードを奪いました。
さて、アドバンテージを握った久我山は、ゴールを上げる前から負傷で出場が危ぶまれながらスタメンで出てきたアンカーの平野佑一(1年・東京ヴェルディJY)、山内、「シンプルにボールを動かしていくことを考えている」という渡辺夏彦(1年・FCトリプレッタ)の3人で構成された中盤が、細かいパスワークを見せるなど、ポゼッションで圧倒。さらに14分には右高がDFラインの裏へ入れたスルーパスに、走り込んだ山内がGKとDFの間に足を出し、わずかに枠の右へ外れるシュートを放つなど、「裏にもどんどんトライしていこうと」(右高)いう意識も高く、攻勢を続けます。
一方の東海大五は、前線のキーマン藤山凌(3年・北九州木屋瀬中)になかなかボールが入らず、守っても相手の細かいパス回しにプレスが空転。16分には相手のパスミスを奪った大石奨悟(2年・FCグローバル)がミドルを狙うも、久我山GK後藤雅明(2年・プレジール入間)がキャッチ。国立の雰囲気もあってか、攻守に持ち味を出し切れません。
18分は久我山。山内とのパス交換から渡辺が左サイドを抜け出し中へ。富樫のシュートはDFに当たり、わずかに枠外。22分、大畑圭輔(3年・柏レイソルU-15)のパスから、右高が1人かわして左足ミドルを繰り出すも、中西がキャッチ。25分、井上大(2年・横河武蔵野JY)のサイドチェンジを右サイドで受けた右高は、巧みなターンから縦に持ち出し、枠へ飛ばしたシュートは中西がファインセーブ。さらに29分、富樫のスルーパスに抜け出したのは左SBの井上。飛び出したGKとの交錯で倒れると、逆にシミュレーションを取られ、イエローカードをもらってしまいましたが、高めに出てきていた相手の最終ラインをSBがブレイクするという狙いを綺麗に体現します。
ところが、わずかにゲームリズムが出てきたタイミングを見事に生かしたのは東海大五。32分、山道淳司(3年・フラッププライドFC U-15)、大石と細かく繋ぎ、佐藤が右へラストパス。柴田錬(3年・浜田第一中)は飛び出したGKを見極めて、サイドネットへ突き刺すコントロールシュート。初めて訪れた決定機を確実に生かした東海大五が、スコアをタイに引き戻しました。
すると、続けて東海大五に絶好機。35分、右サイドから山村欣也(2年・日章学園中)が上げたクロスは、ピンポイントで藤山へ。ワントラップから枠へ飛ばすと、ここは後藤がファインセーブ。こぼれを狙った大石のシュートもDFがブロックしたため、逆転とはいかなかったものの、一気に流れを引き寄せに掛かります。
少し流れが悪くなった久我山は36分、左サイドから斜めに入ったフィードへ飛び出したのは右SBの小比賀。これもGKが飛び出し、結果的に交錯した小比賀がイエローカードを受けることになりますが、「サイドには2人必要で、コンビを創って崩す狙い」と李監督が話し、ウイング的に右へ張る右高も「SBが上がればサイドにパスコースが2つできる」と言及。少し押し込まれながら、裏への脅威をチラつかせた久我山。結局、前半はタイスコアでハーフタイムへ入りました。
後半はスタートから動いた李監督。中盤でアクセントになっていた山内を下げて、白瀧秀斗(3年・ワセダクラブ)を投入。さらに48分には少し傷んでしまった小比賀に替わって、予選までのレギュラー市木良(3年・横河武蔵野JY)がピッチへ。2人の入れ替えが行われます。
50分にはその久我山にチャンス到来。左サイドから白瀧の上げたクロスを収めた右高は左足で枠内シュートを放つと、中西がファインセーブ。そのCKを右高が入れたボールから、最後は大畑がフィニッシュも中西キャッチ。突き放すまでには至りません。
すると、少しずつ落ち着いてじっくり攻撃を組み立て始めた東海大五がペースを掴み、51分には前半から力強いドリブルが目立っていた大石が左サイドを抜け出し、ゴールライン付近から折り返し。DFのクリアが中に入ったボールを安藤瑠偉(2年・北九州浅川中)ボレーで狙い、ヒットしなかったものの好機創出。53分にも柴田のヒールリターンを受けた大石が左足ミドルを枠内へ飛ばすなど、攻撃の手数が明らかに増加。渡辺も「パスが引っ掛かって、繋げなくなってしまった」と話すなど、逆転ゴールが生まれそうな雰囲気すら漂ってきます。
そんな嫌な流れを見事に払拭したのは、やはり10番を背負ったキャプテン。69分、白瀧がボールを持つと「ルックアップした時に目が合った」右高は巧みなフリーランからラインブレイク。GKとの1対1も冷静に制して、勝ち越しゴールを決めてみせます。「たまにはやってよねって感じですよ。久々に彼自身もよかった」と李監督も笑顔。「点を取り返せる自信はあった」エースの一発。残り11分で久我山が今日2回目のリードを奪いました。
点差はわずかに1点。なんとか追い付きたい東海大五は必死の守備。78分にエリア内で富樫が放ったシュートは、DFに当たって無人のゴールへ転がるも山村が懸命にクリア。79分にも渡辺が完全に1人で抜け出し、シュートを狙いましたが中西が捨て身のセーブ。こぼれを拾った右高がコントロールしたシュートも、戻った中西がはたき落とします。
すると81分に迎えた東海大五のラストチャンス。中央、ゴールまでは30m強の距離から藤山が思い切り蹴ったFKは、枠をしっかり捉えるも後藤が必死にセーブ。詰めた新保滉(2年・久山中)のシュートも、キッチリと後藤がセーブ。国立に響いたタイムアップのホイッスル。90回を数えた大会のオープニングアクトは久我山に軍配が上がる結果となりました。
久我山は秋以降でレギュラーを掴んだ平野、渡辺、富樫の1年生トリオが躍動。李監督も「肚の座ってるヤツら」と評して、そのパフォーマンスを称えていました。富樫は「都大会の西が丘は緊張したけど、今日はあんまり緊張しなかった」と話した後、「でもナツ(渡辺)は緊張しやすいんですよ」と笑わせてくれる一幕も。チームとしての"らしさ"を最大限に発揮した先に、国立での勝利が待っていました。 土屋
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