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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
本来は開幕戦のカードとして組まれていたFC東京U-18と青森山田の一戦。関東プリンス3連覇という大きな勲章を引っ提げ、臨んだプレミアではここまで8試合でわずかに1勝の9位と苦戦が続く前者のホーム深川に、2試合消化が少ない中でも3位という好位置に付けている後者が乗り込みます。スケジュールの都合上、平日の15時キックオフという、なかなか普通の人が来れるような時間帯ではなかったにもかかわらず、馴染みのライター陣は軒並み集結し、バックスタンド側もほぼフルハウス。夏休みも終盤にさしかかった火曜日。非常にサッカー濃度の濃いシチュエーションで、ゲームはキックオフを迎えました。
東京はCBの小林聖弥(3年・FC東京U-15むさし)がケガ、右SHの福森健太(2年・FC東京U-15深川)が出場停止、左SHの岩木慎也(3年・FC東京U-15むさし)がドイツ・1860ミュンヘンへの練習参加から帰国直後ということで、いずれも欠場。右SBに青木啓輔(1年・FC東京U-15むさし)、右SHには伊藤裕也(1年・FC東京U-15むさし)と右サイドにルーキーを配置しましたが、「伸びてきている選手は使いたい。彼らが実力で勝ち取ったスタメン」と倉又寿雄監督。最前線に入ったブーゾ・アモス(2年・FC東京U-15むさし)も含め、かなりフレッシュなメンバーでスタートすると、3分にはいきなりチャンス。山口泰志(3年・FC東京U-15深川)のロブを冷岡幸輝(3年・つくばFC)が粘って収め、最後は伊藤がプッシュ。1年生の大仕事に歓喜の輪が広がりましたが、ここは副審の旗が上がってオフサイド。先制ゴールとはいきません。
対する青森山田は、前線に入った林雄紀(2年・コンサドーレ札幌U-15)がターゲットであり、縦へのスイッチ。比較的長いボールが目立つ中、幅を使った攻撃にも、斜めに林へクサビというパターンが多く、シュートこそなかったものの、序盤は青森山田が全体のリズムを掴んでいた印象です。
一方、なかなか攻撃の手数を出せなかった東京は、25分過ぎからドイスボランチの一角を占める野沢英之(2年・FC東京U-15深川)が、おそらく意識的にCBの間へ入り、ビルドアップの任務を担当する回数が増加。すると、縦への勝負パスやドリブルでのテンポアップなどがあまりなかったので、一見ボールの流れも停滞していたように思えますが、簡単にボールロストする回数が減ったためか、東京が落ち着きを取り戻していきます。
さらに、30分を過ぎると急速に輝き始めたのは、右の青木と伊藤のユニット。36分には山口が右へ展開すると、伊藤の外側を回った青木がえぐり、クロスはDFがなんとかクリアしましたが、2人の連携でチャンス創出。40分に二瓶翼(2年・FC東京U-15深川)が中央で3人を振り切り、左へ流れながら放ったミドルが青森山田GK野坂浩亮(2年・フロンティア トルナーレFC)にファインセーブで阻止されたシーンを挟み、41分には再び伊藤のパスから青木が鋭いクロス。青森山田の黒田剛監督も「相手の右サイドは、ウチが食い付き過ぎて回られたりというのが怖かった」と言及したように、公式戦初コンビとなる青木&伊藤の積極性でリズムを引き寄せた東京が、前半の終盤はいいイメージを持ちながらハーフタイムへ入りました。
双方が交互にチャンスを創り合うような形でスタートした後半。先にゲームを動かしたのは青森山田。林が惜しいシュートを放った直後の54分、キャプテンの差波優人(3年・青森山田中)が蹴ったCKから、ファーサイドでフリーになった舛沢樹(3年・五戸中)が低い打点のヘディング。ボールはゴール左スミへ吸い込まれ、どちらかと言えば劣勢だったアウェイチームがリードを奪いました。
ただ、ビハインドを追い掛ける格好となった東京もすぐさま反撃。59分、自らの積極的なドリブルで獲得したCKを二瓶が蹴ると、中央に飛び込んだブーゾ・アモスの頭にヒット。野坂も手に当てながら及ばず。失点時はマークミスを犯した20番が「自分でやられて、自分で取り返した」(倉又監督)形の同点弾。わずか4分間で試合を振り出しに戻しました。すると、この直後から二瓶が完全に覚醒。60分、冷岡のパスを左サイドで受け、ドリブルでスルスルとカットインすると、放ったシュートはわずかに枠の右へ。61分、自ら蹴ったCKのこぼれ球に反応すると、またも鋭いカットインシュートを枠内へ。「自分のシュートレンジを確保できるようになった」と指揮官も認めたレフティが躍動します。
63分に倉又監督が冷岡を下げて、鴨池陽希(1年・FC東京U-15むさし)を前線に投入し、黒田監督も64分には佐藤逸柊(2年・青森山田中)に替えて、「ドリブル突破できる」高橋晃司(3年・JFAアカデミー福島)を投入しましたが、勢いは変わらず。65分、二瓶のスルーパスに中盤から飛び出した野沢のシュートは、野坂が体でファインセーブ。69分、溜めたブーゾ・アモスのラストパスから伊藤が抜け出し、桝沢が素晴らしいタックルで危機回避したものの、東京の時間が続きます。
ところが、70分を過ぎると流れは一転して青森山田へ。聞くと黒田監督はハーフタイムに「あのサッカーじゃ90分は持たない。相手がポゼッションしている時は無理に行かず、自分たちもポゼッションして相手を消耗させれば、こっちが走り負けることはない」という指示を出したとのこと。その効果が徐々に出始め、レギュラーとしてのプレー経験が少ない選手が多く出場していた東京を、青森山田が運動量で上回っていきます。
75分には差波を起点に石井大樹(3年・水戸ホーリーホックJY)が繋ぎ、椎名正志(2年・札幌ジュニアFCユース)のミドルはバーの上へ。80分に東京は二瓶が退き、川上翔平(1年・FC東京U-15深川)を投入。ピッチ上には4人の1年生が揃う中、襲い掛かる青森山田のラッシュ。83分、差波が浮かせたスルーパスをDFラインの背後に落とすと、右SHから前線に移っていた曽我将也(3年・青森山田中)が走り込むも、東京GK谷俊勲(3年・FC東京U-15むさし)が飛び出してクリア。さらに終了間際の90分、またも差波の浮き球スルーパスに林が抜け出しましたが、「確実に右足で決めたいと欲が出てしまったかな」と黒田監督も触れたように、慎重に行き過ぎた林のシュートは、戻ったDFがブロック。絶好の勝ち越し機を逃してしまいます。
4分が掲示された追加タイムは一転、東京の時間。90+1分、川上のCKをファーに回った村松知稀(3年・FC東京U-15深川)がヘディングで狙うも、ボールはわずかにゴール左へ。ラストプレーの90+4分、左サイドから村松の上げたクロスは、中央を通過して伊藤へ届きますが、青森山田ディフェンスも粘り強い対応でシュートは打たせず。「夏の90分はシンドイものがある」と黒田監督も漏らした消耗戦は1-1のドロー決着。勝ち点1ずつを分け合う結果となりました。
「勝ち点3を狙っていたゲーム」(黒田監督)で引き分けた青森山田は、中盤センターの差波と椎名が印象に残りました。特に差波は「最近まであいつに"おんぶにだっこ"だった」と黒田監督も認める司令塔。1年時から選手権の舞台を経験してきた逸材の、さらなる飛躍に期待したいですね。
ホームでドロー決着となった東京は、昨年と違ってなかなかメンバーも固定できず、厳しいゲームが続きます。そんな中でも「あれだけボールを失わないでやれれば十分」と倉又監督も及第点を与えた伊藤、その一列後ろで上下動を繰り返した青木に、少し吹っ切れた感のある二瓶と、下級生のバックアッパーが活躍したのは、今後に向けて好材料。「今は降格圏なんで」と苦笑いを浮かべなから、「一戦一戦しっかりやっていくしかない」と話してくれた倉又監督。9月4日には「9年間で一度も負けたことがない」と黒田監督が明かした青森山田のホームゲームが待っており、この再戦を含む2週間後の第10節から、プレミアも後半戦へ突入することになります。 土屋
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