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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2011年11月12日

高校選手権東京A決勝 東久留米総合×関東第一@西が丘

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写真[1]nisigaoka1.jpgわずかに2つの選ばれしチームを除き、すべてに敗北の記憶を残して迎えるファイナル。東京の高校サッカーに最後の1日が訪れます。昨日の雨から一転、秋晴れの舞台は西が丘サッカー場。東京でサッカーをする者の聖地へ、Aブロックのファイナリストとして足を踏み入れるのは東久留米総合と関東第一。
インターハイ王者。準決勝も100分間に及ぶ激闘の末、粘る修徳を撃破して、2年ぶりの全国へ王手を懸けた東久留米総合。攻守のバランスは間違いなくナンバーワン。キャプテンの佐々木翼(3年・東京久留米FC U-15)を軸にした鋭いサイドアタックは大きな武器です。
関東大会予選王者にしてT1リーグ王者。準々決勝は8-1、準決勝は7-0と圧倒的なスコアでファイナルへ駆け上がってきた関東第一。数字を見てもわかるように、特徴は破壊力抜群のアタック。ボランチに入る沓掛元気(3年・ヴィヴァイオ船橋)をスイッチに、ショートパスとドリブルで崩し切るスタイルは圧巻の一言です。誤解を恐れずに言えば、この2チームが今年度の東京では双璧。最後を飾るにふさわしいカードとなりました。
東久留米のキックオフで幕を開けたゲームは、いきなり34秒に沓掛のパスから竹本佳(2年・小倉南FC)が枠を越えるミドルでファーストシュート。3分、竹本の仕掛けから獲得した左CKを沓掛が蹴ると、ニアで長谷澪杜(3年・FC湘南)がすらし、福島翔太郎(3年・ヴェルディSSレスチ)のボレーは枠の左へ。初の全国へ関東第一が積極的に飛び出します。
ただ、4分には東久留米も橋詰晃(3年・FC東京U-15むさし)のFKから最後は多田和明(3年・FCクレセル)がバーを越えるボレー。8分には右サイドから鈴木雄大(3年・東京久留米FC U-15)が上げたクロスは、バーをなめて枠外へ。11分には佐々木がミドルレンジから思い切ったシュートにチャレンジ。少しずつ東久留米がペースを掴んでいきます。
東久留米は「相手は両SHが中に入ってきた所をフレキシブルに使うので、橋詰をいつもより0.5列くらい落としてスペースをマークする4-1-4-1」(齋藤登監督)を採用。橋詰がアンカーに入り、関東第一の1.5列目に入った宇羽井アハマド(2年・FC多摩)をマンマーク気味に監視します。これには関東第一の小野貴裕監督も「サイドに付けたボールからクサビを入れるイメージだったが、アハマドに入らなかった」と言及。1トップの谷中隆太(3年・ナサロットFC)はポストプレーヤーというより、アジリティを生かしたゼロトップタイプで、全体的にプレスの速かった相手に潰され、前での基点がなかなか創れなかったのも、ペースが東久留米に傾いた要因だったと思います。
17分も東久留米。右サイドで西田絋崇(3年・練馬FC U-15)、鈴木、菅谷翼(2年・FC東京U-15むさし)とダイレクトで繋ぎ、多田のクロスはフリーの佐々木へ。シュートは打ち切れませんでしたが素晴らしい形を創出します。すると18分には左SBの米倉翼(3年・FC東京U-15むさし)が奪ったFK。ゴールまでは25m強。キッカーは佐々木。右足から放たれた軌道は、クロスではなく直接ゴールへ向かうと、伸ばしたGKの左手をかすめてネットへ到達。インターハイの準決勝でも同点FKを沈めている10番の一蹴りでスコアが動きました。
以降も全体の流れは変わらず。展開としてはやや膠着しながらも、30分には米倉の右CKを多田がゴール左へ外れるヘディングを放つなど、攻勢は東久留米。関東第一はなかなかいつものショートパスやドリブルにテンポが出て来ず、36分に掴んだ直接FKのチャンスも沓掛のキックは東久留米GK野中優志(2年・練馬谷原中)が難なくキャッチ。小野監督も直後に字羽井を下げて伊東礼央(3年・FC多摩)を送り込み、アタッカーのタイプを変えましたが、前半はそのまま終了。東久留米が1点のアドバンテージを握って、ハーフタイムに入りました。
後半も東久留米が先にビッグチャンス。49分、鈴木、西田と繋いで、佐々木のクロスから多田が放ったシュートは、関東第一GK田畑里央(3年・ジュビロ磐田JY)がセーブ。こぼれを再び多田がプッシュしましたが、長谷が何とかクリア。水際で関東第一が凌ぎます。50分は両チームに交替。東久留米は春山美優士(3年・三菱養和巣鴨JY)と切り札の片岡瞭星(3年・板橋志村第四中)をスイッチ。関東第一は大津風輝(3年・トリプレッタ)に替えて、181センチのポストプレーヤー大村俊道(2年・コンソルテ)を最前線に投入。カードを切り合います。
前半に比べれば少しずつ落ち着きを取り戻し、ポゼッションでは上回ってきた関東第一でしたが、「沓掛の位置も低くて、相手のボランチに背後を意識させられない状態」と小野監督が振り返ったように、全体的にボールが回る位置も低く、焦りからかオフェンスファウルも目立ち、アタッキングサードに侵入できません。また、縦に並んだ大村と谷中もうまく分断されてしまい、フィニッシュを取り切れないでいると、一瞬の隙を突いたのはまたも東久留米。
58分、多田が蹴ったクリア気味のフィードを関東第一ディフェンスが処理にもたつくと、ボールをかっさらった佐々木は前に出ていたGKの頭上を越える技アリループボレー。「いつも外し続けるのに大事な所では決める。"持っている"んですね」と指揮官も笑ったキャプテンの追加点。2点差が付きました。
苦しくなった関東第一。66分には沓掛のFKに塚越拓也(3年・ジェファFC)が頭から飛び込むも、ボールは枠の左へ。72分、長谷のフィードを谷中がダイレクトではたくと、大村が左へ流れながら放ったシュートは多田が体を投げ出してブロック。1点を奪えません。74分には関口直人(3年・ウイングスSS習志野)、76分には緒方修(3年・市川第七中)を送り込み、交替枠を使い果たして最後の勝負に出た小野監督。
すると79分には東久留米にアクシデント。166センチながら完璧な対応を続けていたCB嵐田継也(3年・杉並アヤックス)が足を攣ってしまい、MF富樫謙(3年・FC東京U-15むさし)との交替を余儀なくされると、一瞬混乱した配置の確認。
関東第一はスローインの流れから沓掛、伊東と細かく繋ぎ、竹本の浮き球は再び伊東へ。ゴール前の混戦。森田渉(2年・Forza'02)のクリア。再び混戦。伊東のシュート。野中のセーブ。村岡翔太(3年・コンソルテ)のプッシュ。黄色の歓喜。1点差。1点差。
直後のキックオフ。東久留米のクリアは中央へ。竹本のスルーパス。大村のシュート。飛び出した野中のセーブ。伊東の折り返し。谷中のプッシュ。同点。同点。61秒間の奇跡と悪夢。80分までわずかに14秒という土壇場で、スコアは振り出しに引き戻されました。
追い付かれた東久留米にさらなるアクシデント。GKの野中が大村との激突による左足首と右太ももの負傷でピッチへ戻れず、交替枠を使い切っていたために、指揮官とGKコーチの相談で「フィジカルマン」(齋藤監督)の多田が17番のGKユニフォームに着替えて、急遽ゴールマウスへ。数分前には想像もできなかったような急展開の中、ゲームは延長戦へ突入することになりました。
10人の東久留米。11人の関東第一。しかし、「ゴールまでの最短距離で攻めたかったんですけど」と小野監督も話したように、関東第一も足を痛めて動きの鈍った大村と谷中を中央から動かせず、どうしても攻撃に手数が掛かってしまい、シュートまで持ち込めません。逆に「色々なプランは考えていたが、さすがにこういうシミュレーションはしていなかった」と齋藤監督も苦笑いした東久留米は、佐々木をCBに下げた4-4-1で持ち堪えます。
延長前半はお互いにシュートなく経過。直後、どよめくスタンド。懸命の治療で野中が再びゴールマウスへ。ピッチの人数は再び11対11へ戻りました。延長後半は息を吹き返した東久留米ペース。97分に掴んだ決定機。クサビをパスカットした多田は、那珂通是(3年・調布神代中)のリターンを受けると、右サイドを抜け出しGKと1対1になりましたが、シュートはクロスバーの上へ。7分前まではGKだった右SBのフィニッシュも劇的弾とはいきません。100分間を終えて両者譲らず「引き分け」(齋藤監督)。全国への出場権はPK戦というロシアンルーレットへ託されることになりました。
お互いに最後の力を振り絞った、11mの攻防。野中も痛む足をかばう事なく、果敢にボールへ飛び付きました。田畑も3本は読みを的中させ、自らも2番目のキッカーとしてゴールを決めました。佐々木と沓掛の両キャプテンも、共に3番手として重責を果たしました。10人が蹴ったPKは1本だけクロスバーに阻まれ、決着はついたものの、それがPK戦。東京の高校サッカー史に刻まれるであろうファイナルは、幾重ものドラマが重なった末に東久留米に凱歌。夏冬制覇を達成する結果となりました。
素晴らしいゲームでした。あまりに色々な要素が詰め込まれていた100分間とPK戦を懸命に駆け抜け、ファイナルにふさわしいゲームを見せてくれた両チームに心から感謝したいと思います。    土屋

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