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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2011年10月08日

天皇杯2回戦 甲府×町田ゼルビア@中銀スタ

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201110090051000[1]vanzel.jpg天皇杯も今日から2回戦がスタート。このタイミングからJリーグのクラブが登場します。今日開催される"Jリーグクラブ"対"非Jリーグクラブ"の全13試合から、訪れたのは山梨中銀スタジアム。ヴァンフォーレ甲府のホームに、JFLで5位に付けるFC町田ゼルビアが乗り込む一戦です。
昨シーズン、Jリーグ昇格条件の4位以内である3位に入りながら、順位以外の諸条件によってJ2参入を断念せざるを得なかった町田。今シーズンは大分でも指揮を執っていたランコ・ポポヴィッチを監督に招聘し、ボールを大切にするスタイルを敢行。JFLでも、その志向するサッカーは高い評価を得ています。
試合前にはお互いにエールの交換を行うなど、サポーター同士が交流する光景を経てキックオフされたゲームは、5分にいきなり町田へビッグチャンス到来。鈴木崇文が30m近い距離を直接狙ったFKはカベに当たると、こぼれを拾ったドラガン・ディミッチがラストパス。勝又慶典のシュートはゴールネットを揺らし、ポポヴィッチ監督もガッツポーズを見せたものの、判定はオフサイド。とはいえ、アウェイチームが先にスタンドを沸かせます。
ところが、先制ゴールは唐突に。6分、井澤惇、パウリーニョと繋いだボールを、左サイドで受けた内山俊彦がクロス。ボールはややミスキック気味にゴール方向へ流れましたが、目測を誤った町田GK吉田宗弘のパンチングは小さく、クロスバーの下を叩いたボールはゴールへ吸い込まれてしまいます。「正直ガクッと来ましたね」とは町田のCBを務める太田康介。意外な形から甲府がアドバンテージを握ることになりました。
さて、リードを奪った甲府は1.5列目に入った片桐淳至がよくボールに触り、町田DFラインの裏を突く縦パスからチャンスを窺いますが、「向こうの外国籍選手はそこまでコンディションがよくないと聞いていたので、ムリして飛び込まなければ対応できるとは思っていたし、実際その感じでいけた」と太田が話したように、最前線に入ったダヴィが大ブレーキ。走れない、収まらない、ボールを失う、とあっては甲府の攻撃にも勢いが出てきません。
一方の町田も「選手に勇気が足りず、シンプルなパスミスが多かった」とポポヴィッチ監督が語り、「自分たちに勇気がなかった」と太田も話したように、本来の持ち味であるパスワークが鳴りを潜め、13分に勝又のポストから鈴木が中へ高速パスを通し、ディミッチがわずかに枠の左へ外れるシュートを放ったシーンが前半で唯一"崩して"創った好機。FWの勝又も「普段なら前が見える所でもパスが出せなかったりしていた」と、なかなかチームとしてうまく前を向いて勝負できない状況を感じていたようです。
そんな中、ゲームが中盤にさしかかると、少しずつゲームスピードに慣れてきた町田。35分にはボランチの柳崎祥兵から鋭い縦パスが入ると、飛び出したボランチの小川巧は勝又のうまいポストからバイタルに侵入。シュートはタイミングを逃し、オフェンスファウルを取られたものの、1つチームの狙いを体現します。
しかし、次のゴールを記録したのも甲府。36分、左サイドでボールを持ったパウリーニョが縦へパスを送ると、「藤田(泰成)に当たったボールに誰も反応できなかった」(太田)こぼれ球を自ら拾ったパウリーニョは、そのままドリブルからゴール右スミを射抜く追加点。「いくつかのミスを繰り返してしまった失点」とポポヴィッチ監督。2点の差が付いて、最初の45分間は終了しました。
迎えたハーフタイム。「前半が終わった時点で怒鳴った」とは町田のセルビア人指揮官。曰く「臆病になるな。勇気を出せ!」。46分には田代真一の信じられないクリアミスをダヴィに拾われ、あわやというようなループを打たれてスタートした町田の後半でしたが、50分に潮目。鈴木が蹴ったCKは、ダヴィがクリアしたものの、拾った鈴木はダヴィをかわして中へ。太田のシュートは甲府GK荒谷弘樹のファインセーブに阻まれましたが、確かに流れが変わります。
すると1分後の51分、左サイドから北井佑季がロングラン。ディミッチを経由したボールは、右サイドの鈴木へ。「縦に行こうか迷ったけど、左利きなので中へ切れ込んで、たぶんDFが足を出してくるなと思ったので股を狙って思い切り蹴りました」というレフティのシュートは、本人の思い通りに進行。右ポスト内側を強烈に叩いたボールは、「甲府と同じくらいの数で驚いた」とキャプテンの津田和樹も触れたサポーターサイドのゴールへ到達。2-1。アウェイの青が沸騰しました。
ここに形勢は逆転。ポポヴィッチ監督は55分、小川に替えて酒井良を左SHへ送り込み、北井を右SH、鈴木をボランチにシフト。60分には甲府もFKの流れから、井澤の右クロスを投入されたばかりの柏好文が枠へ飛ばすヘディングを打ちましたが、ボールは吉田の正面。再び「点を取ってからは自分たちのサッカーがずっとできていた」(鈴木)町田のラッシュ。62分、左サイドから鈴木が上げたクロスに、飛び込んだディミッチのボレーはヒットせず。63分、田代のフィードから勝又のカットインシュートはGKキャッチ。68分、酒井、勝又、鈴木と回したボールから、北井のシュートは戻った甲府DFがブロック。同じく68分、田代と津田で左サイドを切り裂き、田代のクロスに合わせた勝又のヘディングはゴール右へ。疲労からか全体的にボールアプローチが遅くなり、前からのプレスも薄まった甲府を尻目に「元々最初からああいったプレーをしなくてはいけない」(勝又)町田が圧倒的なポゼッションから、勝又の確実なポストプレーもあって左右の幅も活用し始め、完全にリズムを引き寄せます。また、忘れてはいけないのが柳崎の奮闘。低い位置でビルドアップしていたかと思えば、中盤でもセカンド奪取に奔走。まさにダイナモという言葉がふさわしい、ハードワークぶりだったと思います。
78分には片桐のスルーパスに反応した吉田豊のシュートを、飛び出したGK吉田宗弘が体でブロックすると、勢いは依然町田。 82分、ディミッチが獲得した中央やや右、ゴールまで25m強のFKは鈴木が直接狙うもクロスバーの上へ。甲府の佐久間悟監督はこの直後、パウリーニョを下げて、クローザー伊東輝悦をボランチに送り込み、ゲームを終わらせに掛かります。
攻める町田。耐える甲府。そして86分、鈴木が左から蹴り込んだCKに太田が頭で合わせると、枠へ向かったボールは乾いた音を残して右のゴールポスト直撃。追い付けません。さらに89分、右サイドで得たFK。鈴木は低く短いボールを酒井へ。ディミッチのリターンを受けた酒井はフリーになりましたが、「肩に力が入ってしまい」シュートはヒットせず、DFにクリアされてしまいます。94分、右サイドの星大輔がダイレクトではたき、勝又を挟んで酒井が潰れ、拾った勝又がゴールに流し込むも、判定は酒井のオフェンスファウル。天を仰ぐポポヴィッチ監督。小瀬に響き渡ったタイムアップのホイッスル。甲府が辛くも逃げ切りましたが、「J1相手でも自分たちのサッカーができた」という太田の言葉にも頷ける、町田の健闘が光ったゲームでした。
町田は「私が思い描いていた理想が後半の戦い方」(ポポヴィッチ監督)「個人個人の絶対勝ちたいという想いが前半より強くなった」(鈴木)「後半は自信のあるプレーが出てきた」(太田)と一様に口を揃えた後半は圧巻。ゆえに「取られてから奮起するのでは遅いというのを学ばなくては」という勝又の言葉は的を得ています。それでも「町田というクラブ、街、そしてJFLの代表としての役割を果たすことができたと思う」とポポヴィッチ監督が話した通り、2つ上のカテゴリーに所属する相手に「ポゼッションもできたし、戦えたには戦えた」(勝又)という自信は、残りのリーグ戦にも十分生かされるのではないでしょうか。またゲームを見たくなるような好チームでした。   土屋

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