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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
"長月"と呼ばれる9月もあと6日。空を泳ぐ雲にも季節の移ろいがくっきりと映し出されるようになってきた時節、高校生が自ら費やしてきた時間の意義を最大限に披露する戦いが始まっています。今日の会場は東久留米総合高校グラウンド。東京Bブロックの2回戦には、昨年度王者の駒澤大学高が登場。1回戦を10対1という衝撃的なスコアで勝ち上がってきた明治大学付属明治と対峙します。全国を経験した昨年のチームはレギュラーの大半が3年生ということもあり、ほとんどゼロからのチーム創りとなった駒澤の大野祥司監督。今日のスタメンには「まとまりや団結力という部分を重視して」全員3年生を揃えてきました。
ゲームは序盤から前へと速くボールを入れていく駒澤ペース。6分には木村直貴(3年・川崎有馬中)が右へ送り、上がってきたSB大野友晃(3年・深川第三中)のクロスは明治GK清野圭介(3年・世田谷千歳中)にキャッチされましたが、この大野が見せた再三のオーバーラップが、右サイドの活性化と同時にチームへ推進力を与えます。すると、先制ゴールも駒澤。9分、やはり右サイド深くに侵入して奪ったCKはDFのクリアに遭ったものの、逆からのCKを須田敢太(3年・JACPA東京)が蹴ると、ニアに詰めていた邊見洋平(3年・FC駒沢U-15)が確実にプッシュ。攻勢の赤が1点のリードを奪いました。
さて、いきなりビハインドを負った明治は、基本的にボールを小気味よく動かすスタイル。トップの秋葉幹也(3年・明治大付属明治中)と、1.5列目に位置する土屋慶祐(3年・小金井南中)にボールを当てて、それをスイッチにスピードアップというシーンが多く、志向しているサッカーは明確。17分には西原天童(3年・小金井南中)のFKがクロスバーを叩くなど、少しずつリズムを掴んでいきます。
ところが、次にゴールを奪ったのも駒澤。19分、大野のロングスローに木村が競って浮かんだボールを、明治DFは中央にクリア。飛び出したGKが入れ違ってしまい、待っていた東呈次(3年・FC駒沢U-15)が無人のゴールへ頭で押し込み追加点。点差は2点に広がりました。
24分に秋葉が城所拓也(3年・明治大付属明治中)のパスを受け、ゴール右へ外したシュートが流れの中からは初めてのフィニッシュだった明治は、追い掛ける形の苦しいゲーム展開となりましたが、31分には西原の縦パスを矢野大輔(2年・川崎宮前平中)がヒールで落とし、秋葉が枠内シュート。同じく31分、繋いで繋いで矢野のパスから猪俣渉(3年・横浜領家中)も枠内シュート。さらに36分、矢野が土屋との大きなワンツーから右へ回し、フリーで放った秋葉のシュートは駒澤GK星樹(3年・J-SPORTS FC)のファインセーブに阻止されましたが、30分過ぎからはむしろボールも一層回り出した明治が主導権を持ってゲームを進めるような格好で、前半の40分は終了しました。
迎えた後半も勢いは明治。43分に西原、土屋、猪俣とスムーズなパス交換から獲得したCKは、シュートにこそ繋がらなかったとはいえ、機先を制す格好に。46分には矢野のスルーパスに猪俣が抜け出しかけるも、前に出たGK星が間一髪でセーブ。51分、西原のFKはカベに当たり、こぼれを矢野がボレーで狙うと、ここもゴール方向へ転がったボールを間一髪でDFがクリア。52分、ゴールまで約25mの位置から西原が狙ったFKは、星が指先で弾き出すファインセーブ。明治の勢いは止まりません。
そして56分、矢野のスルーパスに抜け出した猪俣はGKと1対1も左へ持ち出し過ぎてシュートに持ち込めませんでしたが、なんとか中へ折り返すと、飛び込んできた矢野を駒澤DFが倒してしまい、主審はPKを指示します。これをキッカーの小木曽寛純(3年・浦安美浜中)は、冷静に中央へ蹴り込み、たちまち点差は1点に縮まりました。
この時間帯で抜群の存在感を示したのは、明治の司令塔を務める西原と、その前でボールを引き出す土屋。集まるボールを溜めて散らし、当てて走り、と西原が完全にフィールドを掌握。これに土屋の確実なポストワークがパス回しを助長させ、駒澤を圧倒します。さらに60分には矢野、秋葉と回ったボールを西原はダイレクトスルーパス。3分前に投入された下村恭平(3年・明治大付属明治中)のシュートは、星が体でブロック。間違いなく流れは明治にありました。
そんな中、焦りの色すら見え始めた駒澤を救ったのは「ケガから復帰したばかりだけど、アイツが帰ってきたのは大きい」と大野監督も認める東。63分、カウンターから木村が左へ振ったボールを、東はカットインで1人かわしながら右スミへ力強く流し込むファインゴール。数少ない全国経験者の貴重な追加点。再び2点差となりました。
それでも諦めない明治魂。66分、矢野のヒールリターンを受けた西原はドリブルから枠内へシュートを収め、またも星がファインセーブ。67分、その流れで得たCKを西原が入れると、下村のヘディングはキーパーを破りましたが、ライン上で吉野泰貴(3年・Forza'02)が決死のクリア。駒澤守備陣も踏ん張ります。すると、73分にはディフェンディングチャンピオンがトドメの一撃。左サイドで得たスローインから、最後は10番のレフティ藤居亮介(3年・浦安入船中)が左足で右スミへ流し込む4点目。大勢は決しました。
ただ、それでも諦めない明治魂。78分、右SBの城所が中へ入れたボールを、CBから最前線へ上がっていた和田勇樹(2年・小平花小金井南中)が粘り強いキープを見せ、土屋の放ったシュートはゴール右スミギリギリに飛び込むゴラッソ。2-4という結果だけを見れば駒澤の順当勝ちということになりますが、スコア以上にノーシードから勝ち上がった明治の健闘が光るゲームになりました。
正直、明治の好チームぶりには、いい意味でかなり驚かされました。ボールを大事にするスタイルは、ともするとシュート意識が薄れ、"繋ぐ"ことに目的が転化しがちですが、明治はシュートを打つための細かい繋ぎが目立ち、実際に決定機も数多く創出していました。メンバーには3年生が多いものの、スタイルははっきりしているだけに、来年以降も注目したいチームがまた1つ増えたなあと思います。 土屋
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