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サッカー フットサル コラム 2024年3月19日

ビニシウスが世界一の選手になるための最後の障壁

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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相手選手に詰め寄るヴィニシウス

相手選手に詰め寄るビニシウス

ビニシウスが先週末のオサスナ戦でイエローカードをもらい、今後3週間実戦から遠ざかることになった。今週末はインターナショナルマッチウィークでリーガはお休み、来週末は累積警告で出場停止、その次の週末はコパ・デルレイの決勝で再びリーガはお休みで、次に彼の姿が見られるのは、4月9日のCL準々決勝マンチェスター・シティ戦となる。

避けられたイエローカードだった。

44分、大きなジェスチャーで抗議、審判の面前で笑ったところで、カードが出された。怒りは収まらず、前半終了後にロッカールームに向かう途中、テレビカメラに向けて「この審判はいつも僕にカードを出す」とアピール。ブラヒムが“もうよせ”と彼をカメラの前から遠ざけた。

この試合で2ゴールを決め、今季ここまでリーガで12ゴールと昨季の10ゴールを上回った。公式戦通算でも18ゴール(28試合)で、昨季の23ゴール(55試合)と比べ消化試合は半分なので記録更新は確実。最高のシーズンになりそうだ。

「ボールを持っていない時の動きの質が上がった」とアンチェロッティ監督は目を細めた。

今のビニシウスは左サイドではなく中でプレーすることが増えた。スペースのあるサイドで足元にもらいドリブルを仕掛けるーーちょうど久保建英がするようなーーが得意だったが、今は最終ラインの裏を抜けてボールをもらうプレーが目立つ。抜ければGKと1対1だが、オフサイドになる可能性も高い。要はタイミングがすべてなのだが、その走り出しの質が上がった、という評価である。

反面、アンチェロッティは「周りの重圧をコントロールすることを覚えなくてはいけない」と苦言を呈した。

大事な次節アスレティック・ビルバオ戦にゴールゲットと崩しを担う決定的な存在を失った。出場停止なら、その次のマジョルカ戦が絶好機だった。ビニシウスはここではタイミングを間違ったわけだ。

世界一の選手になるためにビニシウスの最後の障害は感情のコントロールだと思う。

通算、77ゴール、42イエロー。公式戦5試合連続のカードで、その中には先週のCLライプツィヒ戦でのように相手を押し倒しイエローをもらった後にもう一度胸を突いて倒す、レッドが出てもおかしくないシーンもあった。42カードのうち19枚は審判へのアピール、相手との小競り合い、遅延行為によるもの。つまり、避けられたものだった。

ビニシウスが標的になっていることは確かだ。

これまでモンキーチャントなど人種差別を受けた経験もあるし、オサスナ戦では「死ね!」という酷い罵声も浴びていた。それらを正当化することは決してできない。

だが、アンチェロッティの言うように、スタンドの挑発に乗らずイエローの数を減らせれば、確実にステイタスが一段上がる。

選手としてはドリブルだけ、では無くなった。シュート力の向上は目覚ましく、今またボールの無い時の動きも覚えた。人間的な面では、ダンスのゴールパフォーマンスも、DFを煽るようなドリブルも無くなった。

「謙虚でインテリだから修正するだろう」(アンチェロッティ)

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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