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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全日本大学サッカー選手権大会、通称"インカレ"は今日が準々決勝。2つの会場でそれぞれ2試合ずつが行われ、ベスト4進出チームが決まります。訪れたのは夢の島。メインスタンドからは鉄橋を走る京葉線が望める、個人的にかなり好きなスタジアムです。
第1試合は九州王者の鹿屋体育大学と、東海王者の中京大学。前者の1回戦は新潟経営大学をPK戦の末に何とか振り切っての勝利。後者の1回戦は2人のJリーグ内定選手を抱え、関東4位で出場してきた筑波大学を2-0と一蹴しての勝ち上がり。対照的な初戦となったものの、かなりの好カードと言っていいでしょう。ただ、とにかく寒さが尋常じゃない!クリスマス寒波と言われているようですが、そんなファンタジー溢れる名前は似付かわしくない極寒の中で、ゲームはキックオフされました。
まず、積極的に飛び出したのは中京。開始1分も経たない内にキャプテンの熊澤圭祐(4年・中京大中京)がミドルにチャレンジ。2分にも佐藤和弘(2年・ジュビロ磐田Y)がミドルを放つなど、手数を繰り出します。7分には鹿屋も岩崎司(2年・大津)の左CKがゴール前で密集に。坂田良太(2年・大津)のシュートがネットを揺らしますが、オフェンスファウルの判定でノーゴール。先制ゴールは幻に終わります。
すると11分、早くもゲームに動き。中京が右サイドで獲得したCK。左右両足を自在に操る佐藤か右足で蹴ったボールに、高い打点で合わせたのは熊澤。開始早々から高いゴールへの意欲を発揮していた2人のホットライン。「高さがあるので自信を持っている」と西ヶ谷隆之監督も話したリスタートから、鮮やかに先制点を奪ってみせました。
以降も攻勢はアドバンテージを握った中京。13分、清水貴文(1年・ジュビロ磐田Y)が左からカットインしながら放ったミドルは、ポストとクロスバーのカドカドに直撃。15分、小川真司(4年・東海学園)からのリターンを受けた佐藤が粘り強いキープから、左足で狙ったミドルは枠の右へ。24分、1トップに入った藤牧祥吾(4年・清水エスパルスY)がうまいターンから枠へ飛ばしたロングは鹿屋GK井上亮太(3年・FC東京U-18)がキャッチ。「ウチは守ってばっかみたいに言われると... 攻撃の練習もちゃんとしてるんで」と西ヶ谷監督が苦笑いしながら自軍が持たれているイメージに対して反論したように、シュートへ持ち込む高い意識を証明していきます。
25分には鹿屋も相手のクリアを拾った小谷健悟(1年・神村学園)が枠内ミドルでチーム初シュートを記録すると、26分にも岩崎の左CKから代田敦資(2年・前橋育英)がボレー。ようやくチャンスを創ると、少しずつ中盤での落ち着きを取り戻して、セカンド奪取でも優勢に立ち、ペースを引き寄せます。
35分には代田、坂田と繋いで、左サイドから岩崎が上げたクロスを野林涼(4年・鹿島アントラーズY)が落とし、大瀬拓人(2年・鹿児島中央)に当たったボールはあわやGKの頭上を越える軌道に。36分、大瀬の左クロスは収めた坂田が決定的なシュートを放つも、中京のCB新里亮(3年・岡崎城西)が体を投げ出してブロック。流れは明らかに鹿屋。
ところが、42分に歓喜の声を挙げたのは"名古屋の男"。藤牧、牧野修造(1年・東京ヴェルディY)と細かく回ったボールを、石川誠也(2年・八千代)は素早く右へ。待っていた佐藤は冷静にゴール左スミへ流し込みます。少し苦しい時間帯での追加点。リードが2点に広がりました。
ただ、鹿屋も失点を許しながら流れを手放さず、3分後にチャンス創出。45分、大山直哉(2年・神村学園)の鋭いパスカットから、福田晃斗(1年・四日市中央工業)が左へ展開。小谷のアーリークロスはファーまで届き、フリーの大瀬が豪快なシュートを突き刺します。前半の終盤に激しく動いたゲームは、中京が1点をリードして45分間を終えました。
後半はスタートから両チームが動きます。鹿屋は大山が下がり、鳥栖入団が内定している岡田翔平(4年・FC東京U-18)を前線に投入し、野林がFWからボランチに移ります。一方の中京は「風もあって後半はサッカーが変わってしまうので、アップダウンのサッカーになることを考えて」(西ヶ谷監督)ボランチの牧野に替えて、須崎恭平(2年・ジュビロ磐田)をCBへ送り込み、CBの中田智久(4年・ヴィッセル神戸)がボランチヘ上がります。
53分には岩崎が左から入れたFKに、坂井達弥(3年・東福岡)が合わせたヘディングは枠の左へ。55分、小谷のパスを受けた福田はドリブルからフィニッシュに持ち込むも枠の右へ。続く鹿屋の時間帯。しかし、またも流れを断ち切るゴールは中京に。
60分、左サイドを切り裂いた清水が落ち着いてマイナスに折り返すと、受けた佐藤は冷静に左足でゴールネットを捕獲。「チームのために戦ってくれているので、自然とチャンスが巡ってきている」と西ヶ谷監督も認めた佐藤のドッピエッタで、再び点差は2点となりました。
広げられたビハインドを追い掛ける鹿屋は、65分に左サイドで岡田が福田とのワンツーから、カットインシュートを放つも中京GK奥村佳也(4年・東海学園)がキャッチ。67分に大瀬を下げて、粕川正樹(2年・前橋育英)がピッチに入ると、74分には個の力ではチームで一番通用していた小谷の右クロスが、大外へ走り込んだ粕川にピタリ。しかし、ボレーに持ち込んだ粕川のシュートはヒットせずに力なくGKへ。なかなかゴールまで迫れません。
一方の中京は須崎と新里を最終ラインのセンターで組ませ、ドイスボランチを熊澤と中田で構成したことで「バタバタ感はなくなったと思う」と西ヶ谷監督。2点差が付いてからは63分に石川と中村亮太(3年・中京大中京)を、84分に清水と南部健造(1年・東京ヴェルディY)をスイッチするなど、「選手や布陣など少しチャレンジすることができた」(西ヶ谷監督)中で、確実に時計の針を進めていく試合巧者ぶりを発揮していきます。
86分には中村を起点に石原卓(3年・徳島ヴォルティス)のクロスを藤牧が頭で合わせると、井上と野林が2人で懸命にブロック。87分にもショートコーナーから佐藤の上げたクロスを、またも藤牧が頭に当てるもバーの上へ。最終盤まで「攻撃に対する人数の関わり」(西ヶ谷監督)を貫きます。92分、鹿屋のラストチャンス。山崎が左へ流し、中村は鋭いクロス。坂田が懸命に飛び付いたヘディングは枠の左へ外れ、万事休す。中京が貫禄すら漂わせるようなゲーム運びで、2年連続となるベスト4へと駒を進める結果となりました。
鹿屋で印象に残ったのはスタメン唯一の4年生だった野林。前半はリズムがなかなか出ないチームを最前線から牽引し、後半は中盤センターとして繋ぎにセカンド奪取にと奔走。若いチームをしっかりコントロールしていたように見えました。九州のディフェンディングチャンピオンとして迎える来年度に向けて、野林のメンタリティは必ずや引き継がれていくことでしょう。
中京は中田、石原、須崎と3人の元Jリーガーが揃うなど、経験も豊富な好チーム。どうしても強固な守備面がフィーチャーされがちですが、「東海ではある程度優位に進めるゲームが多い」(西ヶ谷監督)中で培われた攻撃力への自信は、2ゴールが流れの中から生まれたことでも実証された感があります。昨年と同じ舞台へ辿り着くまでは、あと1勝。当然今回の目標はその1つ先の世界。11年ぶりの王座を、確実に中京の視界は捉え始めています。 土屋
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