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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
天皇杯2回戦の最終開催日は平日ナイター。ナビスコ8強、すなわちJ1でも上位を争うような顔触れが、"非Jリーグ"勢をホームで迎え撃つ8試合が行われます。今日足を運んだ会場はニッパツ三ツ沢球技場。J1で4位につける横浜F・マリノスに、今シーズンからJFLへ昇格したカマタマーレ讃岐がチャレンジする一戦です。
既にJリーグ準加盟は承認されており、来シーズンからのJリーグ参入を最大の目標にJFL4位以内を目指して戦っている讃岐。現在の順位は9位ですが、4位のツエーゲン金沢とは勝ち点差4。十分射程圏内です。ただ、日程変更により、現在2位のAC長野パルセイロをホーム香川県営サッカー・ラグビー場に迎える、週末の大事なリーグ戦まで中3日というこの一戦。難しい舵取りを迫られた北野誠監督でしたが、ほぼベストメンバーを組んできました。
さて、ゲームが始まり、讃岐のシステムを見てみると、後ろは4バックで前は2トップですが、中盤が意外な形。網田大志をアンカーに置いて、その前に右から鈴木祐輔、石田英之、喜山康平と横並びに3人を配置。4-1-3-2に近い布陣を敷いてきます。これに関しては北野誠監督から説明が。曰く「中盤をフラットにしてインターセプトを狙った」とのこと。キャプテンのCB神崎亮佑も「いつもやっていることですが」と前置きしながら、「インターセプトからの攻撃は、確かに今週の練習で意識していた」と話しています。
実際、ボールキープの時間は当然と言うべきか、横浜が長くなっていきますが、讃岐の中盤より前のプレスがかなりタイトで、いい形での攻撃は繰り出せません。10分にはルーズボールを谷口が拾い、最後は小野が左足で放ったシュートはクロスバーの上を越えましたが、横浜に試合開始からの30分間でカウントされたシュートはこの1本のみ。「ああいうプレッシャーを打開していく力がまだない」としかめっ面の木村和司監督に対して、「いつもよりは守備から入ってカウンターを考えていた。それはいい所が出せたと思う」とは、フラットな中盤の中央でプレスの急先鋒となった石田。
17分にはそのカウンターから讃岐に決定機。石田が起点になり、西野泰正のスルーパスから岡本秀雄がフリーでラインブレイク。1対1のシュートは横浜GK榎本がファインセーブで阻止したものの、狙いを見事に体現し、先にスリリングなシーンを創出してみせると、20分にはGK瀬口拓弥のフィードに横浜最終ラインの連携が悪く、またも岡本が抜け出し、上げたクロスは何とかDFがクリア。22分にはルーズボールをうまく収めた石田が左足ミドルにチャレンジ。讃岐が立て続けにアウェイゴール裏のサポーターを沸かせます。
一方、「中盤の3枚がバイタルを消したことで、マリノスはビルディングアップできなかった」という北野監督の言葉通り、谷口がほとんどボールに触れず孤立していた横浜は、30分前後に渡邉の下へ右から小野、谷口、兵藤を並べた4-2-3-1を、最前線に小野をずらし、右に谷口を配置する中盤ボックス気味の4-4-2へシフト。38分にペナルティエリアすぐ外から喜山が直接狙ったFKをカベが跳ね返すと、40分にはビッグチャンス。渡邉、狩野、兵藤とボールが回り、波戸の折り返しがこぼれたボールを、狩野が強烈な枠内シュート。しかし、ここは讃岐のCB大島翼が体でブロック。ゴールは許しません。
「前半は相手も綺麗にやってこようとしていたので、こっちもやりやすかった部分はある」と石田。前半終了のホイッスルと同時にホームゴール裏から巻き起こったブーイングがすべてを現しているような45分間は、スコアレスで終了しました。
「こういう展開になるのは予想していた」と榎本が話したように、初戦の難しさをモロに痛感する形となった横浜は、後半スタートから中盤を狩野が頂点に入るダイヤモンドに変更。「前でどんどん基点を創る」(木村監督)意識を徹底させます。
56分には右サイドで小林が縦に送ると、渡邉が抜け出してシュート。瀬口がファインセーブで切り抜けましたが、ここから石田も「あそこまで二次攻撃、三次攻撃をやってくるチームはJFLにはない」と話した、アタック→セットプレー→クリアを拾って再アタック→セットプレー、という横浜の流れが1分半近く継続。59分にはスローインから谷口が決定的なシュートを放つと、再び瀬口のファインセーブ。ようやくスイッチが入り始めたJ1のラッシュを食らい、何とか耐えていたものの、讃岐にとっては苦しい時間が続きます。
69分、谷口の枠内ミドルをDFが何とかブロック。70分、CKの一連から小野が頭で折り返したボールを、中澤もヘディングできっちり枠内へ飛ばすも、瀬口が超ファインセーブ。「セットプレーを簡単に与えてしまった」と神崎も振り返ったように、とにかく横浜はCKやFKの数が多く、その度に中澤、青山、谷口、渡邉といった、J1クラスの相手でも完全には防ぎ切れないようなハイタワーの脅威にさらされます。
さらに木村監督は75分、渡邉を下げて大黒という、また一味違う強烈な個性を投入して、ゲームを決めにかかりました。ところが、サッカーの女神はやはり気まぐれ。77分、吉澤佑哉が何気なく蹴り入れたFK。横浜DFのクリアが小さく、ボールは石田の足元へ。「1回はチャンスが来ると思っていた」9番が躊躇なく左足を強振すると、1秒後に訪れた歓喜。終盤に差し掛かったタイミングでの先制弾。讃岐がリードを奪いました。
まさかの失点で追い込まれた木村監督はなりふり構わず、79分には狩野に替えて中村、83分には波戸に替えてキム・クナンを立て続けに送り込み、「とにかくゴールを奪え」というメッセージを前面に押し出します。すると86分、横浜はロングボールから讃岐のペナルティエリア内でヘディングの応酬に持ち込むと、まるでテニスのようなラリーを経て、小林のヘディングは兵藤の足元へ。キャプテンの冷静な一撃がようやく讃岐ゴールに突き刺さり、土壇場で横浜が追い付きました。
こうなると張り詰めていた讃岐の糸は寸断。88分、右サイドで中村が2回鋭く切り返して上げたクロスを小野が頭で折り返すと、谷口も頭でプッシュ。「決定的な仕事をするし、リズムを一気に変えてくれる。さすがです」と木村監督も脱帽した中村のチャンスメイクから逆転弾。93分には、またも中村の柔らかいパスから右サイドをえぐった谷口の折り返しを、大黒がダイレクトで合わせてダメ押しの3点目。讃岐の体を張った抵抗にかなり苦しめられながら、何とか横浜が3回戦に進出しました。
ただ、3-1というスコアだけを見れば横浜の快勝ですが、「相手は本当によく頑張った。ああいうひたむきさを見習わなければいけない」と木村監督も言及したように、敗れはしたものの讃岐の健闘が光るゲームだったのは間違いありません。普段JFLのゲームで見せているスタイルとは少し違う戦い方で臨んだとのことですが、それも「ただ単にやるのではなく、勝ちに行こうと1週間準備をした」(北野監督)成果。最後は横浜の力技に屈した格好になったものの、「あの時間帯までゼロで守れたのはよかったと思う」と神崎が話した通り、高い集中力で猛攻を凌ぎ続けた後半の戦いは素晴らしかったと思います。それでも、「点を取った時にはちょっと夢見ちゃいましたね」と話した石田の笑顔には、J1の強豪相手に互角の勝負を演じた充実感と、あと数分でジャイアントキリングを逃した悔しさが、間違いなく同居していたように、私には見えました。
土屋
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