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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
今年度からスタートした高円宮杯プレミアリーグ。イーストとウエストにそれぞれ10チームずつが分かれ、ホームアンドアウェイで激突。そして最後は東西のチャンピオン同士が王座を懸けて戦うという、まさに高校年代日本一を決めるビッグタイトルです。今日行われるのは、そのステージで戦う権利を得るための参入戦。各地域の王者が集い、東西それぞれ2つの枠を奪い合う中、1回戦として1試合だけ組まれたゲームで対峙するのは、北海道を制した旭川実業と東北王者の聖和学園。共に高校選手権出場を決めており、「いつもフェスティバルで一緒なので、お互いこういうチームだなってわかっている」(旭川実業・富居徹雄監督)高校同士のゲームは、中立地とも言うべき西が丘です。
先にチャンスを創ったのは旭川実業。6分、下田速人(3年・バーモス恵庭)からの横パスを受けて、奈良創平(2年・ユニオン)が狙ったミドルはクロスバーにヒット。相手ゴールを脅かすと、一方の聖和も13分に反撃。抜群のテクニックを誇る高橋奏太(3年・エスポルチ藤沢)のスルーパスに、ラインを抜け出したのはなんと右SBの土田洸人(3年・A.C AZZURRI)。ここは旭川実業GK石川拓磨(3年・岩見沢北村中)が間一髪でクリアしましたが、14分にもチャンス。斉藤健(3年・サウスユーべFC)が右へ展開すると、小林和仁(2年・ベガルタ仙台JY)は中へ。高橋孝冴(3年・エスポルチ藤沢)はシュートを打ち切れず、越後裕貴(3年・A.C AZZURRI)のシュートはDFにブロックされたものの、続けて好機を迎えます。
立ち上がりから展開を見ていると、旭川実業と聖和は揃って丁寧にボールを運ぶスタイルを志向。「相手のドリブルに付いていくのは大変だった」と旭川実業のキャプテン石山卓哉(3年・スプレッドイーグルFC函館)が話したように、聖和はヒールキックも交えたショートパスや、トリッキーなドリブルを生かして、狭い局面を個人で打開していく形を多用。一方の旭川実業は、しっかりと最終ラインで組み立てながら、ボランチを経由させて右の奈良、左の秋林裕也(3年・プログレッソ十勝FC)と両SHを生かすサイドアタックが目立ち、ややプレーレンジの広い旭川実業ペースでゲームは推移していきます。
するとスコアが動いたのは23分。中央左寄り、ゴールまで約30mの距離から秋林が直接狙ったFKは、無回転のままでゴール左スミに突き刺さるゴラッソ。「アイツは偶然だけで生きてるヤツ」と富居監督が本気とも冗談とも付かぬ真顔で評した秋林の一発が飛び出し、旭川実業が先手を取りました。
さて、前半からビハインドを追い掛ける格好になった聖和ですが、スタイルは変えず、むしろ一層ドリブルが増えていった印象。これが少しずつ旭川実業を浸食し始め、30分過ぎからはペースも聖和へ移行。32分には高橋孝冴のパスから、小林がエリア内で持って持って放ったシュートは石川の正面。33分、藤原元輝(3年・FC Enable)が中央をドリブルで運んでミドルを放ち、ボールはクロスバーを越えましたが、個人技とフィニッシュが結び付き出します。迎えた35分、最もドリブルの冴えていた越後が長い距離を稼いで右へ。高橋孝冴が切り返して打ったシュートはGKが防ぎ、高橋奏太のシュートもDFがブロックしましたが、3度目の正直で押し込んだのは及川知哉(3年・仙台蒲町中)。狙っていたであろう形の結実。スコアはタイに引き戻されました。
ゲームリズムと結果がリンクした聖和。流れは一気に傾くかと思われた矢先に生まれた次のゴールは、しかし旭川実業。42分、パスの出し所を躊躇したGKに猛然と襲い掛かったのはFWの山本真司(2年・旭川永山南中)。焦るGKのキックをカットした山本は、難なくボールを無人のゴールへ流し込みます。「前からどんどんハメるのは1つの狙いだったんで、うまくいった」とは石山。とはいえ、意外な形で旭川実業が再びリードして45分間は終了しました。
嫌な形でまたも1点のビハインドを負った聖和。ハーフタイムを挟んでも気落ちすることなく、後半もスタートからドリブルの圧力で押し気味にゲームを進める中、56分に及川のスルーパスへ抜け出した高橋孝冴が、キープしながら結局シュートへ持ち込めなかったシーンに象徴される通り、なかなか攻撃をフィニッシュで終われなくなっていきます。
この要因は聖和の焦りもあるとは思いますが、一番は旭川実業のディフェンスが確実にドリブルへ対応していたこと。「飛び込んでダメなら、次にやることが変わっていく」とは富居監督。これを石山は「1人目が取れなくても体を寄せて、2人目でしっかり取るようなイメージ」と具体的に説明。しっかり待って、一瞬の隙を見逃さずにつつく形のボール奪取が多く、相手をエリアへ侵入させません。こうなると、聖和もそれまでよりレンジを広げたショートパスや、時には長いボールを織り交ぜつつ何とか反撃を試みますが、精度を欠いてしまい、70分を過ぎても後半のシュートはゼロ。ジリジリした時間が続きます。
そして74分は旭川実業。山本がエリア内で相手DFともつれると、塚田健太主審の笛が鳴り響き、指し示されたのはペナルティスポット。私も最初はオフェンスファウルかなと思いましたが、判定は判定。下田が確実に沈めて3-1。点差が広がります。さらに84分も旭川実業。高い位置で奪ったボールを山本がピンポイントクロス。受けた下田は、トラップから左足でゴール右スミへ送り届けるコントロールシュート。4-1。勝敗は決まりました。
93分、聖和も意地の一槌。中央で両チームの数選手がもつれたこぼれ球を、途中出場の佐藤颯(3年・仙台第二中)が拾い、GKとの1対1も制してゴールネットを揺らしましたが、ファイナルスコアは4-2。かなり特殊なスタイルを持つ相手に、苦しい時間帯もしっかりと耐えながらポイントを押さえた旭川実業が、磐田U-18との決戦に駒を進める結果となりました。
聖和は反復練習を徹底してるんだろうなあというチームでした。狭い局面を創り出し、打開していくスタイルは一長一短でできるものではありません。ただ、今日に関して言うと、"狭さ"を封じられた時の"広さ"を打ち出せませんでした。特に後半はうまく相手にいなされて、焦れたプレーが増えてしまい、持ち味が消えてしまった印象です。それでも、この特異なスタイルは一見の価値あり。選手権での躍進に期待したいですね。
勝った旭川実業は「チームで連動して崩したりする部分が多い」と石山も話したように、非常にまとまった好チーム。4ゴールという攻撃の成果もさることながら、かなり高いレベルのドリブラーを擁する聖和のアタックに、少しずつアジャストしながら特に後半はほとんど自由を与えなかった守備面も素晴らしかったと思います。「やっと土俵に乗った所」と指揮官が表現した磐田U-18戦は2週間後。果たして北海道から2つ目のプレミア参入チームが誕生するのか。注目の一戦は17日の10時より埼玉スタジアム第3グラウンドにてキックオフです。 土屋
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