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サッカー フットサル コラム 2024年4月23日

パーマーがY・トゥーレの記録をブレイクする日は近い

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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パーマーはつねに冷戦沈着。相手GKの動きを読んでPKを決める。イングランド代表の明日を担う逸材だ

パーマーはつねに冷戦沈着。相手GKの動きを読んでPKを決める。イングランド代表の明日を担う逸材だ

ちょっとしたPK論争が起きている。

「オレが蹴る」
「いや、俺に蹴らせろ」

チェルシーのニコラ・ジャクソンとニコ・マドゥエケが、キッカーをめぐって激しくやりあった。シチュエーションは4‐0で迎えたエヴァートン戦(33節)の64分。勝負の趨勢が見えていたため、彼らは名乗りをあげたのだろう。

マンチェスター・ユナイテッド戦の後半追加タイムではコール・パーマーに託し、ジャクソンもマドゥエケもなんらアクションを起こしていない。自己主張はするが、責任を回避したがる若者の典型だ。

チャンピオンズリーグ準々決勝第二戦、レアル・マドリーGKアンドリー・ルニンは一歩も動かず、ベルナウド・シウバ(マンチェスター・シティ)のキックをイージーにキャッチした。

「弱虫」
「決断力が乏しすぎる」

B・シウバには少なからぬ批判が集中している。だが、あくまでも9・14メートル間の駆け引きであり、この日はルニンが上まわっただけだ。仮にB・シウバのキックが決まっていれば、「緊張した場面でクールすぎる」と絶賛されたに違いない。

さて、鋭い分析に定評のある『opta』によると、プレミアリーグのレジェンドにはPKの成功率100%を誇る名手が存在する。ダビド・シルバ、セルヒオ・アグエロとともにマンチェスター・シティ隆盛の礎を築いた、ヤヤ・トゥーレだ。
The Best Penalty Takers in the Premier League | The Analyst

右足のインサイドキックで丁寧にゴールの隅に蹴り分け、しかもポーカーフェイス。相手GKは読みにくかっただろう。11回蹴って、失敗は一度もない。

100%のY・トゥーレに劣るとはいえ、1980年代後半から約15年に渡り、サウサンプトンで大活躍したマシュー・ル・ティシェは26回中25回成功。成功率は96・15%にも及ぶ。

状況判断とパスセンスに秀でていた彼が、なぜイングランド代表に8回しか選ばれなかったのか。当時はテクニカルな選手が冷遇される悲しい時代だったからだ。もう20年ほど遅く生まれていれば、ル・ティシェのキャリアは変わっていた。

また、現役ではニューカッスルのカラム・ウィルソンが94・1%で首位に立ち、2位はアイヴァン・トニー(ブラントフォード)とアーリング・ハーランド(シティ)の91・7%、4位には90・9%のダニー・イングス(ウェストハム)がつけ、遠藤航の同僚であるアレクシス・マカリスター(リヴァプール)は、ブライトン在籍時も含めて90%の成功率だ。

数年後、PK成功率ランキングにはパーマー(前出)が入ってくる公算が大きい。慌てず騒がず、相手GKの動きを最後の最後まで見極める落ち着きには、「恐れ入りました」というしかない。

「われわれのPKはすべてパーマーに託している。彼がピッチに立っているかぎり、他の選択肢はありえない」(マウリシオ・ポチェッティーノ監督)
「パーマーはペナルティスポットでも堂々としている。他の選手は邪魔をしないことだ。見苦しい」(ディディエ・ドログバ)

指揮官だけではなく、2000年代のチェルシーに多くのタイトルをもたらしたゴールゲッターも、PKのキッカーはパーマーだと断言している。

今シーズンも9回蹴ってすべて成功している。『opta』の対象がPKを10回以上トライした選手であるため、今回は対象外となった。しかし、Y・トゥーレの記録を超える日が、早ければ今シーズン中にも訪れる。6月のヨーロッパ選手権でイングランド代表入り間違いなしの逸材は、どのような記録を樹立するのか。

実に楽しみなアタッカーが現れた。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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