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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
就任以来、14戦負けなしといまだに無敗記録継続中のザックジャパン。長居を舞台に行われる、久々の関西開催となったワールドカップ予選。対峙するのはシリアの失格を受けて、繰り上がりで3次予選に駒を進めたタジキスタンです。完全なテストの位置付けで臨んだベトナムとのキリンチャレンジカップは1-0と辛勝に終わりましたが、すべてはこのタジキスタン戦で勝ち点3を獲得するための準備。問われるべきは今日の結果のみであることは間違いありません。
本田と内田をケガで欠く中、ザッケローニ監督が選択したシステムはいつもの4-2-3-1。最終ラインには右から駒野、吉田、今野、長友。ドイスボランチには不動の長谷部と遠藤。1トップには「タジキスタンが中央を固めてくるのは想像していたので、サイドからのクロスを無駄にせず、有効に使いたい」という指揮官の意図を受けて、ハーフナー・マイクが代表初スタメン。2列目には右から岡崎、やはりザック体制下では初スタメンとなった中村、香川が並びます。
44688人とスタンドを埋め尽くしたサポーターへ応えるかのように、日本は試合開始からフルスロットル。いきなり1分にショートパスを繋いで、岡崎が枠内にシュートを飛ばすと、5分には中村のCKを吉田が左足ボレーで狙うもタジキスタンGKトゥイチェフがファインセーブ。6分には中村のショートコーナーから、遠藤のリターンを受けて中村のクロスに合わせた吉田のヘディングは枠の左へ。8分、駒野のアーリークロスに岡崎が狙ったヘディングは枠の左へ。9分、香川が左サイドからカットインして放ったシュートは、わずかにゴール右へ。ゴールこそ生まれなかったとはいえ、最初の10分間に5本のシュートを集めます。
すると早くも均衡が破れたのは11分。右サイドで駒野が中村とのパス交換を経て高いクロス。ここに飛び込んだのは「ボールが良かったので入れるだけだった」ていうハーフナー。寄せたDFの遥か上から叩き付けたヘディングは、「素直に嬉しい」代表初ゴール。日本が幸先よく、先制点を奪いました。
さて、「守りに徹しようとチームを組んだ」とアリムジョン・ラフィコフ監督が語ったタジキスタンは、4-1-4-1気味のシステムを採用しましたが、中盤4枚のサイドに入った、右のファトフロエフと左のジャリロフも帰陣が相当早く、実質大半の時間で6バックになってしまい、プレスの掛けるポイントも見出だせずにズルズルとラインを下げるだけ。日本の猛攻は続きます。
15分、17分と中村がシュートを放って迎えた19分、右サイドで相手のスローインを奪うと、最後は中村のラストパスに抜け出した岡崎が左スミへ綺麗に流し込むファインゴール。「1つ不安に思っていたのは、試合の入り方」という指揮官の懸念も吹き飛ばす追加点。リードが広がりました。
日本の中で、特に目立っていたのは1トップ下に入った中村。「バイタルでボールを受けて、引き出してくれ」というザッケローニ監督の要求通り、バイタルに"潜って受けて前を向いて"を高次元で敢行。これに引っ張られる格好で、香川も中村とのポジションチェンジなどから、ボールを引き出す形がベトナム戦に比べても格段に増加。攻撃の歯車はオイルを差す必要がないくらいに、ガッチリ噛み合います。
35分の主役は意外な伏兵。駒野、ハーフナーと繋いだボールを中村がシュート。GKが防ぎ、小さくなったクリアは駒野の元へ。ダイレクトで躊躇なく振り抜いたミドルは、弾丸と化してゴールを射抜くと、これが駒野にとっては代表Aマッチ65試合目にして初ゴール。これでリードは3点に。
さらに、スーパーな一撃は41分。左サイドへ開いた中村は、長友からパスを受けると、高速グラウンダーをニアサイドへ。「完全に目が合った」香川は走り込みながら右足アウトに乗せると、ボールはゴールへ吸い込まれます。2人のイメージと技術がシンクロした完璧なゴール。4-0と日本が大きくリードして、ハーフタイムに入りました。
後半も容赦なくスタートしたゴールショー。47分、遠藤が溜めて溜めて香川へ。リターンを受けた遠藤は右へ振ると、駒野のクロスに、寄せたDFの頭2つ分くらい上から打ち下ろしたハーフナーのヘディングはゆっくりゴールへ吸い込まれ、5-0。「三角形だけではなく、ボールをサイドに運んだ時もハーフナーに当てられる幅ができたのではないかと思う」とザッケローニ監督も評したハーフナーはここでお役御免。替わって李が1トップの位置に入ります。
49分には中村の右CKを、いきなり李が枠へ飛ばすも、GKセーブ。50分、遠藤の浮き球にDFが頭を出すと、フリーで抜け出した岡崎のボレーはGKファインセーブ。続くラッシュ。50分、中村の右CKから吉田の左足シュートはクロスバー直撃。52分、長友、香川と回り、中村の左クロスをDFがクリアすると、拾った長友のボレーもクロスバー直撃。53分、右サイドから中へ切れ込んだ岡崎の左足ミドルは左ポスト直撃。ゴールの枠に3連発という珍しいシーンでスタンドを湧かせると、56分には「トップ下なんでゴールが欲しかった」今日の真打ちがキラリ。左サイドから長友の折り返しを受けた中村は、いい位置にトラップで付けると、左足でゴール右スミへイーグルショット。この時間までで実質3アシストながら、5本のシュートは空砲に終わっていた中村の、今日6本目となるフィニッシュがようやく実り、スコアは6-0となりました。
68分には中村が蹴ったCKの流れから、遠藤が右へ展開すると、本人も「狙いました」ととぼけた香川の明らかなクロスミスがそのままゴールに吸い込まれて7点目。70分には「我々は勉強に来た身分」(ラフィコフ監督)というタジキスタンもジャリロフの右FK、バシエフの右CKと2度のセットプレーを得ましたが、共にシュートは打てず、73分にバシエフが入れた右FKも李にクリアされるなど、遠い遠い日本ゴール。
そして少し早めの打ち止めは74分。駒野の右クロスが流れたボールを、拾った中村は極上のループパス。ファーでフリーの岡崎が頭で押し込み、これがこのゲーム最後のゴールとなる8点目。「全員が気持ち良くボールに触れたと思う。結果と内容が両方付いてきた試合」とザッケローニ監督も話したゲームは、全8点中7点に絡む、圧巻とも言うべきパフォーマンスを見せた中村の良さが全面に押し出された内容で、トルシエ監督が指揮を執っていた2000年10月のアジアカップ・ウズベキスタン戦以来となる8ゴールを長居に訪れたサポーターへプレゼントした日本が、最終予選進出を大きく引き寄せる勝ち点3を挙げる結果となりました。
正直、「これは単なる実力の差であり、当然の結果」「ほぼベストのメンバーで戦ってくれて感謝している」など、謙虚過ぎる発言を繰り返したラフィコフ監督の言葉を待たずとも、実力には大きな開きがありました。それでも「オフ・ザ・ボールの動きが良くなった」と指揮官が話したように、中村という有能なスイッチ役を得たチームは、一気に流動性がスムーズさを増し、攻撃が効果的に機能した印象。相手のことを差し引いても、これだけチャンスを創り、これだけゴールも奪うというのは、素晴らしいの一言でしょう。代表の国内開催に限れば年内ラストマッチとなる一戦は、チームの成熟度を証明するような、スタジアムに多数詰め掛けた子供たちも大満足のゲームだったと思います。 土屋
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