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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
4月に開幕した高円宮杯プレミアリーグもいよいよ最終節。泣いても笑っても、すべてがこの1試合で決まります。前節、三菱養和との残留争い直接対決を今シーズンベストとも言うべき内容で制し、降格圏を脱出したFC東京U-18。「Jユースカップに負けてから、チームとしてまとまってきた。この1年間で今が一番いい状態」と倉又寿雄監督。最後のホームゲームにプレミア残留を懸けて戦います。
一方、前節で浦和ユースに敗れ、7月以降守ってきた首位の座から陥落。一転、勝ち点で並ぶ東京ヴェルディユースを得失点差1の差で追い掛ける立場となった2位のコンサドーレ札幌U-18。「3点差を付けて勝つのが今日の目的」と四方田修平監督が話したように、他力ではありますが逆転優勝に向けては得点も取れるだけ取っての勝利が求められます。立ち位置こそ違えど、目の前の勝ち点3を希求する気持ちは一緒。いわゆる"大入り満員"の深川にて、フィナーレを飾るラストバトルは幕を開けました。
先にシュートを放ったのは札幌。5分、トップチーム昇格が決まっている小山内貴哉(3年・コンサドーレ札幌U-15)の出場停止を受けて右SBに入った、こちらもトップ昇格内定の前貴之(3年・コンサドーレ札幌U-15)の左CKを中原彰吾(2年・コンサドーレ札幌U-15)が繋ぎ、神田夢実(2年・コンサドーレ札幌U-15)の放ったミドルはゴール左へ。さらに、よく東京ディフェンスが体を投げ出してブロックしていたために、枠内へ飛んだシュートは少なかったものの、出足で優った札幌が手数も多く繰り出し、早くもゲームの主導権を握ります。
9分には東京も福森健太(2年・FC東京U-15深川)のFKから、相手のクリアを野沢英之(2年・FC東京U-15深川)が右へ振り、石原良将(3年・FCK MARRY GOLD KUMAMOTO)のシュートはDFがブロック。こぼれを再び石原が狙ったシュートはクロスバーの上へ。セットプレーから惜しいシーンを創り出しますが、先にスコアを動かしたのは赤黒の勇者。
10分、左サイドでボールを持った堀米悠斗(2年・コンサドーレ札幌U-15)は「狙った所に打っても入らないが、僕のキックは思い切り蹴ったら無回転になる。GKがよく前に出てくるのはわかってた」とゴールまで35m近くある距離からミドルにチャレンジ。これが素晴らしい軌道を描いて、ゴール右スミへ飛び込みます。「めっちゃ嬉しかったです」と笑顔で語る2年生SBが繰り出したスーパーゴール。逆転での王座奪還へ向けて、札幌が幸先良く1点のリードを奪いました。
以降も、「1点入ってから落ち着いてできた」と堀米も話したように、やや強引にシュートを打つシーンが多かった中で、リードを奪ってからは圧倒的に札幌ペース。近藤勝成(3年・コンサドーレ札幌U-15)と下田康太(2年・コンサドーレ札幌U-15)が確実にポストプレーをこなすことで、「どんどん出ていくのがウチの特徴」(四方田監督)というSBのオーバーラップも活性化。さらにこれで右に神田、左に榊翔太(3年・清水中)を配したSHが「中に入ってルーズなポジションを取ることで、ウチのSBとSHの受け渡しがうまくいかなかった」と倉又監督。
18分には右に流れた近藤の折り返しを、荒野拓馬(3年・コンサドーレ札幌U-15)が1人かわして枠内シュート。22分には東京DFの軽率なロストから、近藤のスルーパスに反応した神田のシュートは東京GK谷俊勲(3年・FC東京U-15むさし)がファインセーブ。24分には東京も左サイドから鴨池陽希(1年・FC東京U-15むさし)が上げた右足クロスを、冷岡幸輝(3年・つくばFC)が頭で合わせるも、わずかに札幌GK阿波加俊太(2年・コンサドーレ札幌U-15)が触るとボールは右ポストに弾かれ、追い付けません。
するとここから札幌が再びラッシュ。24分、東京のバックパスをかっさらった近藤が折り返し、荒野の決定的なシュートは五勝出竣仁(1年・FC東京U-15むさし)が体でブロック。拾った下田のシュートはバーの上へ。26分、右サイドから前が左足で入れたクロスに、フリーの榊が合わせたヘディングはわずかに枠の右へ。29分、堀米が左サイドを持ち上がり、鋭く上げたクロスはDFに当たって左ポスト直撃。30分、神田のクサビを榊がダイレクトで落とし、下田のボレーはGKキャッチ。
止まらない札幌。38分、相手のミスを奪った中原のミドルはバーの上へ。44分、堀米の右CKはDFにクリアされるも、拾って神田、堀米と回し、下田のクロスを神田が狙ったシュートはDFブロック。45分、堀米がゴールまで30m近い距離から直接狙ったFKは、石原がライン上で何とかクリア。4対11というシュート数の比較を待つまでもなく、札幌が一方的に押し込む形で45分間は終了しました。
さて、「前で収める形がなかなか創れなかった」(倉又監督)東京は後半に入ると、右SHの冷岡と1トップに入った岩田の配置を入れ替え、前での基点創りと共に、プレスの強度を高めることで全体のラインをコンパクトに保つことを再徹底。これが奏功する格好で、ゲームとしては「膠着状態が長い」(四方田監督)展開になっていきますが、東京はボールアプローチも速くなり、セカンドの奪取率も互角に近い所まで回復。前半はアレだけ攻め込まれた札幌にチャンスを与えません。
63分には前の、こちらも無回転で飛ばした30m級のFKが枠のわずか左へ外れると、同じセットプレーから東京にとうとう歓喜の時が。65分、右サイドから福森が入れたFKを「不思議とボールが行く」と指揮官も評した石原が頭で折り返すと、飛び込んだのは岩田。今シーズンはなかなか結果を出せなかった18番が最終戦でプレミア初ゴール。1-1。ゲームは振り出しに戻りました。
できるだけ多くゴールを上げて勝ちたい札幌は、失点の前後からややイージーなミスが増えてしまい、FWと周囲の連動性も薄くなり始め、攻撃をフィニッシュで終われません。リズムは少しずつ東京サイドへ。しかし、その前に立ちはだかったのは永井晃輔(3年・コンサドーレ札幌U-15)と奈良竜樹(3年・北見小泉中)のCBコンビ。トップチームのJ1昇格にも貢献した奈良は「彼1人いると全然違う」(四方田監督)「彼はちょっと違うよね」(倉又監督)と両指揮官が声を揃えたように無双状態で、加えてキャプテンマークを巻いた永井も負けず劣らず圧巻のパフォーマンス。東京の浸食を一切許しません。
73分には札幌。前、中原と回り、途中出場の中川雄貴(3年・コンサドーレ札幌U-15)がヒールで落とすと、神田のミドルは枠の左へ。76分は東京。福森が粘ってキープ。橋本拳人(3年・FC東京U-15深川)が繋いで、冷岡のミドルはバーの上へ。78分は札幌。神田のパスから近藤が粘って粘ってシュートまで持ち込むも、DFが何とかクリア。決定機までには双方至らず、ゲームは最後の10分間へもつれ込みます。
そして84分、その時が到来。「集中してどこかでチャンスを狙っていこうと考えていた」(四方田監督)札幌は左サイドでFKを獲得。スポットには前と堀米の両SB。ホイッスル。キッカーは前。右足から繰り出されたボール。飛び込んだ中原のヘディング。揺れたゴールネット。1-2。土壇場で札幌がまたもリードを奪いました。
「他会場の経過はずっと聞きながらやっていた」(四方田監督)札幌は、東京Vユースが負けているという情報を受けて、「勝ち点3を取ることが重要」(同)な戦い方を選択。一方、東京も岸寛太(1年・FC東京U-15深川)、川上翔平(1年・FC東京U-15深川)を相次いでピッチへ送り込み、最終盤は石原と橋本も前線に上げて総攻撃を見せますが、札幌の牙城を揺るがすことはできず、深川に鳴り響いたシーズン最後の長い長いホイッスル。1-2で札幌が勝利を収めます。
それから数十秒の時を経て、他会場の結果が判明。駒沢第二球技場のゲームは、0-1で10位の三菱養和が2位の東京Vユースを破る波乱。「選手、スタッフ、チームとして常に1つになって戦うことができた」と四方田監督が胸を張った札幌が初代イースト王者の称号を獲得。そして東京はわずか勝ち点1の差で9位に転落し、降格が決定。残酷なコントラストがピッチ上に描かれ、白熱の最終節は幕を閉じる結果となりました。
東京は「ずっとメンバーを固定できないままでやってきた。自分で判断する部分が最後まで足りなかったかな」と倉又監督。例年は3年生を軸に割とシーズンの早い段階からメンバーを固定して戦うスタイルでしたが、昨年のレギュラーだった3人の内、橋本はトップチームに帯同。小林聖弥(3年・FC東京U-15むさし)と村松知稀(3年・FC東京U-15深川)もケガなどでスタメンを外れることが多く、最後までメンバーのやり繰りに苦労した感は否めません。それでも「今までやった札幌との2試合は歯が立たない感じだったけど、今日は十分戦えた」と話した倉又監督は「目の前で優勝を見せ付けられた彼らが、どう奮起していくかだね」と最後に一言。舞台は関東プリンスに移りますが、厳しい実戦経験を積んだ1、2年生たちのさらなる成長に期待したいと思います。
見事優勝を決めた札幌も、奈良や前、荒野、榊らはトップチームや年代別代表に招集されることが多く、「常に固定したメンバーは組めなかったが、いるメンバーがよく頑張って成長してくれた」と四方田監督。この日も小山内を出場停止、中盤のキーマンでもあるU-18日本代表の深井一希(2年・コンサドーレ札幌U-15)を負傷で欠きながら、見事な勝利。「層の厚さが今年の強さなのかな」と指揮官も言及していました。
このイースト制覇でサンフレッチェ広島ユースと初代プレミア王者を懸けたチャンピオンシップに臨む札幌。「ヨモさんを胴上げしたい」と堀米。「今まで小学校から大人も含めた全カテゴリーで北海道が日本一になったことはない。イーストでは優勝だけど、まだ"本当の"優勝ではない」と四方田監督。北海道の歴史は果たして書き替えられるのか。17日15時、埼玉スタジアム2002にて日本一を決める最後の1試合がキックオフを迎えます。 土屋
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