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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2011年11月16日

天皇杯3回戦 福岡大学×湘南@NACK5

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201111170420000[1]tennohai.jpgここまでの天皇杯における最大のサプライズとなった大宮の敗退。すなわち福岡大学の勝利。ただ、確かに選手の年齢も限定された学生チームとはいえ、U-22日本代表の招集歴がある牟田雄祐や、同じくU-19日本代表でのプレー経験を持つ清武功暉など、メンバーの顔触れは大学サッカー界の中でもトップクラス。2年前の同大会でも水戸を延長の末に下しており、乾真寛監督も一定の自信を持って臨んだであろう大宮戦での成果は、選手たちの自信も引き出すことになったのは想像に難くありません。
今日対峙するのは、リーグ戦4連敗で今シーズンの昇格が消滅した湘南。カテゴリーこそJ2ですが、モチベーションという意味で大宮を上回っていることは間違いないでしょう。そして、このゲームは3回戦全16試合の内、唯一いわゆる"中立地"で行われる一戦。舞台はNACK5スタジアム大宮です。
先にシュートを放ったのは福大。1分、左サイドからゴールまで約30m強の距離を、清武が無回転FKで枠内へ。GKにキャッチされたものの、いきなりチャンスを創ります。ただ、ここからしばらくゲームは膠着状態に。「15分は浮き球で相手の背後へ」(乾監督)「相手はラインも高くてコンパクトにしてくるので、最初はルーカスを裏に抜け出させてラインを下げさせたかった」(湘南・反町康治監督)と両者の思惑が一致。それぞれ1トップの山崎凌吾とルーカスを狙ったロングボールが飛び交う展開の中で、様子見の時間が続きます。
とはいえ、攻撃の手数で言えば多いのは湘南。14分、左サイドで高山薫のリターンを受けた山口貴弘の右足アーリークロスを、ファーで岩尾憲が優しく折り返すもDFがクリア。19分、またも左サイドで山口が巧みなキックフェイントから縦へ付けると、高山のクロスに松尾直人が合わせたシュートはDFがブロック。23分、山口のスローインから菊池大介がマーカーを外して打ったシュートは枠の左へ。ゴールを陥れるまでには至りません。
対する福大は「マイボールの質が低いので、この戦い方を選択した」と乾監督が話したように、ある程度長いボールを駆使して、そこからの何かを期待するような「割り切った戦い方」(牟田)を徹底しますが、18歳と両チームの中でも最年少ながら、既にJリーグ通算37試合に出場している湘南のCB遠藤航に高さも含めてキッチリ抑え込まれ、なかなかチャンスまでは創れません。
28分には右サイドの長谷慎司が入れたクサビから、収めた清武が短いラストパスを出しましたが、田中智大はシュートまで行けず。31分に鳥栖の特別指定選手でもある左SB黒木恭平が、長い距離を直接狙ったFKはクロスバーの上へ。この2シーンが前半にあった福大の見せ場。「相手コートで取ったルーズボールを、また蹴って前へ入れてしまった」(乾監督)こともあって、攻撃の時間は長く持てませんでした。
それでも、「守備の組織的な力には手応えを感じている」と指揮官も認めた通り、牟田と串間雄峰で組んだCBはルーカスをほぼ完璧に監視下へ置いてシャットアウト。また、1トップ下の菊池と、展開上で比較的前に出てくることの多かった永木亮太と松尾のドイスボランチのバイタル侵入には、アンカーに入った假屋健太がしっかり対応。38分に一発のフィードに抜け出したルーカスがGKを外して折り返し、受けた菊池が1人外して流し込もうとした決定機も、串間が決死のブロックで失点を阻止。「CBとアンカーの三角形はJでも十分通用する力がある」と敵将の反町監督も言及した3人を中心に、福大が大きな破綻もなく守り切った前半は、スコアレスでハーフタイムを迎えました。
後半はスタートから「前で収まらず、抜け出すタイミングが合わない」(反町監督)ルーカスを諦め、田原豊を投入してきた湘南。48分には岩尾のミスパスを假屋にかっさらわれ、山崎のシュートに繋げられますが、49分には田原、岩尾、菊池とボールが回り、田原のフィニッシュは牟田がブロック。50分、53分には前者が岩尾の左CKから、後者は松尾が右サイドへ展開した流れから、いずれも菊池がシュートへ持ち込みますが、いずれもボールは枠の右へ。56分には永木が右から上げたアーリークロスに、走り込んだ高山が頭で枠内へ。チャンスが増えてきます。
これに関しては牟田が興味深い考察。曰く「大宮はキレイなサッカーだったけど、湘南は回す中でも縦に入れてきたりする。また、後半は前半に比べて裏に飛び出してくる選手が1人じゃなく、2人3人と増えてきた」とのこと。田原のキープ力がチームの"縦"を促し、攻撃に2つの意味で"幅"が出てきたことを牟田も感じていたようでした。
さて、ピンチの数か増えてきた福大でしたが、64分には清武のロングスローからチャンス到来。最後は岸田翔平の思い切ったミドルが枠のわずかに右へ外れたものの、この辺りから「ボールを奪える位置が高くなり、ショートカウンターの回数も増やせたかな」とは乾監督。68分には黒木、長谷と繋いで、岸田のクロスをファーで清武が折り返し、田中のヘディングはGKにキャッチされましたが、今日一番の形を創ると、直後にはゴール前で細かいパスワークを披露。清武がエリア内で倒れたプレーはノーホイッスルで、福大応援団は大騒ぎ。少しずつ反発力を見せていきます。
ただ、それと同時に田原の存在や守備に回る時間の長さから、疲労も見えてきた最終ライン。「下がっているなとは思っていたが、なかなかラインを上げられなかった」とは牟田。73分、反町監督は「相手も足が止まってラインが間延びしてきたので」、岩尾に替えてアジエルを投入。77分はエリア内から高山、80分はミドルレンジから松尾が、共に枠内シュートを放つなど、湘南がゲームを決めに掛かってきました。
耐える福大。84分、永木、松尾、アジエルと回し、松尾のスルーパスは呼吸が合わず。90分、田原のリターンからアジエルが右へラストパスを送り、上がってきた鎌田のシュートは假屋が体を投げ出してブロック。91分にも湘南は右サイドを起点に波状攻撃を繰り出すも、枠内シュートは打てず。動かなかったスコア。個人的なことですが、これで私にとっては4試合連続での延長戦を迎えることになりました。
お互い円陣を組み、勝利への意志を確認してから足を踏み入れた延長は94分、一瞬のエアポケット。湘南は右サイドでアジエルと高山のパス交換から、鎌田がジャンピングボレーでクロスを上げると、なんと飛び込んできたのはCBの大井健太郎。「2列目への対応はできていたが、最後尾からあの一瞬だけ、スルスルとうまく上がられてしまった」と乾監督も振り返った、意外な伏兵が大仕事。とうとうスコアボードに1の数字が入りました。
よく耐えていた福大。96分には岸田の右クロスから、田中のヘディングはわずかに枠を逸れ、99分にアジエルの右FKを遠藤が狙ったヘディングはGK藤嶋栄介が弾き出し、詰めた田原のシュートもポストに直撃するなど、何とか粘る姿勢を見せましたが、やはり「1点目がすべて」(乾監督)。
109分、アジエルの右CKを田原が頭で合わせると、高山が反転ボレーで押し込んで2点目。116分、福大のCKから湘南のカウンター発動。高山のパスでエリア内へ潜った菊池が倒され、PK獲得。これをアジエルが右スミへ突き刺し3点目。最後は湘南がJリーグの意地を見せ付けるような格好で福大を下し、8年ぶりにベスト16へ駒を進める結果となりました。
福大は「守備力には十分いい評価を与えていいと思う」と乾監督が話した通り、「できれば90分で終わりたかった」と反町監督も触れた90分間は、苦しい流れの中でよく耐えていたと思います。攻撃がどうしても単調になってしまい、いわゆる決定機をほとんど創れなかったのは残念でしたが、「自然に色んな選手から、指示の声がどんどん出てきたのはよかった」とはキャプテンの假屋。「大きな目標に向かって十分前向きな挑戦はできた」(乾監督)福大は、石津大介を加えたインカレで是非もう一度見てみたいと思います。    土屋

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