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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2011年11月20日

J1第32節 清水×柏@アウスタ

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写真[1]ousta.jpg鮮烈の黄。貫徹の青と黒。圧倒の赤。3つの異なる勇者に絞られた優勝争い。昨日のゲームでG大阪は新潟に痛恨のドロー。名古屋は粘る横浜FMを終盤に突き放して勝ち点3を奪取し、得失点差で暫定首位へ。そして今日、敵地・日本平に乗り込むのは柏。「G大阪と名古屋が勝ってもそうでなくても、我々には影響しない」とはネルシーニョ監督。太陽王からすれば、残り3戦全勝で文句なしの戴冠。勝ち点9を獲得するための270分間は、素晴らしい雰囲気の日本平からスタートします。
ゲームは最終ラインからしっかりビルドアップしていく清水にまずはリズム。5分、ヨン・ア・ピンのサイドチェンジを受けて、左サイドを枝村とのパス交換で抜け出した太田の鋭いアーリークロスは近藤が何とかカット。10分、大前、ユングベリと繋いで、アレックスとのワンツーから枝村のシュートはヒットせず。16分、右サイドで村松のロングスローから大前を経由して、最後は高原のダイレクトボレーが枠の左へ。相手ゴール前を脅かします。
清水はCBの岩下とボスナーも基本はフィードより前へのクサビやショートパスが目立ち、そこへ中盤の3枚が絡んでいく形は流動的かつ有機的。「なかなかボールの取り所が見つからなかった」と柏のボランチを務める大谷が話したように、高いポゼッションからピッチの幅をうまく使い、攻勢の時間が続きます。
対する柏は「イメージよりピッチの芝が長く、デコボコしていたのでロングボールが増えてしまった。もうちょっとゆっくり攻めてもよかったかもしれない」と栗澤。頼みのレアンドロ・ドミンゲスとジョルジ・ワグネルもややミスが目立ち、縦へのスイッチがなかなか入りません。
また、守備面でネルシーニョ監督は「中盤でヨン・ア・ピンをフリーにさせてしまい、捌かせて流れを創られてしまった」と言及。これには大谷と栗澤のドイスボランチも「結構高い位置までヨン・ア・ピンが動いてきたので、捕まえ切れなかった」と声を揃え、15分過ぎにはFWの工藤を左SHに移し、ワグネルを中に入れて「ほぼマンツーマン気味にヨン・ア・ピンに当てる」(ネルシーニョ監督)4-2-3-1へシフトします。
ただ、ボールキープ率はやや落ちたものの、手数の多さは変わらず清水。23分、ヨン・ア・ピン、アレックス、ユングベリと細かく回し、高原の左クロスに枝村が倒れながら合わせたヘディングは菅野がキャッチ。31分、左サイドからユングベリのアーリークロスに、フリーで走り込んだ枝村はわずかに触れず。35分には柏もレアンドロが中央をドリブルで運び、左のワグネルを囮に放ったミドルが枠のわずか左へ外れる決定機を創りましたが、40分は再び清水。高原の粘り強いキープから、太田のクロスにまたも枝村が合わせたヘディングは菅野キャッチ。枝村が3度目のフィニッシュワークと、2列目からの飛び出しを有効に使います。
すると43分に日本平を包んだ驚愕。ユングベリの鋭い反転でスタートしたドリブルから奪ったFK。ゴールまで30m以上はある距離からボスナーが左足一閃。音速の弾丸は菅野も弾き切れず、枠の右スミを撃ち抜きます。衝撃の2戦連発FK弾。柏のカベの作り方が曖昧だったことを差し引いてもとんでもないゴールが飛び出し、清水1点リードで45分間が終了しました。
ネルシーニョの決断は後半開始からの2枚替え。「ハーフタイムで考えをまとめて、あそこは澤が適任だという判断」から、北嶋を下げて澤を1トップ下に投入し、ワグネルが左へ戻り、工藤の1トップに。さらに「彼は非常に効いているボランチなので、イエローカード2枚で失ってしまうことは非常に危険」と、失点時のFKに繋がるファウルでイエローカードをもらっていた栗澤と茨田もスイッチ。人と配置を入れ替えて臨みます。
後半も先に決定機を迎えたのは清水。49分、ワグネルの緩慢なプレスを潜った村松はまったくのフリーからドリブルクロス。中央で増嶋を外した大前のシュートは、コースに入った菅野が胸でビッグセーブ。いきなり追加点のチャンスを掴みます。
柏も51分はレアンドロ、55分はワグネルとFKのチャンスがありましたが、共にGKがキャッチ。56分、FKの流れからユングベリとのワンツーで右サイド深くへ侵入した大前は、トリッキーなドリブルでエリア内へ切れ込み、茨田とのコンタクトで転倒するも、高山啓義主審のホイッスルは鳴らず。ホームゴール裏は騒然となりましたが、PKとはいきません。
一進一退。追加点も同点弾も生まれそうな展開で、57分にゴトビ監督が交替策。枝村に替えて、「速い選手をウイングに入れて、柏ディフェンスの裏へ入っていく狙い」で高木を3トップ左へ投入。アレックスを中盤へスライドさせます。58分、柏に好機。橋本の縦パスをヨン・ア・ピンの背後で受けた澤はダイレクトスルーパス。受けた工藤はボスナーの対応でシュートチャンスを逸し、折り返しも太田にカットされましたが、ここが流れの転換点。
「前半がタイトでも、後半はセカンドボールに反応できるようになって自分たちのペースになることが多い」と澤。柏怒濤の連続セットプレー。60分、レアンドロの右CKはボスナーがクリア。61分、ワグネルの左FKは山本海人がパンチング。61分、増嶋のロングスローはレアンドロが頭で合わせるも右ポストをかすめて枠外へ。61分、レアンドロの右CKは近藤が触り、工藤の折り返しはヨン・ア・ピンがクリア。そして62分、ワグネルの左CKをレアンドロと村松が競り合い、こぼれたボールに工藤は超低空ダイビングヘッド。2分間で5本目の正直。「ゴチャゴチャした中だったけど、僕のストロングポイント」と笑う19番の同点弾。柏が追い付きます。
こうなると風上も文字通り"追い風"となり、柏が猛ラッシュ。64分、一瞬吹いた突風に乗ってゴールへ向かったワグネルの右FKはクロスバーを叩き、山本海人の頭に当たって枠の外へ。直後のCKから、こぼれをワグネルが左クロス。パク・ドンヒョクがフリーで当てたヘディングはGK正面。決定的なシーンが続きます。
たまらずゴトビ監督は68分に2枚目の交替カードを決断。アレックスがハマらず、「プレスががら空きになってきたのを感じた」と澤も話した中盤に杉山を送り込み、替わった高原の位置にはアレックスが上がりましたが、バランスは戻らず。69分には中盤でルーズボールを澤が収め、ワグネルが繋ぎ、レアンドロのクロスを工藤が頭でゴール。判定はオフサイドとなり、勝ち越しとは行かなかったものの、止まらない柏の波。
71分、増嶋のパスからレアンドロが枠の右へ外れるミドル。76分、橋本のパスからワグネルの無回転ミドルは山本海人が何とかパンチング。「マスと絡みながら押し込めた」(レアンドロ)「ワタルとの絡みも増えていった」(ワグネル)。奇しくも両ブラジリアンが同じ感触を口にするなど、サイドもジワジワ浸食。78分、ネルシーニョ監督のラストカードは、工藤に替えてジョーカー田中。80分、田中のポストプレーからレアンドロが左へ展開。ワグネルのクロスに飛び込んだ澤のヘディングは、山本海人がスーパーセーブ。81分、大谷がハイプレスでユングベリからボール奪取。田中は大谷とのワンツーを経て、シュート気味クロスを送るもレアンドロとは合わず。83分、増嶋のロングスローは田中に届き、柔らかいパスをもらったワグネルのシュートは枠の数十センチ右へ。「1つ2つ外しても、まだまだチャンスを創れる自信や雰囲気はあった」と澤。実際のスコアは1対1ですが、決定機の数や流れを考えれば1対1.9のような展開。わずかではあるものの、ゆえに大きな0.1を引き寄せる勝負運を柏は持っているか否か。
その時は84分。パクのフィード。抜け出した田中が切り返して縦へ。追い越したワグネルのシュート。山本海人がファインセーブ。飛び付いたレアンドロのヘディングは枠内へ。飛び付いた山本海人及ばず。最後の0.1を埋めるエースの一撃は逆転弾。アウェイゴール裏の黄色沸騰。土壇場で柏がスコアを引っ繰り返しました。
意地の清水。89分、大前のショートコーナーから、高木のクロスは茨田がブロック。90+1分、中央右はゴールまで約25mの位置からボスナーが蹴ったFKは左へ切れて枠外。90+2分、柏のクリアは小さく、ヨン・ア・ピンが左へ振ると、高木のクロスに飛び込んだアレックスのヘディングはバーの上へ。90+5分、大前の左CKは橋本がクリア。3度鳴り響いたタイムアップのホイッスル。J2王者からJ1王者へ。アウェイの地でなんと今シーズン7度目となる逆転劇を演じた柏が、5連勝を飾って首位を奪還する結果となりました。
清水の分岐点は枝村の交替だったでしょうか。アレックスが中盤に降りてから少しバランスが悪くなり、結果的に1失点目が生まれ、その後の杉山投入でも一度崩れたバランスは戻らず。懸命に奮闘していた山本海人が「あんなにシュートを打たせたら負けてしまうと思う」と肩を落としたのが印象的でした。
逆に柏は交替策がヒット。1トップ下へ入った澤が「距離を走って相手を剥がしたり、引っ張ったりしてくれた」(大谷)ことで清水の中盤のトライアングルは少しずつ形が崩れ始め、結果的に「後半は相手SBの位置が低くなった」(レアンドロ)ことにも繋がったように思います。そして、登場から6分間で4度のチャンスに絡み、ゴールシーンでも起点になった田中投入も奏功。「投入した選手がしっかり意図を汲んで、チームとして攻撃に出て、守備も安定して、勝ちに値するゲームができた」と話した指揮官。「全員がゲームに出て、活躍できるレベルにある」と大谷も胸を張った太陽王の戴冠式が、いよいよ迫ってきました。      土屋

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