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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
来年度のプレミアリーグ昇格を懸けて、各地域のプリンス王者が集う参入戦。埼玉スタジアム2002の第2グラウンドと第3グラウンドで計4試合が開催。その勝者となる4チームが、高校年代のトップディビジョンへとステージを移す権利を得ることになります。10時キックオフの第1試合は第3グラウンドの芝生に着席。東海王者のジュビロ磐田U-18と、唯一行われた1回戦で聖和学園を下して勝ち上がってきた北海道王者の旭川実業。ポカポカ陽気の中で、来シーズンの命運を決めるゲームがキックオフされました。
まず先にリズムを掴んだのは磐田。高い位置でボールを奪ってから、素早く前へ付ける形でチャンスを創出。2回の決定樹になりそうなシーンは、共に中野誠也(1年・ジュビロ磐田JY)の足に付き切らず、フィニッシュには繋がりませんでしたが、旭川実業のラインを押し下げます。
16分にも磐田は鋭い出足でボールを奪った左SBのキャプテン望月健伍(3年・ヤマハジュビロ磐田)が、そのままドリブルからチーム初シュートを放つと、19分には鈴木拳士郎(1年・ACNジュビロ沼津)のスルーパスに久保田睦月(3年・マーレFC)が反応。シュートは枠の右へ外れたものの、惜しいチャンス。さらに22分にもカウンターから、左サイドで久保田のパスを受けた中野がカットインから枠内シュート。攻撃の手数は磐田が増やしていく展開になりました。
さて、「夏に磐田と対戦した時はチンチンにされた。蹴られるだろうなというのはあった」と富居徹雄監督が話した旭川実業。序盤はやや全体の位置取りが低かったことと、イージーなパスミスやコントロールミスでのボールロストが多かったために、なかなかリズムが生まれてきませんでしたが、ボールキープに関してはドイスボランチの一角を任されたキャプテンの石山卓哉(3年・スプレッド・イーグルFC函館)を中心に少しずつ回復。とはいえ、シュートを打てるゾーンへは侵入できず、続く磐田の攻勢。
29分には中野、久保田と繋いで、梅村晴貴(1年・ジュビロ磐田JY)のミドルはバーの上へ。35分、金原唯斗(1年・ジュビロ磐田JY)のクサビを中野が落とし、梅村のミドルボレーは再びバーの上へ。45分、前田柊(3年・FC四日市)を起点に、梅村が右へ送ったパスを金原が叩いたシュートは旭川実業GK石川拓磨(3年・岩見沢北村中)がキャッチ。前半は7対0というシュート数が表すように、磐田ペースで45分間が推移しました。
ハーフタイムを挟み、先にチャンスを迎えたのはまたも磐田。46分、高い位置でのボールカットから中野が左足を振り抜くと、ボールは枠のわずかに左へ。50分にも鈴木のスルーパスから久保田が完全に抜け出すも、DFともつれて倒れたシーンにホイッスルは鳴らず。ゴールには至りません。
すると53分、旭川実業に好機到来。山本真司(2年・旭川永山南中)、秋林裕也(3年・プログレッソ十勝FC U-15)と回して右へ展開。奈良創平(2年・ユニオンJY)のクロスは越智伸之(3年・旭川愛宕中)の頭にピタリ。ボールはクロスバーの上へ外れましたが、ようやくチーム初シュートが生まれると、ここから攻守のスイッチが反転します。59分、秋林の左CKに石山が頭で合わせたシュートはゴール右へ。64分、石山が浮かせたピンポイントパスを送ると、越智は巧みなステップでマーカーを外すと、思い切りよくシュート。わずかにクロスバーを越えたボールに越智も悔しさを露にしましたが、一気に流れは旭川実業に傾いていきます。
このことについて、「確かに後半は相手に攻められなくなりましたね」という富居監督は、どうやら「相手は力がしっかりあるので、後半勝負だと思っていた」とのこと。シュートを打てず、劣勢を強いられた前半を焦れずにしっかり凌いだことが、自分たちの流れを引き寄せる要因になったのは間違いありません。
50分以降は1本のシュートも記録されていなかった磐田は、66分に中野を下げて、北川滉平(1年・ジュビロ磐田JY)を左SHに投入。梅村を前線へスライドさせますが、69分に旭川実業も奮闘していた越智に替えて、エースの下田速人(3年・バーモス恵庭FC)を投入すると、より奏功した交替策は後者。全体のボールアプローチも速くなり、セカンド奪取から石山を経由させたサイドアタックや、裏へのフィードが磐田を押し込みます。
しかし、「ウチより選手の能力は全然上」と富居監督も語った磐田にシンプルな一発から決定的なシーン。79分、CBの山本新太郎(1年・ジュビロ磐田JY)がフィードを送ると、走り込んでいた前田はフリー。やむなくGKが飛び出すと、10番はループを選択。ゆっくりゆっくりゴールへ向かったボールは、わずかに枠を外れてゴールの上へ。先制とはならずも、3列目からの飛び出しから相手のこめかみに一瞬でピストルを突き付けてみせました。
すると82分には旭川実業が掴んだ絶好機。下田が相手陣内で果敢にボールを奪うと、右サイドを駆け上がったのは同じく途中出場の伊藤領祐(2年・スプレッド・イーグルFC函館)。強烈なフィニッシュは、しかしサイドネットの外側。スコア動かず。前後半10分ずつの延長戦に両チームの未来が託されることになりました。
スタートから殴り合う延長の幕開け。91分は磐田。久保田のCKからこぼれたボールを鈴木が枠内ミドル。92分は旭川実業。下田が繋いで石山が左へ振ると、秋林のシュートは磐田GK岩脇力哉(3年・FC四日市)がファインセーブ。そしてその時が来たのは94分。下田のショートパスを山本が確実に落とすと、そこにいたのは秋林。ダイレクトで蹴り込んだボールの行く先はゴールネット。選手権予選の準決勝、決勝、そして参入戦1回戦と公式戦4戦連発の秋林を富居監督は「アイツは偶然だけで生きてる。今日もおいしい所をチョロっと持ってっただけ」とまたもぶった斬りましたが、今日は「アイツは意外と伸びてきてますね」という評価も飛び出しました。
とうとうゴールを許してしまった磐田。97分には本多峻弥(2年・Honda FC)を投入して1点を追い掛けます。97分には伊藤の華麗なループミドルも岩脇が懸命に弾き出すと、エンドが替わった103分に千載一遇のチャンス。前田と久保田のパス交換を経て、延長前半から登場した野中涼平(3年・ヤマハジュビロ浜松)がフリーに。枠を捉えたシュートは、石川が守護神の存在感を証明するファインセーブで阻止。終了間際の109分に金原のロングスローから、最後は北川の放ったボレーも枠の右へ。冬空を切り裂いたホイッスルは、全国への祝福音。「やろうとしたことを全員がキッチリやった」(富居監督)旭川実業が、参入戦1回戦からの見事な連勝を達成。北海道2チーム目となるプレミアリーグ出場権を堂々と獲得する結果となりました。
勝因を聞かれて「雪じゃない所でサッカーがやれて嬉しかったんじゃないですか」と答えるなど、かなりユニークな言動の多い富居監督も、やはりこの勝利はかなり嬉しかったとのこと。「こういう試合を旭川で見てもらえるのは大きい。我々が"上"へ向かって試合していることがわかっていただければいいかなと思ってます」とも話してくれました。東北王者と東海王者を撃破した、文句なしの昇格だったのではないでしょうか。おめでとうございます! 土屋
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