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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2011年10月29日

ナビスコ決勝 浦和×鹿島@国立

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201110300319000[1]final.jpg赤と赤の解逅。2002年は鹿島が1-0で3度目のカップ戴冠。2003年は浦和が4-0でJリーグ発足以来初めてのタイトル獲得。8年ぶりにカップファイナルで再会する舞台は、必然の聖地・国立競技場です。
まさかの低迷。新監督に選手としてのプレー経験を持つペトロヴィッチを招聘し、強豪復活を期したシーズン。暗転。結果も内容も上向かず、残留争いを強いられる状況下で指揮官は更迭の憂き目に。後任にはユースで監督を務めていた堀孝史が緊急昇格した今、最大のプライオリティはJ1残留ですが、赤を貫くサポーターへこのタイトルを届けるのは義務とも言えるでしょう。
蹉いたスタート。名古屋にさらわれたシャーレを奪還すべく迎えたリーグでは、震災による中断を挟むと勝ち点を伸ばせず、なかなか縮まらない上位との差。中盤戦以降はようやく調子を取り戻したものの、もはや優勝は難しくなった状況で、カップタイトル死守がこちらも義務であることは間違いありません。
この5年で4度のリーグ優勝、3度の天皇杯を分け合っている、いわばタイトルマスター同士のファイナル。ホームゴール裏には赤白黒の3本ラインに"PRIDE Of URAWA"の文字が浮かび上がり、アウェイゴール裏にはタイトルを表す一番星を含めた6つのビッグフラッグがはためく中、白い鹿島のキックオフで、その火蓋が切られました。
ゲームが始まると、少しずつ見えてきたのはポゼッションの浦和と、シンプルに縦へ付ける鹿島という構図。浦和は山田直輝が縦横無尽に動き回り、パスの流れのクッションになることで、中盤より後ろではよくボールが回ります。対する鹿島は、どちらかというとシンプルに2トップの大迫と興梠を走らせる展開に。お互いにシュートまではなかなか持ち込めないものの、「あんまり良くなかったので1回下がった」(中田浩二)鹿島のスタンスもあって、山田直輝という触媒が見せた積極性の分だけ、浦和がリズムを掴みます。
ただ、11分に野沢が左FKを蹴ると、ニアへ飛び込んだ興梠のヘディングは枠の左へ。16分、青木のスーパーな低空フィードを受けて、新井場が右サイドから上げたクロスは、わずかに大迫触れず。ゴールへの手数は「ボールは回されたけど、いい形は創らせていない」と中田も話した鹿島が多く繰り出します。
20分には浦和に初シュート。山田暢久、山田直輝と繋いで、梅崎が右からカットインしながら左足で狙ったミドルは大きくバーの上へ。21分も浦和。平川のフィードにエスクデロがフリーで抜け出すも、プレー判断が遅く青木がカット。22分は鹿島。アレックスのクサビを大迫が溜めると、遠藤を経由した小笠原のミドルはゴール右へ。23分は浦和。鈴木のミドルパスを山田直輝が繋ぎ、エスクデロの強引なシュートはバーの上へ。
この時間帯は浦和がシュートシーンを創りますが、気になったのはほとんど原口が流れに絡めなかったこと。確かに堀監督就任後、ボールの回りは良くなったとはいえ、やはりパスワークで崩すシーンを創るまでには至っていない現状を考えると、浦和のアタックは両翼のドリブル突破が最大のストロングでしたが、「前を向いて仕掛けるシーン自体が少なかった」と自ら語った通り、25分までに原口は敵陣でドリブルを仕掛けるシーンを1度も創れません。この要因は、対面の新井場がかなり高い位置を取っていたこと。これで「原口が守備をしなければいけない状態」(永田)も多く、16分のようなシーンを創られたことも、原口が軸足を後ろに下げざるを得ない流れになっていた印象です。
鹿島の決定機は25分。センターライン付近でフリーの興梠へパスが入ると、カウンター発動。受けた野沢のフィニッシュは加藤が何とかセーブ。浦和も30分には平川のフィードから山田直輝、原口、エスクデロ、原口、エスクデロと細かく回して、梅崎のフィニッシュが新井場に当たってわずかに枠を外れるシーンを迎えましたが、31分にはそのCKのクリアを興梠がしっかりキープした所を起点に、鹿島のカウンターが発動。野沢、アレックスと素早く回り、野沢のラストパスを右で受けた遠藤はレフティということもあってフィニッシュは取れず。それでも本人も「スタメンは予想外でした」と話す興梠がフリーでカウンターの起点になることが非常に多く、「引っ掛けられてカウンターを受ける形が、思っていた以上に多かった」とは堀監督。
「凌いでいる内に、ウチのリズムになっていった」(小笠原)鹿島。37分には野沢のクサビを大迫がきっちり落とし、遠藤の右足シュートはバーの上へ。42分には新井場が右サイドからカットインミドルを枠外へ。ゲームの主導権はジワジワと鹿島が掌握して、前半の45分間は終了しました。
迎えた後半はアクシデンタルな幕開け。47分、鈴木のパスが弱く、入れ違いかけた新井場を山田直輝が倒してイエローカード。50分、ルーズボールをクリアに行った青木の足元へ山田直輝が滑り込んでしまい、2枚目のイエローカード。「申し訳ない気持ちでいっぱい」と絞り出した21歳にとっては120秒間の悪夢。浦和は10人での戦いを余儀なくされます。ただ、52分には鈴木の機転。リスタートを素早く右へサイドチェンジ。アレックスと入れ替わった梅崎は、角度のない所から強烈なシュートをサイドネット外側へ。一太刀の脅威は見せ付ける浦和。
それでも、ここからは「ボールを取ったら、大事に回しながら攻めようと」(小笠原)真綿で首を絞めるかのような鹿島のラッシュ。55分、新井場のフィードを興梠が収め、全力で上がってきた新井場のクロスから、大迫のシュートは永田がブロック。57分、野沢の右CKはフリーの中田が頭で狙うも、ボールはわずかに枠の右へ。60分、左サイドはゴールまで25m弱の距離から、野沢が狙ったFKは加藤がファインセーブ。
オリヴェイラの決断は63分。遠藤を下げて田代を最前線に投入。その下に右から興梠、野沢、大迫が並ぶ4-2-3-1にシフトして、高さのエッセンスをチームへ加えます。65分、左に開いていた大迫のカットインシュートは何とか加藤がキャッチ。68分、平川のクリアは小さく、拾った新井場、小笠原と回り、右サイドエリア内で1人かわした野沢のシュートは、加藤を破るもカバーに入った濱田が懸命に足先でクリア。左右から襲い掛かる鹿島の圧力。70分、野沢の右FKに大迫がドンピシャで合わせたヘディングは、わずかにゴール左へ。
苦しい堀監督が切った1枚目のカードは76分。おそらく最も鹿島に脅威を与えながら、守備に奔走せざるを得なくなっていた梅崎に替えて高橋を投入。同じタイミングでオリヴェイラ2枚目のカードは、アレックスを下げてフェリペ・ガブリエルをそのまま左SBへ。77分、いきなりフェリペが左サイドから右足で中へ入れると、興梠はダイレクトで落とし、野沢のシュートは加藤がファインセーブ。
79分は浦和と言うより原口。左サイドを走って走って放ったシュートはGK正面も、これが伏線になったのか80分に再び退場者。左サイドを抜け出しかけた原口に、青木が「自分の中ではベスト」と正当に見えるチャージでボールを奪うも、東城穣主審の判定は青木のファウルのみならず、2枚目のイエローカード。やや帳尻合わせの感も否めない退場で、ゲームは10人対10人に変化します。
鹿島はこれを受けて、新井場が「やったことない」というCBへ入り、右SBは柴崎がスライド。小笠原をアンカー気味に4-1-3-1と、前の人数は減らしません。結果、90分間で決着はつかなかったものの、数的同数になってからも浦和は「体力の消耗で前に行く力がなく」(永田)、「相手が1人多いような流れ」(柏木)は変わらず。鹿島がペースを握った中で、ゲームは15分ハーフの延長戦へもつれ込みました。
延長はスタートから双方に交替。浦和は鈴木OUTで小島IN。鹿島は小笠原OUTで増田IN。奇しくも共にキャプテンをベンチに下げて迎える30分間。鹿島の勢いは止まず。94分、増田のミドルは加藤が何とかセーブ。96分、増田のアーリークロスに大迫のヘディングは枠の左へ。100分、興梠のリターンから大迫の左クロスは、わずかに田代の背後から加藤がパンチング。102分はようやく浦和。小島の持ち出しを起点に原口がドリブル。高橋は原口のヒールリターンから枠内シュート。次世代の浦和を担う3人でフィニッシュの形を創りました。
しかし、その3人を上回る3人のコンビネーションが結実したのは延長前半終了間際の105分。左サイドでルーズボールを拾った興梠は中へ。力強く、巧みに収めた田代が返すと、興梠は優しくファーサイドへラストパス。「触るだけのボール」を押し込んだのは大迫。10人になってからも削らなかった3人のFWが全員絡んでの先制弾。弾けた白い赤の歓喜。とうとう鹿島がリードを奪いました。
最後の15分。107分、左サイドで粘った原口のクロスを、高橋がニアへ飛び込んだヘディングはゴール右へ。110分には堀監督も最終ラインを3分前に投入した坪井、永田、平川の3枚に減らし、「上げることを考えていた」濱田が最前線へ。115分、興梠が右へ展開すると、田代のソフトパスから柴崎が放ったシュートはクロスバー直撃。116分、CKのこぼれを野沢が左クロス。加藤が弾き切れず、中田のヘディングはまたもクロスバーに阻まれ、変わらぬ1点差。
118分、平川のフィードを濱田が収め、原口のミドルは曽ケ端キャッチ。119分、平川の左クロスを原口が頭で繋ぎ、高さは無双状態の濱田がフリーで打ったヘディングはバーの上へ。120分、永田のフィードはまたも濱田が競り勝ち、エスクデロのボレーはわずかに枠の左へ。120分47秒、国立を切り裂いたタイムアップのホイッスル。お互いが持てる力をフルに発揮した総力戦の死闘は鹿島に軍配。オリヴェイラ監督就任から、5シーズン連続のタイトルを見事に勝ち取る結果となりました。
最後に力尽きたとはいえ、浦和の執念は感動的ですらありました。10人になってからはほとんど守備の時間を強いられた中、延長後半まで本当に勝敗の行方はわからなかったと思います。堀監督は「前監督と選手たちで決勝に駒を進めてきたが、決勝だけ指揮を執った僕が結果を出せず申し訳ない」と語りましたが、浦和の選手が最後まで走り切れたのは、この状況でチームを率いることを決断した指揮官にタイトルをプレゼントしたいという気持ちが一番大きかったのではないでしょうか。
15回目の戴冠となった鹿島は「チームとしてコンセプトがしっかりしてる分、大崩れしないのが強み」と中田が話したように、結局は常に主導権を握っていた印象です。中でも特筆すべきは青木退場後の4バックが「全員本職じゃない」(小笠原)4人だったこと。それでも「自然とそういう形になった」(中田)中で、一切の破綻を見せずに完封で勝ち切った辺りに、チームのフィロソフィーを感じます。「みんなで掴んだ勝利」と笑ったキャプテン。今シーズン最初のタイトルは鹿島の頭上に輝きました。   土屋

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