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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
9月17日に開幕した一次予選を皮切りに、約2ヵ月間の激闘をくぐり抜け、聖地・敷島へ辿り着いた2つのファイナリスト。現在5連覇中。インターハイでも全国ベスト8に入るなど、今や高校サッカー界で確固たる地位を築いている"タイガー軍団"前橋育英。草津への入団が内定している横山翔平(3年・図南SC群馬)や、昨年度もレギュラーを務めていた白石智之(3年・前橋FC)をはじめ、基本技術の高い前線の4人が見せる、流動性の高いアタックに注目が集まります。
対峙するのは、4年前と6年前にインターハイで全国を経験。3度目の挑戦となる選手権のファイナルに、初めての育英越えと冬の戴冠を同時に狙う桐生第一。U-17ワールドカップ日本代表の鈴木武蔵(3年・FCおおた)は負傷や代表などでなかなかチームでの出場機会を得られませんでしたが、今日は「先週のトレーニングから良くなってきたが、スタメンは"賭け"」と小林勉総監督が言及したように、意外にもスタートからの登場と役者も勢揃い。20.2度と汗ばむような秋の敷島。メインスタンドはほぼ埋まり、観衆の熱気が溢れ返る中、育英のキックオフでラストゲームの火蓋が切って落とされました。
先に攻勢へ出たのは、やはりと言うべきか育英。1分に横山のショートコーナーからファーストシュートを記録すると、4分にも左と右から共に横山がCKを蹴るなど、サイドアタックからチャンスを創出。ポゼッションでも圧倒して、さすがの貫禄を見せ付けます。
それでも、先に決定機を掴んだのは桐一。9分、左からキャプテンの金田理央(3年・前橋ジュニア)が蹴ったCKに、鈴木がドンピシャのタイミングで合わせたヘディングは育英GK川原雅之(3年・前橋FC)がファインセーブ。さらに11分には磯部亮太(3年・ヴェルディSS小山)の右FKに、横堀勝也(3年・前橋ジュニア)の巧みなバックへッドはわずかにバーの上へ。「入りは悪くなかった」と小林総監督も認めたように、桐一もセットプレーから好機を生み出します。
12分には育英もキャプテン新谷佳紀(3年・FC東京U-15深川)が蹴ったFKから、齋藤祐志(3年・前橋FC)の狙ったミドルが左ポストを直撃するなど、あと一歩のシーンがありましたが、この直後くらいからはシンプルに鈴木を使い始めた桐一にリズム。
19分には吉森恭平(2年・ヴェルディSS小山)のスルーパスを受けた鈴木が溜めて、中へ折り返したリターンは吉森が打ち切れず。22分にも池田稔樹(3年・図南SC群馬)の縦パスに反応した鈴木が、抜群のスピードでDFと入れ替わり、シュートは枠へ飛ばなかったものの、スタジアムに充満する鈴木への期待感と本人の好調さも相まって、桐一がゲームを動かしていきます。
ところが、そんな矢先に流れを噛み切ったタイガーの牙。23分、白石のラストパスにフリーで抜け出した外山凌(2年・東京ヴェルディJY)のフィニッシュ。桐一GK鯨井拓真(3年・クマガヤSSC)もよく弾きましたが、こぼれを齋藤がキッチリとプッシュ。勝負所を逃さない辺りは、さすがに絶対王者。育英が鮮やかに先手を取りました。
こうなると余裕の生まれた育英が、しっかりボールを回しながらギアを上げるスイッチを窺うような展開に。34分には白石のクリアをフリーで拾った外山が、左へ流れてクロス。これまたフリーになった横山のシュートは鯨井の正面。37分、左サイドを持ち上がった横山の右足シュートは枠を捉え、鯨井が何とかセーブ。
38分には桐一も金田、横堀、池田と短く繋いで、上がってきた右SB古沢圭希(3年・茨城ウエストサイドSC)のシュートが枠の左へ外れるチャンスを創りましたが、40+1分にも育英は右サイドで山本裕天(3年・東京ヴェルディJY)と高森翔太(3年・クマガヤSSC)が絡み、白石が枠内ミドル。前線の迫力で上回った育英が主導権とリードを手にして、最初の40分間は終了しました。
後半もスタートから育英はフルスロットル。41分、左サイドのスローインから外山が繋いだボールを、横山は綺麗なボレーで枠へ飛ばし、鯨井がファインセーブ。42分、廣瀬慧(1年・柏レイソルU-15)を起点に齋藤を経由する流れから、横山のシュートは鯨井セーブ。10番を背負ったレフティが躍動します。
すると43分、右サイドでここも横山がショートコーナー。白石のリターンをもらい、ドリブルでエリア内へ突っ掛けると桐一DFはたまらずファウル。育英にPKが与えられます。キッカーを託された新谷は、冷静にGKの逆を突いて左スミへ。2-0。今年度、Aチームで臨んだ県内の公式戦では、7試合でわずかに1失点しか喫していない育英の2点リード。桐一はかなり苦しい展開を強いられることになりました。
小林総監督の決断は49分。「白石が怖かったので」本来はCBながら右SBに置いていた古沢圭希をボランチに移し、ボランチの金田が1トップ下へ。そして吉森に替えて、準決勝まではスタメンだった宮崎陽(3年・FC前橋)を右SBへ投入。さらにスタートは左SHに位置し、後半は1トップ下へ入っていたレフティの池田を「アイツはキーポイント。武蔵と逆のサイドに置いて、一発で仕上げられれば」と右SHへ。攻撃的にシフトして勝負に出ます。
56分に白石の左FKがゴール前の混戦を呼び、小川雄生(2年・前橋FC)が至近距離から放ったヘディングは、鯨井が驚異的な反応で掻き出して3点目を阻止すると、58分には桐一にFKのチャンス。中央右寄り、ゴールまで25m強の距離から金田が直接狙ったボールはクロスバーを叩き、GKの頭に当たってピッチ内へ。ツキもありません。
頼みの鈴木にもボールが入らず、流れの中からはシュートも打てない桐一。しかし、ゲームの流れを大きく左右する判定は68分。バックスタンド側で育英の選手がファウルを犯すと、主審はイエローカードを提示。これが2枚目となり、育英は10人での戦いを余儀なくされます。
2分後、早くも桐一に傾いた流れ。左サイドでボールを持った横堀がアーリークロスを入れると、走り込んだ池田のバックヘッドは、緩やかな軌道を描いてゴール右スミギリギリに吸い込まれます。後半に入って初めて流れの中から創った決定機が結実。2-1。風雲急を告げる敷島。
71分、山田耕介監督は齋藤を下げてCB起用の多い李正洙(3年・前橋FC)をボランチへ投入。74分、小林総監督は横堀に替えて、同じくアタッカータイプの伊東一樹(3年・FC東京U-15深川)をピッチへ。共にカードを切り合うも、一度傾いた勝負の流れは変わらず。77分、左サイドで古沢友希(3年・茨城ウエストサイドSC)は素早くスローイン。受けた金田はドリブルで縦へ持ち出すと、「スペースが見えたので、落ち着いて合わせるだけ」の折り返しを中へ。全速力で走り込んできた弾丸は宮崎。丁寧に、豪快に揺らしたゴールネット。「アイツは幼稚園からウチのスクールにいたヤツだからね」と笑った指揮官の愛弟子が土壇場で大仕事。2-2。青龍が虎を一気に飲み込み、ゲームは振り出しに引き戻されます。
まさかの展開に動揺を隠せない育英は、アディショナルタイムに獲得した絶好の位置からのFKも、横山が狙ったシュートはクロスバーの上へ。80分間で決着つかず。白熱のファイナルは、さらに20分が追加されることになりました。
迎えた延長は数的優位に立つ桐一がラッシュ。82分、磯部の左CKをファーで金田が枠へ飛ばすボレー。83分、金田とのワンツーで右サイドを崩した池田のクロスに、鈴木は頭から飛び込むも、完全にはヒットせず。同じく83分、鈴木からパスを受けた池田の丁寧な折り返しを、磯部が狙ったミドルはわずかにゴール左へ。「相当走り込んでいたので、走り負けないとは思っていた」 と金田。敷島のピッチを青く染めた桐一。
そして89分、右サイドで獲得したFK。1人がキックフェイントで一瞬のズレを創ってから蹴られた磯部のキックは、ズラした間に大外へ回り込んだフリーの池田へ。頭で落としたボールを金田がシュート。一度は川原に弾かれたものの、再び食らい付いた金田は冷静にプッシュ。「2度とできなくなるかもしれないので隠してた」と小林総監督が笑い、金田も「練習していた通りだったけど、こんなにハマったのは初めて」と明かした「一撃必殺の大技」(小林総監督)がここで飛び出し、2-3。とうとう桐一がゲームを引っ繰り返してしまいました。
数的不利にビハインド。延長後半も91分、93分、98分、99分といずれも鈴木に決定的なシーンを創られるなど、孤高のタイガー軍団に反撃する余力はなく、100分を回って山田悠太(3年・前橋FC)の入れたスローインを新谷が懸命に頭で繋ぎ、こぼれを叩いた齋藤のボレーもクロスバーの上へ。直後、敷島の青い空へ吸い込まれたホイッスル。一次予選から勝ち上がってきたノーシードの桐一が、とうとう悲願とも言うべき"育英越え"を達成しての戴冠。群馬の高校サッカー界に新たな王者が誕生する結果となりました。
サッカーというのは本当にわかりません。「力の差はありましたよ」という小林総監督の言葉を待たずとも、両者の間に小さくない実力差があったのは間違いない所。それでも1つの退場を境に、指揮官やこれまでの歴史も含めて、あれだけ経験のあるチームが、抗えない波に飲み込まれていく姿を見ると、改めてこの競技の怖さを思い知らされました。「全国では1つでも2つでもいいピッチでプレーして、いい思い出を作って欲しいですね」と話してくれた小林総監督。群馬の新王者として、全国での躍進を期待したいと思います。 土屋
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