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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2011年12月29日

天皇杯準決勝 横浜FM×京都@国立

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201112300258000[1]fmsanga.jpg元日への最終関門は天皇杯準決勝。あと1つ勝利を積み上げれば、2012年最初の王者を懸けて行われる国立決戦の舞台に立つことができます。準々決勝ではGK飯倉大樹の奮闘もあってPK戦の末に難敵・名古屋を攻略し、19年ぶりの決勝進出が見えてきた横浜FM。一方、山形、鹿島とJ1勢を続けて撃破し、準々決勝では同じJ2の湘南をねじ伏せて、8年ぶりにここまで勝ち上がってきた京都。カテゴリーの違う両者は今シーズン初めてとなる顔合わせです。
キックオフ前には4つのビッグフラッグをはためかせ、ホームゴール裏を占拠した横浜サポーターに対し、人数は少ないながらも「数の問題ではないですね。ハートがあるかないか。十分届いていた」と大木武監督も話したように、大音量の声援を送ったアウェイゴール裏の京都サポーター。素晴らしい雰囲気のセミファイナルは、京都のキックオフで激闘の幕が上がりました。
まずは2分、京都が左サイドで得たCKは加藤弘堅がショートで始めると、中山博貴が中へ。クリアしたボールを、今度は横浜が右サイドからカウンター。最後は小椋祥平が枠を越える、このゲームのファーストシュート。いきなり切り替えの速い攻撃を横浜が繰り出します。
8分には加藤の右CKに森下俊がヘディング。わずかにバーを越えたものの、京都もセットプレーからチャンス創出。ただ、「立ち上がりはちょっと堅かった」と中山が話したように、国立でのプレーは初めてという選手もいた京都は持ち前のパスワークになかなかスイッチが入らず、ドリブルもことごとく引っ掛けられるなど、流れの中からはシュートに結び付くシーンを創れません。
逆に「スカウティングではもう少し時間を創れないと思っていた2トップが良く、時間を創られた間に裏を取られるシーンがあった」と大木監督が触れた通り、横浜は渡邉千真と小野裕二へシンプルに入れて、そこからサイドやラインの裏へ展開という流れも多く、攻勢に出ていきます。
さらに、もう1つの横浜優勢かつ京都劣勢の要因について「すぐファウルを取られて、自分たちがボールを取れなかった。FKが多過ぎる」と大木監督。確かに15分、20分とセットした状態から中村俊輔がFKを蹴り入れ、後者は栗原勇蔵がわずかに枠の右へ逸れるヘディング。26分、30分にもやはり中村が右サイドからFKを蹴り込むなど、中澤佑二、栗原、谷口博之、渡邉と180センチを超えるターゲットをズラリと並べた横浜は、ストロングを最大限に生かせる展開を享受します。
そんな中、ワンプレーで流れは逆転。32分、ドゥトラからボールを受けた工藤浩平は溜めてスルーパス。宮吉拓実のシュートは中澤が防ぎ、こぼれも中澤が体を投げ出してドゥトラにシュートを打たせませんでしたが、「30分過ぎまで堅かった」(工藤)チームが一気に解凍。35分には福村貴幸、工藤、ドゥトラと細かく繋ぎ、工藤が右へ展開したボールを、SBの安藤がフィニッシュまで。37分にも宮吉が中村充孝との連携から決定機を掴み、飯倉のファインセーブに阻まれましたが、完全にゲームの波は京都へ。
38分、中村の左CKを最後は秋本倫孝が頭で合わせるも、飯倉はほとんどライン上で掻き出すスーパーセーブ。さらに右からのクロスがこぼれると、秋本のミドルはクロスバーを直撃。これを拾った加藤のシュートは左ポストを直撃。数十秒間で3度の決定機を迎えた京都。39分、右から上がった安藤のピンポイントクロスを、ドゥトラが合わせたヘディングは、至近距離にも拘らず再び飯倉が超ファインセーブ。猛攻が続きます。
ところが、そんな苦境を一発で打開したのはやはりあのレフティ。42分、水谷雄一のゴールキックを栗原が跳ね返すと、拾った中村は1人かわして"針の穴"スルーパス。抜け出した渡邉は水谷を冷静に外すと、無人のゴールへ流し込みます。ほとんど予感のないような局面を劇的に変える中村の一刺し。京都にすれば「いいリズムが出てきたかなという所での失点」(安藤)。サッカーの定説のような展開で、横浜がリードを奪って前半は終了しました。
後半に入ると、いきなり動いたスコア。50分、カウンターから工藤が縦へ付けると、ドゥトラはヒールでリターン。自陣からドリブルで持ち込む工藤。「宮吉がいい動き出しをしてコースが空いた」隙を見逃さず、エリア外から左足を振り抜くと、ボールはゴール右スミの凄まじいコースへ吸い込まれます。自ら「練習でもあまり入らないようなゴール」と評したスーパーな一撃。京都が鮮やかに追い付いてみせました。
振り出しに戻ったゲーム。京都は持ち前のパスワークが回復し、右サイドが活性化したことで攻める時間は増えたものの、アタッキングサードへは踏み込み切れず、数分間の攻勢から展開はまたも横浜のセットプレー連発の流れに。59分には左寄り、ゴールまで30m近い距離から中村が直接狙ったFKはカベに直撃。60分、61分は中村の連続CKを京都DFが共にクリア。64分、カウンターからのドリブル突破を秋本にイエローカードが提示されたファウルで止められた中村が、自ら入れたFKはDFがクリア。67分には流れの中で、中村がとんでもない体勢から正確な浮き球スルーパス。兵藤慎剛の折り返しに渡邉が左足ボレーを放つも、わずかに枠の左へ。69分、中村の左CKから渡邉が当てたヘディングはバーの上へ。とにかくノートに踊る中村の文字。
72分、同点ゴール以降は1本のシュートもなかった京都はドゥトラがドリブルから倒され、FKのチャンス。ゴール右寄りは明らかにレフティのスポットでしたが、蹴る前から意欲が漲っていたドゥトラ。やはりそのブラジル人ストライカーが繰り出した右足のキックは、7枚のカベを一瞬で無力化するとゴール右スミへ突き刺さるスーペルゴラッソ。後半最初に掴んだセットプレーを京都が一発で生かし、とうとう逆転に成功しました。
一転、追い掛ける展開を余儀なくされた横浜は72分、好調の小野を下げて松本怜を投入。79分には右サイドで安藤とのパス回しから工藤が絶妙のクロスを送り、ドゥトラのシュートがクロスバーに阻まれる幸運を得ると、80分にビッグチャンス。中村が左サイドから入れたアーリークロスに、兵藤がダイビングヘッドで応えましたが、ここは水谷が指先でファインセーブ。スコア動かず。
木村和司監督も勝負の采配。82分には谷口を下げて大黒将志を送り込み、86分には金井と青山直晃も入れ替え、3-4-1-2気味で最後の反攻。アディショナルタイムは4分。93分には小林祐三のクロスを、負傷の秋本に替わって89分から登場した内野貴志が明らかにハンド気味のバックパスを繰り出すも、佐藤隆治主審はノーホイッスル。ベンチから飛び出す横浜の選手やスタッフ。ツキもありません。
しかし、待っていた土壇場でのドラマ。中村の左クロスを栗原が落とすと、中澤が左足で枠内へ。水谷は懸命に体でセーブしましたが、詰めていたのは大黒。まさに執念の同点弾は94分10秒。直後に後半の終了を告げるホイッスル。すっかり陽も落ちた国立のセミファイナルに、さらなる30分間が書き加えられることになりました。
「サッカーの神様はよく見てますね。内野はハンドでした。ゴールを取られるのはフェアかもしれないです」と語った大木監督。ただ、「正直負ける気はしなかった」という指揮官は追い付かれて戻ってきた選手を前に、まず内野へ「オマエ、ハンドだ」と声を掛けたとのこと。「これはフェアだ。だからあの失点は仕方ない。あと30分やればいいじゃないか。何の問題もない」と続けたそうです。「みんなポジティブな気持ちで延長に入れた」とは中山。「延長に入る前の雰囲気にはグッと来た」とは工藤。笑顔すら見えた京都の円陣。
やや押され気味の延長前半を凌ぎ、104分には大木監督も3枚目の決断。「ドゥトラはかき回すことはできるが、そこから点になるかどうかは割とパーセンテージは低い。そこは数段久保の方が高い」 と、5日前に18歳の誕生日を迎えたばかりの高校生を最後の切り札として投入します。
113分には中村のピンポイントFKから、大黒がフリーで放ったヘディングは今日何回目かわからなくなる程に当たったクロスバーへヒット。ようやくゴールの枠を味方に付けた京都に訪れた歓喜は116分。中盤のルーズボールを抜け目なく拾った工藤は、狭いスペースへ「決めてくれ」というスルーパス。「裏に抜け出すのは意識していた」久保はワンタッチで右へ持ち出すと、飛び出した飯倉をものともせずに堂々とゴール左スミへボールを滑り込ませます。「出たら絶対にやってやろうと思っていた」18歳が大仕事。残り4分で京都が今日2回目のリードを手に入れました。
そして、ゲームを締め括ったのもユース育ちの若武者コンビ。120分、中村の右CKを森下は左へ大きくクリア。久保が左サイドを50m近く駆け上がって中へ折り返すと、右サイドを70m近く駆け上がってきた駒井善成がプッシュ。「怖いもの知らずでグイグイ行ける」(中山)強みが最後の最後で爆発した京都が真っ正面から横浜を倒して、1月1日の国立へ歩みを進める結果となりました。
結果論ですが、延長に入った時点で勝負は決まっていたのかもしれません。既に契約満了が発表されており、チョン・ウヨンの出場停止を受けてスタメンに入った加藤は、延長に入る時の様子を「ベンチに戻ったら「これで終わったら面白くないだろ。あと30分楽しんでこい」と大木さんに言われて、純粋にサッカーを楽しもうという気持ちで入れた」と話しています。潔く失点を受け入れてチームを鼓舞した指揮官と、「のびのびとサッカーを楽しむ中で」(工藤)結果を出した選手たち。勝利の瞬間に号泣してしまったという加藤は「みんなにまだ優勝してねえぞって言われました」と笑顔を見せてくれました。「最後まで来られて、サッカー人としてこんなに幸せなことはない」と大木監督が話したファイナルは、古都と首都の元日決戦。舞台は整いました。       土屋

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