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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2011年10月23日

JFL後期第12節 町田ゼルビア×SAGAWA SHIGA FC@野津田

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201110232303000[1]nozuta.jpgいよいよ終盤戦にさしかかってきた日本フットボールリーグ、通称"JFL"。今日は4位に付ける町田ゼルビアと首位のSAGAWA SHIGA FCが激突する、後期第12節最大のビッグマッチにやってきました。
昨シーズンは3位に入りながら、Jリーグ入会の予備審査をクリアできず、無念の涙を呑んだ町田。ランコ・ポポヴィッチを新監督に迎えた今シーズンは、「結果だけでなく内容でも試合を見に来たみなさんに満足して帰ってもらいたい」とポポヴィッチ監督も語る"魅力的なサッカー"を標榜すると、その異質なスタイルがチームと融和し、現在4位と優勝も十分狙える好位置に付けています。
対するは企業クラブの雄、SAGAWA SHIGA FC。佐川急便東京SCと佐川急便大阪SCが合併して現チーム名になった2007年以降は、優勝2回に2位1回とまさにJFLのメガクラブ。今シーズンも現在首位と、3度目のタイトル獲得に向けてひた走っています。実力的にもJFLトップクラス同士の「自然とモチベーションが上がる」(酒井良)頂上決戦に、集まった観衆は3461人。会場は秋晴れの野津田です。
ゲームは衝撃の幕開け。キックオフからの流れで、町田は右サイドから勝又慶典がクロスを上げると、ファーへ流れたボールを再び津田和樹がクロス。DFのクリアが小さくなった所に、反応したのは酒井。腰を捻って繰り出したシュートは、ゴール左スミへ飛び込みます。その時間、わずかに開始27秒。「まだ1分くらいだったから腰も回った」と笑う34歳の先制ゴールに、ベンチ前で弾けた大きな輪。いきなり町田がリードを奪ってみせました。
さらに4分にも再び町田に決定機。右サイドから崩しに掛かり、勝又のヒールを鈴木崇文が繋ぐと、小川巧のシュートはSAGAWAのGK村山智彦が弾き出すも、こぼれに詰めた酒井のフィニッシュがクロスバーにヒット。あわやというシーンを創り出します。
さて、「入りを気を付けようと言っていたが、前に行くぞというパワーがあり過ぎたのかな」と中口雅史監督が振り返ったSAGAWAは、7分に旗手真也の左CKから、ニアで宇佐美潤が合わせたヘディングが左ポストを直撃すると、少し落ち着きを取り戻したのか、以降はボールを大切に繋ぐ意識を表出。町田と互角以上のポゼッション率と、縦への速いアタックを使い分け、少しずつ攻撃のリズムを生み出していきます。ただ、いい所までは攻め込みますが、1トップの高橋延仁と、その下に入った清原翔平も含めて周囲の連携が薄く、「サイドに人が偏り過ぎた」と中口監督。なかなかシュートで終わるシーンを創れず、相手に脅威を与えるまでには至りません。
一方の町田も1.5列目に位置するディミッチがどうしても引いて受ける形が多くなり、「なかなか前でボールが収まらなかった」(ポポヴィッチ監督)ことで勝又との距離も開いてしまい、決定的なシーンは創り出せません。34分、ディミッチが直接狙ったFKはわずかにバーの上へ。37分、柳崎祥兵のフィードから鈴木、ディミッチと回り、勝又のシュートは村山がセーブ。そのCKを鈴木が入れると、田代真一のヘディングは枠を捉えるも、カバーに入った高橋がゴールライン上でクリア。SAGAWAも45分には、奈良輪雄太の右FKがファーへ流れると、高橋がスライディングで残し、最後は清原が枠へ飛ばしたシュートは町田GK吉田宗弘がキャッチ。27秒以降はスコア動かず。町田が1点をリードしてハーフタイムへ入りました。
後半はスタートからSAGAWAに交替。「中盤の展開を少し考えようと」(中口監督)宇佐美を下げて、キャプテンの山根伸泉を投入します。それでも後半も先に攻勢へ出たのは町田。49分、鈴木のラストパスに酒井が抜け出しかけるも、冨山卓也が間一髪でクリア。そのCKを鈴木が蹴ると、小川のボレーは枠の右へ。55分、藤田泰成のクサビを受けたディミッチは、反転から枠内シュート。SAGAWAゴールを脅かします。
ところが、序盤から執拗に繰り返されていたSAGAWAのハイプレスが一向に止まず、むしろ強度が高まった印象すら受けるほど、前からのチェイスを敢行すると、「町田の足が止まり出してきた」(中口監督)こともあって、徐々に勢いが逆転。61分には清原、鳥養祐矢と繋いで、中村のラストパスを受けた高橋のシュートは何とかDFがブロック。62分、一発のフィードに中村が抜け出し、持ち込んだフィニッシュは懸命に戻った太田康介が決死のブロック。63分、奈良輪のCKから、旗手のミドルに鳥養が触ってコースを変えると、ここは吉田がキャッチしたものの、SAGAWAがペースを引き寄せます。
さらに68分には2枚目の交替カードを切った中口監督。「相手のCBとCMFの連携が悪かったので」高橋を下げて、190センチの竹谷英之を最前線に投入。わかりやすいターゲットの登場で、一層ハッキリしたSAGAWAのアタック。直後の69分、藤田のフィードに抜け出した勝又のタイミングをずらしたシュートも村山がファインセーブで凌ぐと、「竹谷にラインが引っ張られて、こぼれ球を拾われた」(酒井)「放り込まれたことで全体が間延びしてしまった」(津田)と2人が話したように、SAGAWAの厚みを持った攻撃が、ホームチームを蝕み始めます。
加えて町田イレブンの頭をよぎるのは、前回対戦の記憶。3点をリードしながら、残り10分で3点を返された前期第17節のことは「やっぱり思い出しましたよ」と鈴木。79分にはボランチの櫛引祐輔を下げて、濱田雄太がピッチに入ったSAGAWAは竹谷を頂点に、もはや4シャドー気味で勝負。85分には山根から左へ展開されたボールを、清原が狙ったシュートは藤田と田代の2人が体を投げ出してブロック。町田も懸命に凌ぎます。
しかし、町田に悪夢、SAGAWAに歓喜が訪れたのは、勝又の決定機が村山に阻まれて迎えた89分。町田の右サイド、SAGAWAの左サイドで濱田のドリブルは田代がカットしたものの、執念で再び奪い返した濱田は後方へ。中村の上げたクロスは、走り込んだ竹谷にピタリ。当たりは薄かったものの、飛び出した吉田と入れ違ったボールは静かにゴールへ到達。「正直、またかと思った」とはおそらく全員の想いを代弁した津田。土壇場でSAGAWAが意地の同点弾を強奪しました。
ただ、「前回と違う試合にしなきゃいけないっていうのはみんな感じてた」と鈴木。「また引っ繰り返せそうな気がしてた」とは酒井。91分にはエースの勝又を下げて、「一番経験のない選手」(ポポヴィッチ監督)という18歳の三鬼海を投入し、「このままズルズル行かずに攻めに行くよという姿勢」を示した指揮官。
町田は死なず。94分、吉田からボールを受けた津田がダイレクトで繋ぎ、太田が丁寧にダイレクトで縦へ入れると、鈴木の視界に入ってきたのは、一瞬飛び出しかけたGKとゴールへのコース。「上を越せば入るなと思って、あとは枠にちゃんと行ってくれれば」と気持ちを籠めて左足で浮かせたボールは、ゆっくりとゆっくりと無人のゴールへ吸い込まれます。野津田沸騰。「全員がチーム一丸になっていることが呼んだゴール」とポポヴィッチ監督。土壇場の土壇場で再び町田が勝ち越してみせました。
しかし、SAGAWAは死なず。失点後のキックオフから奈良輪が前線へフィード。吉田は大きく弾けず、DFも何とかクリアしますが、拾った旗手は鋭いアーリークロス。走り込んだ清原のダイビングヘッドはゴール方向へ。直後、野津田に鳴り響いたのは、タイムアップのホイッスル。わずかにボールはクロスバーの上へ外れましたが、「JFLでここまでのチームは他にない」と勝又も認めるSAGAWAの最後の一瞬まで勝負を諦めない気持ちは、さすがの一言。「お互いにレベルの高い試合」(ポポヴィッチ監督)は、町田が辛くも勝ち点3を手にする結果となりました。
最終的にスペクタクル度満点のゲームでした。「あんなにボールを回されたのは久しぶり」と酒井が話し、「いつもの相手とは違ってDFラインがかなり高かったので、オフサイドにかかる回数も多かった」と勝又も振り返ったように、やはりSAGAWAは"強いチーム"の戦い方だったと思います。最後は町田のスタジアム全体の空気も含めた執念に屈した形になりましたが、強者の貫禄を感じさせてくれました。
そして劇的な勝利を収めた町田にとって、後半ラスト10分以降の決勝ゴールは今シーズン初めて。「やっとサッカーの神様が微笑んでくれたのかなと。ちょっと遅いぐらいですけど」とは酒井。これで一気に2位まで浮上。「最低限は4位以内ですけど、当然狙うのは優勝」(酒井)という目標に向けて、今日の劇的な勝利はターニングポイントになり得る1勝だったのではないでしょうか。    土屋

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