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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合は実に11年ぶりの全国を目指す東海大菅生と、初めての頂点に挑む早稲田実業の激突。今年度は新人戦、インターハイ共に地区予選を勝ち抜くことができず、選手権でようやく実力を発揮した感のある菅生。最後の大会でここまでの欝憤を晴らしたい所でしょう。一方の早実もインターハイはまさかの地区予選敗退。T1リーグも残留決定戦で何とか来年度の参加権利を獲得するなど、苦しいシーズンを送ってきただけに、総決算となる選手権で結果を出したい所です。選手が入場してきた辺りから、スタンドを彩り始めたのは傘の花。雨中の決戦は早実のキックオフでスタートしました。
先にチャンスを創ったのは菅生。4分、私市一樹(2年・東海大菅生中)の右FKは早実GK岸浪卓志(2年・大宮アルディージャJY)がパンチングで逃れましたが、こぼれを最後は山崎皓大(2年・小平第三中)がボレー。ゴール右へ外れたものの会場を沸かせると、早実もすぐさま反撃。同じく4分、中央でボールを持った平澤遼(3年・浦和レッズJY)のミドルはわずかにバーの上へ。まずはお互いに惜しいシーンを創り合います。
ただ、次第にペースを掴んでいったのは菅生。8分に土屋洋史(3年・練馬石神井西中)、山崎と繋いで、鈴木悠生(2年・FC.VIDA)がヒールで返すと、土屋がDFと競り合いながらシュートを放つなど、1トップの山崎と、右から土屋、鈴木、木村竜也(3年・FC東京U-15むさし)と、その下に並んだ3人がボールをうまく収めて、動かしていったことで攻撃のリズムを創出。16分には、私市の右CKをファーで待っていた木村のヘディングは枠を捉えられませんでしたが、攻勢の時間が続きます。
対する早実は何とか長いボールに活路を見い出そうという姿勢は窺えるものの、なかなか収まり所がなく、すぐにボールを奪われる展開に。それでも28分には中川諒(3年・早稲田実業中)のスローインから、最後は呉田敬介(3年・Forza'02)が反転シュートを枠の左へ。「ウチはどんな時でも1点差ゲームばかりなので、押されていてもそんなに崩れるような心配はなかった」と森泉武信監督。早実からすれば、ある程度の我慢は想定内だった様子。
30分には左サイドから鈴木が上げたクロスに山崎が合わせましたが、寄せていた中川が体でブロック。31分には左SB安藤健介(2年・青梅第三中)のクロスから、こぼれを拾った木村のシュートは岸浪が好セーブ。全体のペースは菅生にあったとはいえ、早実サイドにしてみれば折り込み済みの劣勢。スコアレスで40分間は終了しました。
後半に入ると雨足が一層強くなった西が丘。照明にも灯が入る中、スリッピーなピッチ状態もあってか、菅生は41分の右FK、42分の左CKと共に私市がチャンス一歩手前のキックを見せますが、全体的にボールの回りが停滞し始め、流れの中からはチャンスを創れません。
一方の早実も44分、47分と「本来はトップ下で、どこでもできるマルチな選手だが、人がいないのでCBに置いている」と指揮官が明かしてくれた大丸瞬(3年・FC東京U-15深川)が連続でFK。さらに48分には大丸の左CKを菅生DFがクリアすると、全速力で走り込んだ谷翔太郎(2年・杉並荻窪中)のヘディングはGK窪田裕(3年・東京ウエストFC)がキャッチ。セットプレーがゲームの行方を左右しそうな展開になっていきます。
すると、スコアを動かしたのはやはりセットプレー。右から大丸が蹴り入れた早実のCK。一旦は菅生もクリアしましたが、ルーズボールを拾ったのは呉田。丁寧なトラップ。ルックアップ。視界に捉えた右スミのネット。右足で擦り上げたボールは緩やかに、そして確実に、狙った軌道を描いてゴールに吸い込まれます。「どこかでチャンスは来るだろうなと思っていた」と森泉監督が話した"どこか"は58分。沸騰したスタンドのエンジ。劣勢の時間帯も粘り強く凌いできた早実が、残り20分でリードを奪いました。
さて、ビハインドを追い掛ける格好となった菅生。65分に左サイドから私市が2本連続で蹴ったFKは、シュートまで至らず。69分にも私市が蹴った左FKは、ファーにいた香西駿介(3年・Forza'02)に届き、フィニッシュへ持ち込みましたが、寄せたDFに当たって枠の右へ。追い付けません。
さらにこのCKを私市が入れると、逆にここから早実のカウンターが炸裂。「中学の時は本格的にやってなかった選手の1人」と森泉監督が教えてくれた右SBの牟禮宏晃(3年・横浜中川西中)は、自陣からドリブルを開始すると70m近くを快走し、エリアへ入ると自らシュート。ボールは左のポストに弾かれましたが、この大舞台で牟禮が躍動します。
いよいよ残された時間は10分。71分には土屋を下げて、橋本遼平(2年・FC BRANCO八王子JY)を送り込み、勝負に出た手塚弘利監督。刻々と進む時計の針。79分には絶好の位置からFKのチャンス。ゴール左寄り、距離は25m弱。キッカーは私市ではなく山崎。右足から繰り出されたボールは左スミギリギリへ。直後、懸命に飛び付いた岸浪のビッグセーブ。安堵と落胆の溜息が広がるスタンド。
諦めない黄色と黒。80分、右サイドから小林建斗(3年・小平第三中)が上げたクロスを、木村がボレーで枠に飛ばしましたが、ここも岸浪がファインセーブ。諦めない黄色と黒。同じく80分、左サイドから安藤が上げたクロスに、突っ込んできた逆サイドのSB小林のヘディングは枠の左へ。雨の上がった曇天の空を切り裂くホイッスル。「1年間こういう戦いをしてきた」(森泉監督)早実が最小得点差を最後まで守り切り、4年ぶりのファイナルへ勝ち進む結果となりました。
早実は昨年度のチームが非常に完成度の高いチームで、どちらかと言うと今年は「色々なことができない代」(森泉監督)。ただ、4年前に同校初のファイナルへ進出した時も、期待の大きかった代の翌年だったとのこと。指揮官はこれを"雑草魂"と表現してくれました。「ここまで愚直にやってきたので、それがどう久我山の華麗なサッカーに対抗できるかですね」と森泉監督。サッカーでもその名前を全国に知らしめるべく来週の土曜日、早実は最後の1試合に挑みます。 土屋
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