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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2011年12月19日

高円宮杯プレミアリーグチャンピオンシップ 札幌U-18×広島ユース@埼スタ

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写真[1]saitama s s.jpg埼玉スタジアム2002に舞台を移して行われるのは、高円宮杯プレミアリーグチャンピオンシップ。今年度から新設されたレギュレーションによって、イーストとウエストそれぞれ10チームがホームアンドアウェイのリーグ戦でしのぎを削り、お互いの王者が日本一を懸けてワンマッチで激突します。
先週行われた最終節では、終了間際の決勝ゴールで逆転優勝を遂げたのが、イーストの覇者・コンサドーレ札幌U-18。最終節を残した第17節の時点で優勝を決め、高円宮杯連覇に王手を懸けたのが、ウエストの覇者・サンフレッチェ広島ユース。実は両者は11月27日にJユースカップの準々決勝で対峙。3度札幌がリードを奪うも、3度広島が追い付き、最後は延長で決勝ゴールをマークした広島が劇的な勝利を収めています。つまり「お互いにメンバーややり方は知っている」(札幌U-18・四方田修平監督)チーム同士のファイナル。高校年代最強決定戦は3775人の観衆を集め、広島のキックオフでその火蓋が切られました。
立ち上がりは「ちょっと堅いかなと思った」と広島の10番を背負う左CB藤井貴之(3年・吹田JFC千里丘)が振り返ったように、お互い慎重なプレースタンス。ファイナルの緊張感が一層増していく中、先にチャンスを掴んだのは広島。7分、相手DFのクリアミスを越智大和(1年・四国中央市土居中)が拾って左へ。野口翼(1年・FC古河JY)の綺麗なクロスに、飛び込んだ野津田岳人(2年・サンフレッチェ広島JY)のヘディングはわずかにゴール右へ逸れましたが、坊主頭の1年生2人でファーストシュートを演出します。
9分には札幌も近藤勝成(3年・コンサドーレ札幌U-15)がドリブルシュートを放ちますが、以降のペースは広島に。13分、野津田のフィードに越智が抜け出すも、札幌GK阿波加俊太(2年・コンサドーレ札幌U-15)が飛び出して何とかクリア。15分、ボランチの川辺駿(1年・サンフレッチェ広島JY)がフィードを送ると、越智が繋いで、末廣浩暉(2年・ハジャスFC)のシュートは札幌のキャプテン永井晃輔(3年・コンサドーレ札幌U-15)が体でブロック。22分、平田惇(2年・サンフレッチェ広島JY)のフィードに追い付いた越智が、強引にボレーを放つもボールはクロスバーの上へ。
基本はボランチの平田が、トップでいう森崎浩司や中島浩司と同じ役割の"最終ラインに下りてビルドアップの起点になる"を行い、パスワークをベースにするのが広島のスタイルですが、このフィードの多用に関しては「SHを使うかトップを使うか考えていたけど、SHにはしっかり相手が付いていたんで、簡単に裏を狙った」と平田。また、「Jユースカップの時にやられていたカウンターだけは意識していた」とは中盤右サイドの森保圭悟(3年・サンフレッチェ広島JY)。攻撃面では前者、守備面では後者が語ったことが、20分前後までシンプルにCFの越智を走らせる形が多かった理由のようです。
逆にそのカウンターという武器を封じ込められていた札幌が、突如として解き放たれたのは24分。堀米悠斗(2年・コンサドーレ札幌U-15)、中原彰吾(2年・コンサドーレ札幌U-15)と繋がり、ドリブルから右へスルーパス。上がってきたSBの小山内貴哉(3年・コンサドーレ札幌U-15)はシュートを打たずにリターン。フリーの下田康太(2年・コンサドーレ札幌U-15)がフィニッシュも、そのボールに体ごと飛び付いたのは広島の右CB柳川剛輝(3年・サンフレッチェくにびきFC)。「普通のチームならやられてるシーン」(森山佳郎監督)で、広島も文字通り体を張って失点を回避。見応えのある攻防となりました。
この辺りから、縦のボールに対するケアができてきた札幌は「守備をコンパクトにできている時間が長く、安定した戦い方ができた」(四方田監督)ために、ゲームはやや膠着。35分には再び札幌。やはりカウンター気味の速い展開から、左サイドをドリブルで持ち上がった榊翔太(3年・清水中)がクロス。下田が潰れ、近藤の前におあつらえ向きのボールが流れてくると、ここもシュートに藤井が体を投げ出し、枠までボールを届かせません。この24分と35分のプレーは広島にとって「こっちに流れが来た1つの大きな要因」と森山監督。
その通り、前半の終盤は広島のラッシュ。42分、平田を起点に柳川が右へ回し、森保の鋭いクロスを川辺がダイレクトで叩いたボレーはクロスバーにヒット。44分、右サイドで森保に預けて回った柳川のクロスは、中でまったくのフリーになった末廣が頭で合わせるも阿波加の正面。45+1分、ゴールまで40m近くはある距離から森保が直接狙った無回転FKは揺れて急降下。阿波加が辛うじて弾き出したものの、ざわめくスタンド。「こっちのペースに持っていけた」と藤井も話したように、前半は広島優勢で45分間が終了しました。
後半も先に決定的なシーンを創出したのは広島。47分、森保の左FKからサイドに流れた越智がクロス。最後は末廣がシュートに持ち込み、阿波加がファインセーブで阻むも勢いは持続。すると48分にゲームの分岐点。脇本晃成(3年・サンフレッチェ広島JY)が右へ展開すると、森保はシンプルに縦へ。野津田がドリブルで突っ掛けると、DFと交錯しながら転倒。少しプレーが続いた後で、中村太主審はホイッスルを吹き、PKを指示します。これには「何でPKなのかよくわからない」と四方田監督も話しましたが、当然判定は変わらず。キッカーはホイッスルが鳴った瞬間からボールを離さなかった野津田。「自分で3年生に優勝をプレゼントしようという気持ち」で蹴ったキックは確実に右スミへ。広島が先制ゴールを奪取しました。
嵩に懸かる広島。51分、右CKを獲得すると野津田は素早く中へ。マーカーを確認する間もなかった札幌は一瞬混乱すると、ファーに飛び込んだのは「相手が整っていない内にやろうと言っていた」と話した藤井。10番のCBが2点目を鮮やかに強奪。点差が広がりました。
さて、「少し平常心を失った所」(四方田監督)で連続失点を喫した札幌。55分には小山内を下げて、「足がかなり消耗していて30分が限界」という深井一希(2年・コンサドーレ札幌U-15)をボランチに送り込み、堀米が左SBへ、前貴之(3年・コンサドーレ札幌U-15)が右SBへスライドします。59分には、堀米のラストパスから榊が思い切り良くシュート。61分にも榊のパスから堀米が鋭いアーリークロス。FC東京U-18との最終節でも躍動した榊と堀米の左サイドコンビが、チームに推進力をもたらしたタイミングで、しかし次に生まれたゴールも広島。
63分、川辺が自陣でパスカットすると右へ。末廣のサイドチェンジを野口はダイレクトパス。左から野津田が長い距離を運んで右へ。平田がDFともつれたボールは走り込んだ末廣の足元へ転がり、難なくゴール右スミへ流し込みます。「気持ちが強い方にボールは転がってくるって、いつも選手に言っている」指揮官の言葉の証明。ファイナルは後半だけで3点差となりました。
「失点した後のメンタリティでバランスが崩れた」(四方田監督)札幌は66分、近藤に替えて中川雄貴(3年・コンサドーレ札幌U-15)を送り込み、前線の活性化を図りますが、「奪われてから5秒はプレスをかけようと話していた」(藤井)広島の統率された守備網に穴を開けられません。この時間帯に見せた広島のゲーム運びも磐石。「攻守の切り替えを"究極"に速くする」(森山監督)ことで、74分には平田のパスから藤井がミドルにチャレンジ。80分には途中出場の宮原和也(1年・サンフレッチェ広島JY)がドリブルから、わずかにバーの上を越えるミドル。シュートシーンを創り続けます。
何とか意地を見せたい札幌も、終盤に入って「リスクを恐れず捨て身で」(四方田)前へ出る姿勢を表出。85分には前、荒野拓馬(3年・コンサドーレ札幌U-15)、下田と細かく繋ぎ、リターンを受けた荒野がカットインから放ったシュートは枠のわずかに左へ。そして87分、堀米が相手陣内でのパスカットからドリブルで運んで右へ。中原のコントロールシュートは綺麗にゴール右スミへ収まり、一矢を報いることに成功しますが、これが精一杯の反攻。
「試合に出られない3年生の分も最後まで自分の力を出し切ろうと思って走った」(野津田)という1、2年生と、「気持ちのチームなんで死ぬ気で走るしかない」(藤井)3年生の、「37人すべての選手が優勝したいと思っていた」(森山監督)広島が戴冠。高円宮杯連覇と高円宮杯プレミアリーグ初代王者に輝く結果となりました。
敗れた札幌は、チームのストロングでもあるサイドバックのオーバーラップを消されてしまいました。「相手の2番(右SBの小山内)のオーバーラップを野口とうまく抑えられた」とは広島の左CB藤井。深井の投入時に下がったのがその小山内だったことも、このゲームを象徴していたのではないでしょうか。ただ、「開き直って1つでも返そうという姿勢を見せてくれた」と四方田監督。イースト王者として1ゴールを返したことが、きっと来年に繋がるはず。北海道初となる日本一は後輩たちに託されました。
広島は「力が物凄いあっていいチームでした」と敵将も認める強さを、この大舞台でしっかり発揮しました。そして「仲間に対する気持ちがすごく強いチーム」と森山監督も触れたように、いずれの選手からも「3年生最後の大会だったので、この最高のチームでタイトルを獲れたのは本当に嬉しい」と平田が話してくれた"3年生最後の大会""最高のチーム"というフレーズが口を衝いていたのが印象に残っています。「ウチは誰1人あきらめたり、モチベーションを落としたり、投げやりになったりする選手がいない」と胸を張った森山監督。そして「素晴らしい人で感謝しかない」(藤井)指揮官を胴上げしたいという選手の想いの強さ。"気持ちには引力がある"というチームの合言葉。選手たちにとって"引力"とは森山監督その人のことを表しているのかもしれません。   土屋

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