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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2011年09月26日

高校選手権東京A2回戦 修徳×成立学園@東久留米総合G

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201109251404000higashikurume.JPG同じ会場で行われる2試合目は、Aブロックの2回戦。都立紅葉川を9-2で一蹴した修徳と、1回戦はシードの成立学園が激突します。過去6回の選手権出場を誇る修徳も、ここ5年はいずれも予選敗退。正式に岩本慎二郎監督が指揮を執り始めた今年度も、インターハイは東京実業に屈し、一次トーナメント敗退。T1でも残留決定戦に敗れ、来年度の残留は流動的になるなど苦しい戦いが続いてきただけに、ここで結果を出したい所です。一方の成立も修徳同様にここ5年は東京の壁を破れず、遠い全国の舞台。今年度はインターハイ予選準々決勝で、かえつ有明に2-6と惨敗。プリンス関東1部も現在最下位とあれば、選手権は何としても獲りたいタイトルでしょう。
ゲームは予想通り、立ち上がりから成立がキャプテンの飯田涼(3年・横浜F・マリノスJY)を中心にしたポゼッションで上回り、修徳がカウンターを狙う構図に。ただ、3-4-3気味の布陣を敷いた修徳は、「前半は守備的に行きました」と岩本監督も話したように、右の井上照規(2年・LARGO FC)、左の久保祐貴(1年)とWBもある程度引いていたため、5バック気味で守る時間も長く、成立もなかなかチャンスを創れません。
それでも15分には関根章人(3年・横浜FC泉JY)のクロスを、田中達也(3年・ジェフ習志野JY)が頭で合わせるもバーの上へ。27分には飯田のクイックリスタートから、用之丸将也(3年・横浜F・マリノスJY)の右クロスを渡辺直輝(3年・FC東京U-15深川)が何とか頭で触り、最後は山口絋範(3年・國學院久我山)のボレーが枠を捉えるも、修徳GK高橋太郎(1年・すみだSC)がキャッチ。徐々に成立が修徳ゴールを脅かし始めると33分、左サイドから上村昂平(3年・成立ゼブラFC)が入れたFKを関根がバックへッド。ここにGKとDF2人が飛び出しながら修徳サイドは誰も触れず、こぼれを押し込んだのはCBの黒坂悠生(3年・三菱養和巣鴨)。その前には連続CKを得るなど、セットプレーで押し込み始めていた成立が、まさにその形から先制。まずはアドバンテージを握りました。
修徳は最前線に間島朋之(3年・志村第四中)という、スピードがあってフィジカルとメンタルも逞しいFWを擁するものの、どうしても彼が孤立してしまう場面が多く、攻撃に掛ける時間も、掛かる人数も増えていきません。逆に成立は決定機を連発。34分、飯田が右サイドを切り裂いて折り返すと、山口のボレーは高橋がファインセーブ。35分、CKの流れから上村の左クロスを黒坂がドンピシャのヘディングで捉えるも、高橋の正面。37分、右サイドでキープしていた飯田が縦に絶妙のフィード。受けた山口はカットインしながら強烈なシュートを枠に飛ばすと、高橋もファインセーブで応酬。前半終盤は成立に漂う追加点の香りを1年生GK高橋が何とか断ち切るような格好で、1点差のまま40分間は終了しました。
後半も開始1分経たない内に、成立は大友郁也(2年・成立ゼブラFC)が強引なミドルを放ち、攻撃的な姿勢を打ち出すと、43分には上村、渡辺と繋いで関根が放ったシュートは久保が体でブロック。直後に上村が入れたCKは、田中が落として渡辺が押し込むも、ゴールライン上で修徳DFがクリア。成立の猛攻が続きます。
ところが、56分に修徳も大塚竜太(2年・フッチSC)のパスから間島がやや強引にミドルを枠の上へ外した辺りから、ゲームの流れが変化。59分には投入されたばかりの野澤克之(2年・FC東京U-15深川)が左サイドから上げたアーリークロスに、本橋瑞基(2年・クリアージュ)が抜け出し、成立GK中座大輔(1年・ソシエタ伊勢)が飛び出してクリアしたものの、修徳も攻撃の手数を繰り出し始めます。
この流れが生まれた要因の1つは、2日前にプリンス関東を戦った影響からか、少しずつ成立の運動量に翳りが出始めたこと。それは飯田も例外ではなく、広範囲に動いて受けてリズムを創っていた彼のプレーエリアが小さくなったことで、チームのパス回しに影響が出た部分はあったと思います。もう1つは、あまり前半は目立っていなかった修徳の10番を付ける西野隼人(3年・バリエンテ)が躍動し始めたこと。後ろを4バックにしたことで、守備のタスクが軽減されたこともあり、西野の推進力が少しずつチームに勢いを与えていきます。
そしてCKから大内雄也(3年・鹿島ノルテ)、用之丸と繋いだ決定機を、フリーの山口が力み過ぎたのか、勢いのないボレーで生かせずにいると、直後の68分は修徳にビッグチャンス。野澤が左へ付けたパスから、西野は1人かわしながら中央に切れ込み、そのまま軽やかにミドルを放つと、ボールは完璧な軌道を描いてゴール右スミへ到達。1-1。修徳が見事に追い付いてみせました。
残り10分強で同点弾を許してしまった成立にも、ようやく入ったスイッチ。失点直後の69分、矢野のパスから関根がドリブルシュートを放つも高橋がファインセーブ。71分、山口が右へ流すと、途中出場の千葉嘉人(2年・成立ゼブラFC)のミドルはわずかに枠の左へ。やはり71分、ルーズボールを拾った飯田のミドルはわずかに枠の右へ。78分、山口が40m近くをドリブルで独走し、打ち切ったシュートは枠の上へ。正規の80分間が終了したことを告げるホイッスル。双方譲らず。白熱の激闘は10分ハーフの延長戦へ突入しました。
延長は早々にアクシデント。83分、間島が左サイドを馬力あるドリブルで突進すると、成立DFはファウルでしか止めることができず、2枚目のイエローカードで退場となってしまいます。さらに事態へ追い打ちを掛けるかのように、85分には奮闘していたCB黒坂も負傷退場。追い詰められた10人の成立。しかし、前半の10分間を凌ぎ切ると後半は数的不利のゼブラが圧巻の攻勢。93分、ポジションを前に移した飯田が極上の浮き球スルーパス。完全に抜け出した千葉は、時間があり過ぎたか高橋の正面に蹴ってしまい、勝ち越しならず。これには成立ベンチも、成立応援団も頭を抱えます。
94分には修徳も西野が自陣から50m近い距離をドリブルで運び、あわやというシュートを放ちましたが、再び成立のラッシュ。96分、今度はグラウンダーで飯田がスルーパス。これも千葉に通ったものの、トラップにもたつき、シュートは高橋がファインセーブ。さらにそのCKを上村が蹴ると、田中が完璧なヘディングを枠に収め、GKも届きませんでしたが、43分に続いてここも1年生の久保がゴールカバーからチームを救うクリア。100分間のスコアは1-1。ベスト8への切符はPK戦という名のロシアンルーレットに託されました。
1人目は飯田、西野と両キャプテンが確実に成功。成立2人目の大内はポストに当てながら、GKに当たってゴールへ転がり込む幸運。その後は順調に双方成功が続き、プレッシャーの掛かる後攻5人目となった修徳の野澤もGKの逆を突くパーフェクトなゴール。勝負はサドンデスへもつれ込みます。
ここでも両者は強靱な精神力を発揮。6人目から9人目までは全員が成功。1年生GK同士の対峙となった10人目も中座、高橋お互いに成功。20人全員が揃ってネットを揺らし、とうとうキッカーは2巡目に入りました。11人目、12人目が沈め、迎えた13人目。先攻成立のキックは、完全に読み切った高橋が横っ飛びで弾き出し、スコアシートに初めて"×"が書き込まれます。修徳13人目は3年生の間島。全力で中央へ蹴り込んだボールの行方は、チームを次のステージへ導くファイナルゴール。初秋の死闘は、13-12という壮絶なPK戦を制した修徳に凱歌。「監督になって初めての選手権」という岩本監督に、ベスト8進出をプレゼントする結果となりました。
「負けて当然のゲーム。力は向こうの方が上だった」という勝利監督の言葉を待たずとも、成立のいわゆる"クオリティ"は一目見ればわかるレベル。パス回しもスムーズで、個々のスキルも相当高かったのは間違いありません。ただ、宮内聡総監督と森岡監督の存在もあって、個人的にこの6、7年は毎年必ずチームを見てきましたが、特にここ数年はどこか選手たちが淡々とサッカーをやっている印象がありました。このゲームもなかなかピッチにいる選手たちから100%を出し切る必死さが感じられなかったのも正直な所です。ところが、延長後半とPK戦で、おそらく最も声が出ていたであろうエリアは成立のベンチ。交替した、あるいは試合に出られなかった選手たちが、大きな声でピッチの仲間たちを叱咤激励していたのです。私は数的不利で追い込まれ、まだこんな所で負けたくないけど、自分には声を出してチームメイトを鼓舞することしかできないという状況で自然発生的に見られたあの光景に、今後の成立の光明を見た気がしました。    土屋

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